- アーティスト: Gong
- 出版社/メーカー: EMI Europe Generic
- 発売日: 1993/12/06
- メディア: CD
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では、おとといの続きで、デヴィッド・アレン脱退後のピエール・ムーランが主導権を握った(といえるのかどうか微妙なんだが)、ジャズロック化ゴングの第二作、「ガズーズ」1976年作。タイトルは炭酸水のこと。
前作と比べると、かなり自身のサウンドを構築してきているところがあり、ヴィブラフォンもかなりフィーチャーされていて、パーカッションを駆使したフュージョンという独自路線を確立した傑作だといえるだろう。
これと次作「ExpressoII」、そしてムーランズ・ゴングの「Downwind」あたりがムーランズ・ゴングとしては代表作、というか人に勧めやすい。
1.Expresso 序盤はわりと普通のフュージョンに聞こえるが、バックでずっとヴァイブが鳴っていて、独自の感触。アラン・ホールズワースのギターがほぼ主役だといわんばかりの活躍を示している。そしてディディエ・マレルブのサックスも効果的。また、ミレーユ・バウアー、ベノワ・ムーランのヴァイブ、マリンバのツイン鍵盤打楽器に加え、コンガなどで参加のMino Cinelou(読めん)と、三人もパーカッショニストがいるという特異な編成によるサウンドは独特の高揚感を持って迫ってくる。
2.Night Illusion ホールズワース作曲のギターフュージョン。やはりバックでリバーブを効かせているヴァイブがいい。
3.Percolations - Part I & Part II ムーラン作曲の二部構成の十分に及ぶ大作。タイトルは濾過、浸透の意。序盤はヴァイブやトライアングルなどの金属質だがなめらかな質感の響きを生かした非常に瞑想的でミステリアスな曲調。四分過ぎからややテンポがあがりだし、ヴァイブの素早いフレージングにドラムのドライブ感あふれる演奏が絡む、まさにムーランズ・ゴングといえる演奏になる。ヴァイブだけではなくマリンバやらも絡んだ多重鍵盤打楽器のリフレインが小気味よくもミステリアスな不思議な印象だ。ムーランのドラムのダイナミックなソロプレイで後半は占められている。ほとんど打楽器のみによる組曲を飽きさせないで聴かせるムーランズ・ゴングの真骨頂といえる一曲。後半のドラムソロにはヴァイブなどを絡ませたままの方が良かったのではとは思えるが。しかし、これほど長いドラムソロをスタジオ盤に入れてしまうのはやはりムーランが主導権を握っている証だろう。
4.Shadows Of またもやホールズワース作曲。イントロのドラムが前曲を引き継いでいるかのように聞こえる。途中からマレルブのフルートがソロを取るのがなかなか効果的。その後にソロをとるホールズワースのギターがまたうにゃうにゃとのたうちまわるのが面白い。演奏がいったん切れて、アコースティックギターとフルートがリードするパートが始まる。ホールズワースはアコギでも速弾きを披露しており、ディ・メオラを思い出す。
5.Esnuria ホールズワースのヘヴィーなリフに、マレルブのサックス、鍵盤打楽器のバッキングが絡む高密度のアンサンブルが聴ける。中間部のツインヴァイブを生かしたパートが良い。この曲もトリプルパーカッショニスト編成だ。サックスがソロを取る間は、いつのまにかマリンバがバッキングを取っている。しかし、Mino Cinelouの演奏しているのは、コンガはわかるが、cuicaとtemple blocksというのは何だろうか。この人はアフリカンパーカッションの担当だと思われるのだが。後半ではパーカッションがより前面に出た小気味よいリズミカルなアンサンブルが聴ける。
6.Mireille ベースのフランシス・モーズが作曲し、アコースティックとエレクトリックピアノを担当、ホールズワースがアコギを担当した静かな曲。熱い演奏をクールダウンさせるよなエンディング。
これは傑作。パーカッションをフィーチャーしたジャズロック、フュージョンとしての独自性を確立したと言えるサウンド。耳あたりのよい鍵盤打楽器の音色が魅力的なのは当然として、長いソロを披露するドラムのダイナミックな演奏も良い。また、バンドを乗っ取らんばかりのホールズワースの活躍ぶりも特筆すべき点だろう。私としてはホールズワースよりも、むしろ鍵盤打楽器群にこそソロを取って欲しいのだが、どうもムーランズ・ゴングとしては鍵盤打楽器は前に出すぎず効果的なバッキングをする方を重視しているようで、後のアルバムでもあまり派手に前には出てこない。
その意味でも、Percolation組曲は鍵盤打楽器、ドラム、パーカッション等のリズム楽器が大活躍する本作の白眉。瞑想的で、リズミカルで、ダイナミックな名曲。
Gazeuse! ピエール・モルレーンズ・ゴング (1977)
ここのページによると、Mino Cinelouはミノ・シネリと読み、アフリカンパーカッションではなく、ラテンパーカッション担当だという。
あ、書くのを忘れていたが、Pierre Moerlen、ピエール・ムーランはこれまで、モエルランだとかモルレンだとか呼ばれてきたが、紙ジャケ「Time is the Key」のライナーで、執筆者が直接ムーランに訊いたところ、Moerlenは実は「メルリン」と読むのが正しいらしい。フランス語を習っていた知人に訊いたところ、そうは読めないだろう、と答えたのだけれど、ムーランの出身地がアルザス・ロレーヌ地方だと知ると、ああ、そこは変な方言があるから、と納得したようだった。まあ、フランス語でも読めない名字なので、これまで読みが混乱していたのも仕方のないことなのだろう。リマスター盤で「ピエール・ムーラン」と呼称を統一しているのは、面倒だから英語読みで行こうということなのだろうか。