Flairck - Circus


ライブ盤を挾んだ、フレアーク三枚目のオリジナルアルバム。1981リリース。
前二作ではトラッドベースのサウンドだったが、ここではサーカスのアルバムタイトル通り、サーカスを思わせるようなにぎやかで楽しげなサウンドに変化している。編成もシロフォンマリンバ、グロッケン、タブラやシタールまで操るパーカス奏者を加えての五人、それと三人のゲストがいる。

テクニカルな速弾き演奏の緊張感は依然健在だが、今作ではよりバラエティ豊かでユーモラスな色彩が強い。トラッドな叙情メロディよりは、マリンバの軽快なリズムを効果的に用いたり、アコーディオンなどの楽器がいかにもサーカスが盛況、という情景を映し出す音色が前面に押し出されている。

以前のものとは毛色が違うが、やはりこれも傑作なのは間違いない。

以下曲ごとに。ちなみに、曲名の後ろの括弧はAltavistaで直訳したもので、その次にある括弧は、オフィシャルサイトでの英語タイトル。

1.De Overtocht(The Crossing)(Oceana)
シタールか何かのような複弦ギターの音色を導入として、序盤はゆったりとした曲調。素朴で牧歌的な雰囲気だ。だが、途中からバイオリンのフレーズをきっかけにしてにぎやかな速弾きパートへ突入。トラッドというよりは、タイトル通り、サーカスの音楽のようだ。アコースティックギターのスピーディなソロを挾んで、バイオリンの狂騒的なソロへ。そこへアコーディオンが登場し、再度バイオリンがスピーディなフレーズをリフレインしながらフェードアウト。

2.Circus Act 1 & 2
冒頭からユーモラスな効果音とともに、スピーディなアンサンブル。穏やかなパートではアコースティックギターがリードする。パーカッションを交えて少しずつスピードを上げていく。続いてバイオリン、木琴が現れ、リズミカルで軽快なアンサンブルへ。アンサンブルが収束すると、アコースティックベースソロが始まり、スピーディなベースソロにパーカッションが絡み、だんだんとテンションを上げていく。バイオリンやフルートが現れたかと思うと、すぐに牧歌的な曲調に展開。最後は、パーカッション、アコーディオンはじめ、様々な楽器が入れ替わりメインテーマを演奏するにぎやかなパートへ。

3.Circus Act 3 & 4
前曲のフェードアウト部分からフェードインしてくる。アコギとフルートでの牧歌的な曲調。数分フルートがソロを取り、シタールやパーカッションが絡んでくる。しばらく経つと、スピードアップし、ベースがアップテンポなリズムを刻み、フルートがより早いソロへ移行する。ソロがブレイクしたと思うと、バイオリンを中心にした変拍子っぽい高速アンサンブルへ突入。一段落すると、バイオリン、アコーディオンによるメロディ、マリンバがメインテーマを演奏するとチェロによる演奏。すぐさまフルートとバイオリンによるお互いを追いかけるような掛け合いを経て、素早いアンサンブルへ。ラストはいつも通り、どんどん加速するアンサンブルがすさまじい幕引き。

4.Es Vijf(Ash Five)(Struggle for Life)
音程の低いフルートのような楽器などが用いられるゆったりとした導入から、マリンバとバイオリンのユニゾンを中心としたアンサンブルへ。バイオリンのクラシカルな音色とマリンバの軽快な音のユニゾンは聴いていて楽しい音だ。続いてバイオリンとフルートのリードする牧歌的メロディは叙情的な翳りがあり、印象的。スピーディでテクニカルながらメロディの美しさは非常に上質というフレアークらしさあふれるパート。そこからパーカッションソロへ展開し、鼓笛隊のような太鼓の音。そこにフルートがリードメロディを奏で、バイオリンや鈴のようなパーカッションも加わる。そしてすぐにバイオリンとフルートのリードするアンサンブルへ。めまぐるしく展開が変わる。終盤、メロディが壮大になり、ドラマティックな終焉。


メンバーが増えて、アンサンブルにより厚みが出ている。個人的にはムーランズ・ゴング以来はまっている鍵盤打楽器の活躍がうれしい。初期三作をまとめた「3 Originals」という二枚組CDが出回っているらしいが、ボックスは高いという人はそれを聴いてみるのもいいかと。というか、細切れに買うくらいならボックスを買うべきだと思うのだけれど。ここまでの初期三枚とライブ二枚とで、もはや元を取れた感があるクオリティの高さなので。


Flairck - Ouvre - HMV

オフィシャルサイト
Flairck