Beck,Bogert&Appice - Live

ベック・ボガート&アピス・ライヴ・イン・ジャパン

ベック・ボガート&アピス・ライヴ・イン・ジャパン

ジェフ・ベックが元ヴァニラ・ファッジ、カクタスのリズム隊と結成したハードロックトリオのライブ盤。1973年発表。かなり先進的だったジェフ・ベック・グループを解散してまで、当時としてもやや時代遅れのハードロックに回帰したということで、ベックファンからも賛否のあるBBAだけれど、このトリオは私はかなり好きだ。その後のフュージョン路線の方が評価は高いのだけれど、いまのところ、このバンドが自分の好きなジェフ・ベック。「ブロウ・バイ・ブロウ」のフュージョンサウンドっていうのは、悪いわけではないのだけれど、なんとなく乗れないんだよなあ。

じっさい、これはかなり強力なライブだと思う。ベックのギターはいわずもがなで、そこにギターと拮抗するようなティム・ボガートの爆音リードベースと、カーマイン・アピスのドラムが加わって、クリーム、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスと並び称されるロック史上最強のトリオと呼ばれている。

CDではベックのギターは右に、ボガートのベースは左にミックスされていて、両者の演奏をはっきり聞き分けることができる。聴きものなのはそのボガートのベース。ベックのギターと完全にタメをはるその音量と、リズムに徹する気のまるでないプレイは完全に「低い音の出るギター」。いってみれば、このバンドはジェフとティムのツインリードをアピスが下支えするというような構図になっていて、とにかくアグレッシブでハードだ。

冒頭の「Superstition(迷信)」ではリフをギターとベースでユニゾンしていて、その重量級リフの迫力はかなりのものだ。ユニゾンするだけじゃなく、時にギターがフリーなアドリブを始めると、ベースがリフを、ギターがリフに専念しているときはベースが縦横に動き回るといった自由自在なベースとギターの絡みを聴くだけでも、このライブはかなり面白い。

アピスのドラムもボーナム死後のレッド・ツェッペリンの後任ドラマーの最有力候補であったというだけあって、迫力と手数とが圧倒的。どうもドラムの音だけ低音域が弱いらしいのだけれど、ティムのベースがうるさいのでこれくらいでも私は全然かまわない感じだ。

この三人の取り合わせは、メロディのギターとリズムのベースドラム、という形ではなく、各人が対等以上で一歩も引くことなく演奏しているという驚異のバランスで成り立っている。クリームだって、ここまでベースが前には出てきていない。

ライブとしてのテンションも高くて、とにかく聴いていて楽しいアルバムになっている。曲自体を取り出してどうこういう感じではなく、歌よりもやはり、その重量級のリフやバッキングの演奏のノリが肝だろう。

とはいっても、「迷信」はスティーヴィー・ワンダー提供のもので、歌としてもよい*1。他にもスウィート・サレンダー、アイム・ソー・プラウドなど曲としてもわりと良いのがあったりする。ワンダー提供の楽曲があるように、このバンドではソウル方面へのアプローチがあるようだけれど、私には良くわからん。

とりあえず最高のハード・ロック・ライブのひとつだと思う(というほどハードロックを聴いているわけではないが)。リードまがいのベースが聴きたい人に特にお勧め。

これ以降、ベックはフュージョン方面へ路線を変更してしまうので、ベックのハードロックスタイルが聴ける最後のアルバムとしても貴重とのこと。


Beck, Bogert & Appice - Superstition
映像も音も悪いけれど、BBAの珍しいライブ映像。
もう一つ追加。

Bonamassa Bogert Appice Superstition
Bonamassaてのが誰かわからないけれど、今年のボガートとアピス。爆音リズム隊は健在ですねえ。ティムが使ってるのは六弦ベースか。
ロック関係ではメジャーサイト、HINEさんのサイトでのバンドの紹介。
BECK BOGERT APPICE ベック・ボガート&アピス
これも参考になる。
「“レッド・ツェッペリン”になりたかった、ジェフ・ベック」

*1:しかしこれはベックより先にワンダー自身がヒットさせてしまって二人の仲を険悪なものにしたという曰く付きの一曲でもある