Wishbone Ash - Illuminations

Illuminations

Illuminations

ウィッシュボーン・アッシュといえばブリティッシュロックを代表する名盤と呼ばれる「Argus」が有名で、ツインリードギターを確立させたバンドとして知られており、ブリティッシュロックの大御所的なバンドだろう。

ツインリードとはいってもハードだったりするわけではなく、あまり歪ませないクリアなトーンをユニゾンしたりして美しいハーモニーを奏でるのがメインの、情感を優先したプレイだ。「哀愁のツインリード」とはよくいったもので、派手なバンドではない。

私は実は「アーガス」がそれほどしっくりこなくて、今ひとつな印象があった。「ライブ・デイト」を聴いても、良い部分もあるが全体としてもうひとつな感じがあった。で、実はツインリードギターを聴くなら、メンバーチェンジを経てアメリカンなサウンドに接近した第二期のアルバムの方が良いらしいと聞き、「New England」を聴いてみた。これはA面はかなりの良作で、後半質が落ちるがツインリードが堪能できる良いアルバムだった。

で、結局私は「アーガス」「ライブ・デイト」「ニュー・イングランド」と、ベスト盤を借りて聴いたくらいで、オリジナルアルバムをあまりちゃんと聴いていない。

で、そんな時に店頭で二枚組の妙なCDを見かけた。得体の知れないジャケットでどうもスタジオ盤とライブ盤のカップリングらしいのだけれど、素性が知れないのでネットで検索してみたら、これが96年のスタジオ作「Illuminations」と01年の「Live DatesIII」のカップリングらしいと知ってすぐに買ってみた。

Wishbone Ash

Wishbone Ash

アッシュは七十年代のバンドで、最盛期もその時期だが、その後も活動は続けていて、近年も頻繁にライブを行っているし、アルバムもいくつも出している。いまやオリジナルメンバーはアンディ・パウエルだけとなり、彼のソロプロジェクトとも言えるかも知れない。近年のアルバムで評価が高いのは「Bona fide」とこの「Illuminations」。「Live DatesIII」も近年のオフィシャルライブとのことで、両方聴いてみたかったアルバムだったので、このCDは渡りに船だった。オリジナルのジャケットを見れないのは残念だが。

で、「Illuminations」だが、これがかなりの力作、あるいは名盤と言っていいのではないかと思う。とにかく曲の出来がどれも良く、ツインリードを堪能できるばかりではなく、ヴォーカルがとても上手いため歌ものとしても聴き応えがあるのがすばらしい。濃いファンの人もこの時期のアッシュの技量は過去最高レベルなのではないかと評している。メンバーはアンディ以外はアッシュファンの若い人たちらしい。

音の傾向はさすがに「アーガス」あたりとは違い、非常に現代的というかかなり洗練された曲作りがなされている。ブリティッシュではあるが、「アーガス」あたりの土俗さはなく、むしろAOR的な洗練が加わり、非常に聴きやすくなっている。この音はむしろ、昔のアッシュのファンではないという人にアピールするのではないかと思う。音全体が新鮮だ。また、「ニュー・イングランド」あたりで感じた、このバンドの歌メロは私のあまり好みではないな、という印象がこのアルバムで覆ったのがうれしい。


1.Mountainside ツインギターがユニゾンするアッシュ得意のイントロ。リフを繰り返した後曲調がかわり、歌に突入する。この歌が上手い。アッシュらしくはないかも知れないが、TOTOとかそこらへんのAORを連想させる声質でこの声がかなり良い。このヴォーカルのおかげで明らかにこのアルバムはワンランクあがっていると思う。ギターもよし歌もよしで、アルバムを代表する一曲。

2.On Your Own わりと水準作と感じるがその水準がこのアルバムでは高いので、退屈する曲ではない。ヴォーカル兼任のベースの音色もなかなか良くて聴き応えがあるのがいい。

3.Top Of The World 愁いのあるミドルテンポバラード。なかなかの良曲。

4.No Joke これはアンディ・パウエルのヴォーカルらしい。ユーモラスで軽快な良曲だ。ヴォーカルのうまさはリードヴォーカルに譲るが、甘い声質はなかなか魅力的なのではないか。後半のギターソロが聴き物。

5.Tales Of The Wise 十分を超える大作。冒頭の哀愁漂うイントロからして七十年代アッシュの雰囲気を強く打ち出している。歌メロがやはりすばらしい。歌が一段落するとテンポがあがり、ベースがうねりだし、右ギター(アンディ)がソロを取る。そのうち、またテンポがゆっくりになり、情感豊かな左ギターがソロ(ロジャー)次に右ギターという感じに展開。後半はこうしてツインギターが交互にソロを取っていく構成。このアルバムのハイライトだ。

6.Another Time 前曲とシームレスに繋がって始まるアップテンポでポップな一曲。アンディがアコースティックギターを弾いているのが良いアクセントだ。やはり歌がよい。

7.A Thousand Years 特に好きな曲ではないが、ベースの音色とギターワークでつまらなくはない曲になっている。

8.The Ring アコースティックギターとエレキのツインリードというスタイル。悲しげなメロディが印象的な佳曲。中間部でのアコギソロの部分はかなり良い。

9.Comfort Zone ベースとツインギターが絡んだリフが印象的なミドルテンポの曲。後半はツインギターのユニゾンのソロ(?)

10.Mystery Man 軽快な曲だが、普通な印象。

11.Wait Out The Storm ボーナストラックをのぞけば一応これがラスト曲。ポップで軽快な曲だがメインリフが結構ハードなのが印象的で割と良い。

12.The Crack Of Dawn ボーナストラック。インストで、アコギがメインだが、エレクトリックギターもソロを取る。しめやかな印象。


まあ、やはり前半の曲の出来がすばらしいし、後半も悪くはない。なによりバンドサウンドとして、ギターはもとより、ベースの音も重く歪んではっきり聞き取れるのがアグレッシブで好感触。ギターロックアルバムとしても珠玉の出来だと思う。これはよい。しかし、ファンからすると、次作「Bona Fide」は全キャリアでもベスト3クラスの出来で今作よりも良いらしい。

今年、アッシュの初期から二期(Just Testingまで)の七十年代のアルバムはリマスター&ボーナストラック仕様で再発される予定がある。だからその時期のオリジナルアルバムをいま買い控え中なので、次は「Bona fide」を聴くかな。

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