薄い本を読む

十月はおおむね薄い本を集めて読んでいたのでそれらについてツイッターに書いていた感想をまとめた。だいたい本文200ページ以内かその前後なので、さっと読めるだろう。 *1 爪と目作者: 藤野可織出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/07/26メディア: ハード…

石川博品『夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落"』と『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』

夜露死苦! 異世界音速騎士団"羅愚奈落" ?Godspeed You! RAGNAROK the Midknights? 作者: 石川博品 発売日: 2018/08/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 同人誌として発表された長篇。いってみれば異世界チート主人公の帰還後からはじ…

笙野頼子 - ウラミズモ奴隷選挙

ウラミズモ奴隷選挙 作者: 笙野頼子 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/10/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『だいにっほん』三部作の前日譚としての前作『ひょうすべの国』のずっと未来を描く最新作。笙野頼子の未来史シリーズの…

笙野頼子 - 猫道

猫道 単身転々小説集 (講談社文芸文庫) 作者: 笙野頼子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/03/14 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 作者の住居あるいは猫にまつわる小説を集めた文庫オリジナル作品集。部屋探しを通じてこの社会に居場…

はてなブログに移転

はてなダイアリーがサービス終了の予告が出たので、全記事を移転して、旧ブログから本ブログへのリダイレクトを行ないました。 http://d.hatena.ne.jp/CloseToTheWall ブックマーク、は移さなくても自動でリダイレクトされるはずです。

図書新聞につかだま書房の後藤明生本の書評

バックナンバー 図書新聞2018年7月28日号四面、つかだま書房の後藤明生著作を扱った枠にて「後藤明生の再読のために」という3000字ほどの書評を寄せました。対談集、座談集、『引揚小説三部作』『壁の中』を手がかりにしつつ、後藤明生における朝鮮引揚げ体…

トーキングヘッズ叢書ケイト・ウィルヘルム追悼特集に『クルーイストン実験』のレビュー

秘めごとから覗く世界 (トーキングヘッズ叢書 No.75)作者: アトリエサード出版社/メーカー: 書苑新社発売日: 2018/07/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るアトリエサードのトーキングヘッズ叢書75号におけるケイト・ウィルヘルム追悼特集に…

四月に読んだある程度最近の海外SF

積み本消化強化月間、四月は海外SF。 グレッグ・イーガン『万物理論』 万物理論 (創元SF文庫)作者: グレッグ・イーガン,山岸真出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2004/10/28メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 167回この商品を含むブログ (269件) を見る…

最近読んだ最近の日本SF

かねてよりかかり切りだった案件を一区切りした(まあまったく終わってはいないけれども)ので、ここ数年ため込んでいたものを読むか、と。三月は最近の日本SF月間を設定してざざっと読んだ。感想をツイッターに随時書いていたものをまとめておく。日本SFは…

ゴンチャロフ - オブローモフ

オブローモフ〈上〉 (岩波文庫)作者: ゴンチャロフ,米川正夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1976/02/16メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 184回この商品を含むブログ (17件) を見る年始と言うことで十五年ほど積みっ放しにしてきた長篇を読むことにした…

季刊メタポゾン第11号に鶴田知也論を書きました

季刊メタポゾン第11号 特集大西巨人 (2017年冬号)作者: 大西巨人,その他,大西赤人出版社/メーカー: 寿郎社発売日: 2018/01/06メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見るちょっと記事にするのを忘れてましたけれども、表記の雑誌に…

2017年見ていたアニメ

今年見ていたアニメの感想まとめ。去年長すぎて記事分割になったので、今年は頑張って短くした。だいたい60作超。おおむねツイッターに書いていたことのまとめなので、それを見ていた人にはさほど新鮮みはないかも。https://twitter.com/inthewall81 2017・冬…

2017年読んでいた本

仕事関係とかいろいろ除いて、今年読んだ本から10冊挙げてみる。●笙野頼子『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』 さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/08/01メディア: 単行本この商品を含…

季刊「未来」の後藤明生論第六回「夢の話法」について

後藤明生論最終回が掲載された季刊「未来」2018冬号、届きました。近々一般に入手できるかと思います。今回で第一部で、あと二部三部とあるわけですけれど、連載はここで終了です。なので、最後の最後十六節の「朝鮮引揚者の戦後と方法」では、終章として書…

北海道新聞「現代北海道文学論」に山下澄人論が掲載されました

道新さまから山下澄人『しんせかい』についての拙稿が載った北海道新聞の現物が届いた。まぼろしじゃなかったんだ……! そのうちウェブにも載ると思います。 pic.twitter.com/ul8Igk2fa7— 東條慎生 (@inthewall81) 2017年11月5日山下澄人の芥川賞受賞作『しん…

季刊「未来」の後藤明生論第五回「「とつぜん」としての世界」について

後藤明生論第五回掲載の季刊「未来」を一足はやく頂いた。今回は結構トリヴィアルな註をつけてあって、われながら何を調べてるんだ、と思ったりもしました。それなりに面白いとは思うんですけどもどうでしょうね。 pic.twitter.com/OGPlxWkWMo— 東條慎生 (@i…

