Porcupine Tree - Deadwing

デッドウィング

デッドウィング

おとといのKinoのドラムがいたバンド、ポーキュパイン・ツリー。このバンドはかなりキャリアが長く、デビューは80年代にまでさかのぼる。2005年作「Deadwing」はオリジナルアルバムとしては9か10作目で、このアルバムで初めて国内盤が出た。ちなみに、Kinoのドラムはポキュパがメジャーデビューする前の、Lightbulb Sunまで在籍の様子。

元々ピンク・フロイドフォロワーともいうべきバンドだったらしいのだが、近作ではそのイメージを払拭しつつあるらしい。ハードな曲調やメタリックなギターリフなどは確かに現代の音で、プログレバンドと呼ぶのにためらう。しかし、間を生かした浮遊感のある音作りや、メロトロンなどのキーボードの音色は確かにフロイドあたりのプログレらしくもある。

現代的な音のなかにプログレの方法論を持ち込んだと言っていいのではないかと思う。メタルすぎず、プログレすぎずな塩梅がちょうど良く、今作はかなりの名盤だろう。あるいは2005年を代表するアルバムだといっても良いのかも知れない。


冒頭のタイトル曲はいきなり9分の大作。疾走感あふれるハードメタリックな曲調はzeppelinの「アキレス最後の戦い」のようでもあるが、メロトロンなどを用いた雰囲気作りのおかげで、どこか浮遊感のある独特の音世界を作り出している。これ一曲でポキュパの個性をまるごと提示するかのようでもある。かなり格好良し。ちなみにこの曲と四曲目にはキング・クリムゾンからエイドリアン・ブリューがギターソロで参加している。

次曲、「Shallow」はメタル調ギターの明快なリフがリードするシングル曲向きな一曲。ヴォーカルにかかる深いエコーが印象的。このアルバムではこの曲だけを聴くことも多く、もっとも聴く回数の多い曲。プログレが苦手だという人には二曲目から聴かせる手もありかと。

三曲目のLazarusはアコギとピアノにキーボードが絡まる静かなバラード。哀しげだがほのかに優しい響きがあり、感動的な一曲。ここまでの冒頭三曲は個人的には全く隙のない完成度だと思う。

五曲目はこのアルバムのハイライト、12分に及ぶ大作。一曲目とは対照的に静かな導入、冷たいメロディ、浮遊するキーボード群。五分弱でギターが切り込んで滑り出していくあたりは一曲目とはまた違った格好良さがある。息をつかせぬ、というわけではないのに、緊張感の途切れない絶妙の空気。曲のテンポは速いのに、どこか緩やかに進んでいくような感じがするのは、歌のメロディとキーボードの音のせいだろうか。

以降に続く曲も憂鬱さと浮遊感を取り混ぜた独特の世界が展開されている。陰鬱メタル「Open Car」やこれも暗さと浮遊感をたたえた「Start of Something〜」、ラスト曲はぼんやりとした暗さを持つスローテンポの曲でとらえどころのない空気感があたりに立ちこめる。

日本盤にはボーナストラック「Shesmovedon」が収録。これは「Lightbulb Sun」の収録曲らしいが、ほとんど違和感なく溶け込んでいる。

日本盤にはさらにボーナスディスクがついていて、詳細はわからないが、今作のラジオエディットやライブ、さらにレアトラックや既発のアルバム(入手困難作を含む)からいろいろかき集めて、たっぷり60分収録。これにも結構な名曲が入っていて侮れないので、要注意。

日本のファンサイトでのレビュー。
Steven Wilson JPBO: catalogue : "Deadwing" - Porcupine Tree
Progarchiveのポキュパページ。数曲試聴可能。
PORCUPINE TREE discography, MP3 and reviews