The kinks - To The Bone

いつかのIBMのCM。

使われているのは、The KinksのI'm Not Like Everybody Else。名曲ですね。

これ、Youtubeで初めて見たけれど、ワンコーラス分を、うまーく三十秒で編集している。

アルティメイト・コレクション

アルティメイト・コレクション

私は最初、Ultimate Collectionという二枚組のベストで聴いたので、キンクスを初めて聴くと同時に知ったのだけれど、元々代表曲Sunny AfternoonのB面、オリジナルアルバム未収録という割とマニアックらしかった一曲。いまはFace to Faceのボーナストラックとか各種ベストなどで聴ける。

昔は邦題が、「僕はウヌボレ屋」というもので、この曲のイメージをうまく訳している思う。皮肉にも、CMのメッセージとは真逆か。

キンクスは六十年代デビューの、ヴォーカルのレイとギターのデイヴのデイヴィス兄弟を中心とするバンドで、同時代のビートルズストーンズザ・フーとともにブリティッシュロックの四大バンドなどと呼ばれるくらいの大御所なのだけれど、たぶんこの四バンドで一番知名度が低い。VAN HALENによるYou Really Got Meのカバー元としてしか知らない人が多いんじゃないか(私もそうだった)。

で、まあ上記四大バンドで唯一一曲も聴いたことがないキンクスを聴いてみるかとベストを借りてみると、これが結構よかったわけですよ。

ユーリアリーなんかはヴァン・ヘイレンのやつより原曲のほうが格好いいし(特に、ほとんど乱雑とも言えるようなギターソロが凄い)、サニー・アフタヌーンその他の素朴な感じの曲もわりと良いと感じた。でも、個人的には最後の方に入っている新しめの数曲が聴きやすかった。Come Dancing、Do It Again、Living On A Thin Lineとかですね。*1

しかし、やはり、60年代当時の録音では音質が貧しくて、聴きづらい面は多分にある。七十年代に入るくらいまでのアルバムっていうのはやっぱり音に不満が残るものが多い。私は、そういうところできちんと曲に耳が行かないことがあって、この時期の音楽はなかなか良さがわからなかったりする。まあ、初期ビートルズとかが好きな人なら、すっと入っていけるかも知れないのだけれど。

でもまあ、ベストを聴いて結構気に入ったので、次は何を聴こうかと思って情報を探していたら90年代にベスト盤的なライブアルバムを出しているというのを知り、まあ全盛期を過ぎて演奏がおとなしくなったとしてもライブによるリレコーディングとして60年代のものよりずっといい音質で聴けるんなら欲しいと思ったら現在どうも廃盤。でもamazonのユーズドで国内盤が3000円程度で売りに出ていて、まあコレクター価格の7800円よりはましか、と買って聴いてみると、これが最初の思惑を吹き飛ばすようなアグレッシブな名ライブアルバムだったわけで、非常に驚いたと同時に、一気に私の「アルバム全部聴こうバンド」になってしまった。

To The Bone

To The Bone

元々は一枚もののライブだったのが、拡張されたものがこれ。二曲ほど一枚ものからカットされているらしいが、是非ともこの二枚組でお勧めしたい。これほど楽しいライブアルバムもそうはないと思う。

一曲目オール・オブ・ザ・ナイトの、キンキーサウンドと呼ばれるリフ中心のハードなロックナンバーからして格好良すぎだ。後のパンク、メタルなどに影響を与えたというのもうなずけるようなメタリックギターが冴え渡る。そして、会場の客とのコールアンドレスポンス。ライブ「ショウ」ではなく、その場での客とのやりとりがパフォーマンスにライブならではの動きをもたらしていて、とても、「その場にいたくなる」雰囲気だ。

二曲目はアコースティックセットでの演奏。このライブアルバムは、エレクトリックセットでのものと、スタジオに友人、親類縁者などの関係者を招いて行われたアコースティックライブとの音源をミックスさせて並べられているので、このつなぎにちょっと違和感が残るけれど、アコースティックでの曲も名曲揃いで、バラエティ豊かなキンクスを網羅するには適切な編集とも言える。

アコースティックものでは、どっかで聴いたようなイントロのデス・オブ・ア・クラウン、そしてデイヴィス兄弟の故郷を歌った、マスウェル・ヒルビリーズがよい。マスウェルみたいな曲は何というジャンルなのだろうか。カントリー? キンクスに限らず、こういう曲をもっと聴いてみたい。*2しかし、アコースティックでは初期の名盤という評価の高いヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティからのタイトル曲がすばらしい。ユーモアと暖かみのあるカントリーっぽい曲で、われわれは村の緑地保存委員会、と歌い出し、ドナルド・ダックとヴォードヴィルを守ってよ、とか、われわれはシャーロック・ホームズ(「われわれ」て!)、フー・マンチュー、モリアーティ、ドラキュラも守ってよ、とか愉快な歌詞もまた楽しい。凄く合唱とかしたい曲。最近気がつくと口ずさんでる。

で、永遠の代表作サニー・アフタヌーンなんかは、ほとんど客との大合唱大会。客に歌わすためにワンコーラス目を二回繰り返してる。フルコーラスではないのが残念だけれど、ライブならではの良さが味わえる。

ロック的なハイライトは二枚目の中盤、ローラあたりからの怒濤の代表的なロックナンバー連発の部分。アメリカでヒットしていた時期のヒット曲や、初期キンクスのリフ中心のものなどが、デイヴのノリまくったギターで演奏されている。I'm Not Like Everybody Elseなんかは三分強の曲が六分弱にまで引き延ばされて、少し物悲しい印象のあるこの曲に沿ったデイヴのギターが大幅にフィーチャーされている。元々この曲はヴォーカルがデイヴなのだけれど、ここではレイが歌っている。レイの歌い方がうがいしているような声になるのがちょっとアレだけれど、客に歌わせたりして盛り上がっているのが楽しい。しかしやはりここはデイヴのギターが主役か。

ライブの最後はやはりユーリアリーガットミーなわけで、これが最高に盛り上がるわけですよ。スタジオ版よりはるかにハードなデイヴのギターもさることながら、客が「You got me so I can't sleep at night」と大合唱してレイのシャウトが入る終盤の展開は最高。

ひねくれた、という意味のバンド名、コンセプトアルバム乱発とかわりとカルトな評価があるバンドだけれど、このライブでは王道も王道なすばらしい現役のロックバンドであることを証明している。どの曲もスタジオ版より格好いいのがスゴイです。

このアルバムには前掲のベストではあまり入っていないアリスタ期のアメリカンロック的な曲も入っているし、ヴィレッジ・グリーン*3、マスウェル・ヒルビリーズとかのカントリーな曲もあって、むしろベストより選曲はいいんじゃないかと思う。

まあ、んなこといっても、まだオリジナルアルバムは初期の数枚しか聴いていないのだけれど。

*1:今から思うと、このベスト、初期パイレコード時代からのものばかりで、コンセプトアルバム乱発のRCA期と、アメリカで大売れしたアリスタ期のものがかなり端折られているのが残念。

*2:余談だがクイーンで一番好きな曲は'39なのだけれど、こういうのを聴くにはどの辺を探せばいいのかわからない

*3:ここで省略すると別の曲になってしまうんだけれども