季刊「未来」の後藤明生論第四回「憧れと挫折」について

季刊「未来」2017年夏号が届きました。後藤明生論第四回、「憧れと挫折」掲載しております。今回から『挾み撃ち』篇に入ります。 pic.twitter.com/1uD9eG6hg5— 東條慎生 (@inthewall81) 2017年6月27日 後藤論連載第四回の掲載された季刊「未来」2017年夏号が…

朴裕河 - 引揚げ文学論序説

引揚げ文学論序説: 新たなポストコロニアルへ作者: 朴裕河出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2016/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る引揚げ文学論序説 - 株式会社 人文書院人文書院のサイトには各種書評へのリンクがある。 2008年以来…

笙野頼子 - さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神

群像 2017年 04 月号 [雑誌]出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/03/07メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る身辺理層夢経のシリーズとして書き継がれている今回は、タイトルそのものに強烈な主張を盛り込んだ笙野頼子の現在地点。 「さあ、今こ…

北海道新聞に笠井清論を書きました。

Twitterで告知したまま忘れてましたけれど、さる3/28の北海道新聞夕刊で、連載企画「現代北海道文学論」の一環として私が担当した笠井清論が掲載されました。『北の想像力』の執筆者たちが北海道文学について論じる「現代北海道文学論」が3月28日の北海道新…

内向の世代の「内向」についてのメモ

先日Twitterで内向の世代について「小田切秀雄が言った「内向」とは政治参加の対義語としてのそれなので、雑誌社や団地の人間関係について書いていた後藤は、その意味で「内向」とされるわけです」などと書いたんだけれど、去年ぐらいに私信として内向の世代…

映画『kapiwとapappo 〜アイヌの姉妹の物語〜」上映とトークイベントに行ってきた

2017年4月1日〜30日『kapiw(カピウ)とapappo(アパッポ) アイヌの姉妹の物語』 | CINEMA Chupki TABATA 昨日、田端のCINEMA Chupki TABATAで行われた、映画上映および佐藤隆之監督と写真家の北川大氏のトークイベントに行ってきました。 映画は、佐藤隆之…

季刊「未来」の後藤明生論第三回「ガリバーの「格闘」」についての補記

未來社の季刊「未来」2017年春号に、「『挾み撃ち』の夢――後藤明生の引揚げ」第三回、「ガリバーの「格闘」」が掲載されています。できたばかりで一般に入手できるのは来週になるかと思いますけれども、よろしくお願いします。 pic.twitter.com/bWlZfr6UaQ— …

季刊「未来」の後藤明生論第二回「回帰する朝鮮」についての補記

連載第二回の掲載された季刊「未来」2017冬号が出たようです。 今回は前回を継いで植民地朝鮮をはじめて正面から描いた「異邦人」、「笑い地獄」そしてさしあたり70年連作と呼んでいるうちの最初の2作、「誰?」と「何?」を扱っています。また、後藤明生論…

2016年見ていたアニメ2

字数制限で引っかかった昨日に引き続き、後半。 2016夏 ●アンジュ・ヴィエルジュ夏アニメベストの作品。第一話から尺の半分以上が風呂シーンという萌えエロ美少女系作品と思わせて、自分と他人のすれ違いを丹念にかつ正面から描いたピュアなお話を展開するダ…

2016年に見ていたアニメ1

年末のアニメ感想。今年はクールごとにまとめた。だいたいクールごと好きな順から並んでいるけれども、上位以外はそんなにちゃんと決めていない。良いと思ったものと、当該クールでどうかと思ったもの一作を取り上げるという感じ。四万字を越えてしまった。…

2016年読んでいた本

今年は後藤明生論をずっとやっていて後藤ばかり読んでいたので、候補がそもそも少ない。とはいえわりとあったので、カテゴリごとに五冊程度ずつ挙げた。 日本文学 ひょうすべの国 植民人喰い条約作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/12…

向井豊昭アーカイブ更新 2016.12

向井豊昭アーカイブ 今回は向井豊昭のエッセイです。じっさいは歌人鈴木佐知さんとの往復書簡のうち、向井執筆部分にあたるものですけれど、自然の仕組みをうまく取り込んだ非常に穏和なエッセイで、教師のときはこんな話を生徒にしていたのではないかな、と…

「放課後のプレアデス Blu-ray BOX発売記念スペシャルイベント」メモ

ツイッターで概ね書いていたのを、ブログにまとめるのを忘れていた。遅くなったけれども、ロフトプラスワンに二ヶ月ぶり、表題イベントに行ってきた、その記録を。 放課後のプレアデス / SUBARU x GAINAX Animation Project:Blu-ray BOX発売記念スペシャル…

笙野頼子 - 人喰いの国

文芸 2016年 11 月号 [雑誌]出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/10/07メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る「文藝」2016年冬号に掲載された笙野頼子による「ひょうすべ」連作第五作。「ひょうすべの嫁」「ひょうすべの菓子」「ひょうす…