Flairck - Live in Amsterdam


フレアークの三作目はアムステルダムでのライブを収録した二枚組。トラッドな叙情性とテクニカル、ハイテンションなアンサンブルを特徴とするフレアークだが、スタジオ版でもかなりのスピードだったテクニカルなパートが、ここではよりいっそうのテンポアップがなされていて、尋常ではない熱演を聴かせてくれる。少しは落ち着いたらどうだと言いたくなるような、冗談のようにスピーディなアンサンブルは驚異的だ。

映像がないので何が起こっているのかが分からないのが残念だが、いくつかの場面で観客の笑い声が入っていて、何かしらのユーモアを交えて演奏を行っているのがわかる。そういう意味でも非常にパフォーマンスに長けた人たちだ。

演奏曲目は既発の二枚のアルバムから選曲されているが、二曲未発表曲が収録されている。MCを交えた小曲「Reklame(Advertisement)」と、レコード一面を占める「De Eerste Dag Na Je Vertrek(The first day after your departure)」の二曲。

トラックリストは以下。
1.Oost-West Express
2.De Stoomwals
3.Aoife
4.Reklame
5.De Eerste Dag Na Je Vertrek
6.April 3rd
7.De Vlinder
8.Voorspel In Sofia
9.Variates Op En Dame

冒頭から立て続けにフレアークのテクニカルアンサンブル二曲が炸裂する。叙情性とスピーディなアンサンブルが同居した名曲を、さらにアグレッシヴにスピードアップしている。でもこれでもまだ序の口だ。

3はしっとりと落ち着いたトラッドで、叙情性を強調したフルートの演奏が光る。

未発表曲の4はほんの十数秒程度の小曲で観客の歓声を聴くに何かパフォーマンスしながら演奏しているのだろうと思われる。

5はアルバム未収録の大曲。バイオリンの悲しげなメロディを導入に、ややフリーな演奏が続く。四分くらいからだんだんとテンポが速くなっていき、バイオリンの高速フレーズがリフレインされ、緊張感を高めていく。そして、フルートが加わったと思うと、非常に印象的な旋律がバイオリンとフルートのユニゾンで奏でられ、落ち着いたアンサンブルになる。かと思うとベースがうねり、アコギが素早いカッティングを見せ、フルートのハイテンションなソロへと突入する。ベース、アコギのリズムセクションのテンションもすさまじい。バイオリンも参加し、勇壮なソロのメロディがどんどんテンポアップしていく驚異的なアンサンブルへ。アコースティックベースの演奏も聴き物だ。テンポを落としそのままベースソロへと移行。フリーフォームな演奏がわりに続いた後、ベースとアコギがにわかに盛り上がってくる。突然スパニッシュな曲調になった後、ラストは観客の笑い声がさざめくパフォーマンス。と思うと最後の最後に超スピードのアンサンブルで幕を閉じる。後半フリーフォームな演奏が多く、それがスタジオ録音されなかった理由らしい。しかし、前半はかなり良い。

6は中近東的な音色(シタールかな)が印象的な叙情トラッド。

7はイーリアンパイプも活躍する叙情トラッドだが、途中からハイスピードなアンサンブルに突入する。勇ましい感じもあるメロディが印象的。しかし、テクニカルで叙情的な美メロのアンサンブルはやはりすばらしい。

8は序盤から観客の笑い声が聞こえる。フルートの高速フレーズがリードする彼らの代表曲。途中でかなりの遊びを交えて演奏されている。

ラストは20分に及ぶファーストアルバムのタイトル曲。序盤の静かなパートからアンサンブルが炸裂する瞬間に、観客の大きな歓声が聞こえるのが面白い。拍子がずれてんじゃないかというような白熱したスピードの演奏だ。これもかなり遊びが入っている部分があり、観客の笑い声が聞こえる。エンディングでは一人変な音を出しまくっている人がいる。


メロディの魅力はそのままに、白熱した演奏のすごみとユーモアを交えて観客の笑いを取りにいくというエンタテイメント精神が実感できるライブだ。しかし、これでも後期のライブに比べるとまだおとなしい方だというのだから驚く。

また、四人のみによるライブなのに、楽器を多数持ち変えることで、多彩な音を出していることも特筆すべき点だろう。みんなマルチプレイヤーなので誰が何を演奏しているのかはよくわからないが。

この人たちは、是非ライブ映像を見てみたい。