Gong - Shamal

Shamal

Shamal

前作「YOU」でデヴィッド・アレンが脱退*1し、ピエール・ムーラン主導のジャズロックフュージョンバンド化した第一弾アルバム(とはいってもアレンズ・ゴングをきちんと聴いていないが)。名義はまだゴングだが、ほぼムーランズ・ゴングと呼んで差し支えないだろう。

マリンバヴィブラフォンを用いた独特のフュージョンサウンドがここでも聴けるのだけれど、今作でもっとも特徴的なのはアルバムタイトル(シャマルとはペルシャ湾周辺に吹く北西風、らしい)にあるように、エスニックなワールドミュージックの導入だ。なかにはまるで違うCDを聴いているのかと勘違いするような曲まで含まれていて、ある意味過渡期ならではの魅力がある独自のポジションを持つ作品。

1.Wingful Of Eyes フルート(バンブーフルートか)とヴィブラフォンエスニックな導入を持つヴォーカル曲。リバーブの効いたヴァイブの音色がドリーミーな雰囲気を漂わせ、トンビの声のような笛の音が響き渡る。

2.Chandra ヴァイブを交えたバッキングのなかをサックスがソロを取り、キーボードがあとを継いだかと思うと、マリンバの軽快なフレーズが飛び出し、ややユーモラスなサウンドに。マリンバ、ヴァイブとともにサックスが主役。後半になってヴォーカルが入る。小気味よい鍵盤打楽器が多彩な魅力を与えている。

3.Bombooji バンブーフルートだろうと思われる笛の音が全篇を覆うエスニックそのものな一曲。笛に絡む鉄琴(グロッケン?)のアンサンブルが序盤で、途中からリズムセクションやギターも絡んだ奇天烈なフュージョンへ変化。後半の和風なサウンドの導入でまた驚く。超異色作。

4.Cat In Clark's Shoes アップテンポでリズミカルなフュージョン。序盤はサックスやバイオリンが即興的に暴れ回るソロパート、中盤からはバイオリンの狂騒的なソロが炸裂する。後半では非常にユーモラスな雰囲気を漂わせる。全体にタイトルが示唆するように、軽快でユーモラスな一曲。

5.Mandrake ムーランズ・ゴングのライブにも取り上げられていた曲。ここではフルートの音色が生かされていて多少印象が違う。鍵盤打楽器のアンビエントな雰囲気が良い。中盤からはリズム隊が入り、リバーブを生かしたヴァイブ、マリンバの音色の中をサックスがソロを取る。ヴァイブのリバーブが全体を覆うアンビエントな曲。

6.Shamal ミドルテンポで淡々と進んでいく曲で、中盤からのヴァイブのソロが最高な一曲。小気味よい素早いフレーズを刻んでいく鍵盤打楽器のプレイをもっと聴きたくなる。


次作からアラン・ホールズワースが参加していることで知名度を奪われている感のある作品だが、ムーランズ・ゴング好きとしてははずせないだろう一枚。フュージョンとしての洗練度合いは以降の作に譲るし、鍵盤打楽器のフィーチャー具合もまだ物足りない部分があるが、その後見られないエスニック趣味が独特な異色作でもある。


これ以降三枚のアルバムは十年以上リマスターされていないので、そろそろ再発時期なんじゃないか。私はつい買ってしまったが、ここ何年も国内盤が出ていないようだし、CDの音量も低いので早いところリマスターなりしてほしいところだ。

*1:アレン脱退についてここで面白いことが書いてあるhttp://d.hatena.ne.jp/hakuasin/20070616#p2