水鏡 - 水鏡

Amazonでは扱っていないので情報もジャケ画もなし。

90年代末に結成された和風プログレバンド、水鏡のファーストにして現在唯一のアルバム「水鏡」。2003年作。フランスではMuseaから、日本ではPoseidonからそれぞれ発売されているいわばインディーズだが、とりあえずHMVで入手可能。
水鏡 : 水鏡 | HMV&BOOKS online - PRF005
和風プログレといえばまあ、新月なのだろうけれど、いま高いボックスしかないみたいなので聴けていない。じっさい、このバンドも当初は新月のコピーなどもやっていたようだ。

楽曲は、シンフォニック・プログ、いわゆる「シンフォ」な変拍子や長尺の曲調なのだけれど、そこにフルート(これが結構和風に聞こえるんだ)が入り、和風のメロディを多用するところが特徴的。日本的なものをプログレに混ぜ込んだこれもいわばトラッドプログレ

ただ、ベースとなるサウンドはまんまプログレで、和風の楽器も風鈴などのパーカッションや大正琴がクレジットされているものの、ヴォーカルの人は尺八ではなくフルートを吹いているし、他はエレクトリックなプログレバンドの基本編成でできている。

しかし、なかなか印象は独特で、どプログレのロックサウンドに和風のメロディが乗るのはけっこう新鮮。でありながら、なぜか変に懐かしいレトロな印象もある。なんというか、古いアニソンとかにこういう感じのするものがあったようなないような。和旋律だからなのか、ギターのメロディが勇壮なテーマを繰り出すときにそういう感じが強まる。不思議な印象だ。

アナログキーボードのサウンドや、曲のプログレ的展開などに特に抵抗がないならば、フルート入り叙情派プログレとしてもなかなか面白く聴けるだろうと思う。


ただ、やはり多少B級的な印象があるのも確か。自主盤なのでレコーディングに金がかかってないのがよく分かるプロダクションはこれはもう仕方がないが、歌がちょっと微妙に感じられるときがある。歌詞がちょっとまがい物くさいのだ。また、言葉遣いが統一されていないとか、曲に詞をうまくはめ込めていないきらいがあるとか、そういうところも気にはなる。あと、和風の雰囲気を出すのに、夏の虫の音だとかのSEにたよるのはすごい安易なやり方だと思うのでやめた方が良いのではないかと思う。イントロやアウトロで使うならまだしも、曲中にならすのは私は好きではない。その雰囲気は曲と演奏で生み出すべきなんじゃないか。

とはいっても、やはりこの和風の叙情性を強く打ち出したサウンドは得難い面白さを持っている。それにこのバンドはまだもっと良くなりそうな余地があると思う。次回作が出るなら是非聴いてみたい。

なんというか、多くの人に強く薦められるだけの普遍性とクオリティがある、とは言えないが、興味のある人になら結構面白いよ、とは言いたいアルバムだ。

オフィシャルサイトではライブ映像の配信や試聴もやっているので雰囲気をつかめる。
プログレッシブ和ロック 水鏡