Jeff Beck - Truth

Truth (Exp)

Truth (Exp)

ヤードバーズを脱退したジェフ・ベックは、ソロでシングルをいくつか発表した後、そのときのメンバーを中心にジェフ・ベック・グループを結成する。ソウルフルなヴォーカルで知られるロッド・スチュワート、のちにローリング・ストーンズに加入するロン・ウッド、後にジャーニー、フランク・ザッパデヴィッド・ボウイなどを渡り歩くことになるエインズレー・ダンパーで結成されたバンドはドラムをミック・ウォーラーに交代し、ファーストアルバム「トゥルース」をリリース。

ベックのこの時代の動きについてはHINEさんのサイトを参照。面白いのは今作にも参加しているジョン・ポール・ジョーンズキース・ムーン、ニッキー・ホプキンスとジェフ・ベックでセッションをやったことがあり、そのメンバーにスティーヴ・ウィンウッドを加えて、「レッド・ツェッペリン」というバンドを結成しようと言う構想があったらしいことだ。「トゥルース」にはペイジ作の曲も入っており、ペイジのヤードバーズ時代には後のツェッペリンの代表作「Dazed and Confused」を演奏していることなどを考えると、この時期の各ミュージシャンの人脈図はかなり面白いことになっている。

プレ・ツェッペリン、あるいはプレ・ハードロック的状況だともいえるが、事実、ジェフ・ベック・グループのこのアルバムは、まさにプレ・ハードロックといえるものだと思う。ジミー・ペイジを中心に考えると、ヤードバーズレッド・ツェッペリンが直結してしまうのだけれど、どうにもこの両者の懸隔は甚だしい。けれど、あいだにこのジェフ・ベック・グループを入れると、かなりスムーズに60年代なかばのブルースロック、ロックンロールから、重たいリズムのハードロックへ至る音楽的変遷をたどることができるような気がする。

まあ、ジェフ・ベック・グループは後にジェフ・ベックジミー・ペイジに俺のアイデアを盗んだ、と非難していたらしく、ジェフ・ベック・グループの歪んだギターに歪んだヴォーカルというスタイルをツェッペリンが参考にしたという説を聞いて、私もジェフ・ベック・グループを聴いてみたわけだけれど。

確かに、このアルバムで聴かれるサウンドはかなりハードロックっぽい。ブルージーなミドルテンポの曲調に引きずるようなリズム感覚、それにヴォーカルとギターの取り合わせが非常にハードロック的に聞こえる。プレ・ハードロック、というかほぼハードロックかなとも思う。スティーヴィー・ワンダーとの交友もあるようにベックはソウルの影響が強い人なんだけど、このアルバムにはあんまりそういう印象がない。

また、一般にこのアルバムはジェフ・ベック・グループの第一作として語られているけれど、ジャケットやクレジットはジェフ・ベック名義になっている。

以下曲ごとに。

1.Shapes Of Things これはベック時代のヤードバーズでも演奏していた曲で、ヤドバverとこのJBGverを聞き比べてみればそのサウンドの変化ぶりは歴然としている。JBGでは重たいリズムにロッドのヴォーカルが乗るわけだけれど、曲の印象がもう全然違う。ヤードバーズのものだと、どうしても軽快なロックンロールに聞こえてしまう。ヤードバーズのものだってリズムの音量自体は結構大きいのだけれど、JBGのは音量云々ではなく、粘りつくような、引きずるような重みの有無が大きな違だ。アレンジもかなり変わっていて、明るい印象があったヤドバverに比べて、ぐっとアダルトな雰囲気をまとっている。

2.Let Me Love You ブルージーな曲。こういうブルースチックな曲が引きずるようなリズムで演奏されると、もうすごくツェッペリンにきこえてしまう。ロン・ウッドの動き回るベース(元々ギタリストなわけだし)が動き回り、ヴォーカルと掛け合うようにベックのギターが切り込んでくる。

3.Morning Dew BBAライヴでも演奏していた曲。ベックのギターはリフとかを弾くよりもアドリブ的な合いの手的なギターをプレイしている印象。リードはベースというところか。

4.You Shook Me ピアノが大々的に取り入れられた曲。この曲、一説にはツェッペリンサウンドコンセプトの元ネタとも言われ、ツェッペリンもファーストで演奏している。しかし、ベックはギターを普通には弾かないんだな。

5. Ol' Man River スローテンポなブルージーな曲。というかこういうのをブルージーといって良いのかどうかははっきりわからないが。

6.Greensleeves なぜグリーンスリーブス? アコギ一本、なかなか良い感じだが、なぜグリーンスリーブス。

7.Rock My Plimsoul ヘヴィなブルースロックでなかなか良い。ギターがリフっぽくバッキングを弾いている。やはりベースとドラムが基本を作って、ギターが好きに弾いている感じ。

8.Beck's Bolero ジェフズ・ブギーとかベックには自分の名前を冠したインストが多い。これはペイジ作の曲。ギターインストで、同じメロディを繰り返しつつダイナミックに盛り上がっていく。どうもこのアルバムはこの曲以外は全部何がしかのカバーみたいだ。

9.Blues Deluxe 冒頭のハードなドラムにジャジーなピアノ、そしてまさしくツェッペリンを思わせるロッドのヴォーカルが面白い。ブルースというくらいだからこれをブルージーといっても差し支えないだろう。間奏部分での疑似ライブな拍手や歓声が何とも言えない。後半のベックのギターはなかなかハード。

10.I Ain't Superstitious 「迷信嫌い」という邦題で、ベックが自分にプレゼントしたはずの「迷信」を先にスティーヴィー・ワンダー自身がヒットさせてしまったことを皮肉った曲、とのこと。ちょっとユーモラスなところもあり、それでいて結構ハード。

オリジナルアルバムはここまで。最新のリマスターCDにはソロ時代のシングル曲やテイク違いが収録されている。

Rock My Plimsoulのver違いは明らかにアップテンポになったもので、アルバム版での粘りつくようなヘヴィさはない。これはこれでいい。

シングル曲は時代を感じるものが多いが、曲としては良いのもある。ただ、アルバムとは音楽性がかなり違うのがアレだが。「Love Is Blue/恋は水色」ってこれ、すごい聞き覚えのあるメロディだけれど、何で有名なんだろう。検索したらポール・モーリアとか出てきたけれど。

JEFF BECK GROUP ジェフ・ベック・グループ