- アーティスト: Paatos
- 出版社/メーカー: Inside Out U.S.
- 発売日: 2004/06/08
- メディア: CD
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編成はそのままだけれど、前作で数人いたゲスト陣は今回はバイオリン一名のみとなっている。サックスやトランペットがいなくなり、前作ラストのQuitsで見られたような異色の曲がなくなっている。前作での多彩ともまとまりがないともいえる音楽性の幅を、ぐっと絞って完成度を上げる方針なのだろう。
その方針はかなり成功しており、全体を覆う空気感が統一感のあるものになっていて、曲の完成度もより高くなっていると思う。さらに歌ものとして聴かせるものが多くなっていて、特に「Won't Be Coming Back」は白眉。「Happiness」もかなり良い。
なお、このアルバムはポーキュパイン・ツリーのスティーヴン・ウィルソンがミックスを担当している。浮遊感の漂う音像は確かにポキュパとも通ずるものがあり、意外だが納得の仕事だ。
1曲目は、冒頭からヒステリックな狂的な音色のバイオリンから始まり、静から動へとダイナミックにテンションが上下する。歌の神経に来るような張りつめた感じがすさまじい。抜群のインパクトだ。
アルバムはこの手のかなりハードなロックよりの楽曲と、より雰囲気を重視した淡々とした曲とが交互に来る感じになっている。「Reality」など、暗い中にも穏やかな安堵が感じられるような絶妙の曲調で良い。
メランコリックでもあるし、ハードでダークでもあり、また叙情的でもある。ロックとして聴くにはテンポやダイナミズムが足りないと言う人もいるかも知れないが、だらっと聴いていると曰くいいがたい落ち着いた気分になれる。
このアルバム、というか、スペシャルエディションに付属のDVDを見ていて思ったのだけれど、このバンド、リズム隊がキモだ。グリグリ動くベースとかなりの手数で叩きまくるドラムが、DVDのミックスでは強調されていて、リズム隊のテクニカルぶりが際立っている。それを聴いてアルバムを再度聴いてみるとやはり、随所でリズム隊がバンドサウンドの中心になっているのがわかってくる。特に、ドラムはスタジオ版でもハードなところで叩きまくっているのが気持ち良い。なお、下で紹介しているYoutubeでのライブ映像はこのスペシャルエディションのDVDからリッピングしたもの。
暗鬱なカタルシスをもたらす音楽性はより完成度を増し、歌ものとしての聴き所もふえ、プログレというジャンルにかかわりなく、薦められるアルバムになっている。ビョークに似ているとよく言われるので、そっちのファンの人は試聴してみると良いと思う。
あと、このアルバムはアートワークが凝っていて、まずジャケが雪のつもった空き地と廃墟を写したモノクロームの写真でこれがまず雰囲気抜群なのだけれど、ブックレットもまた白黒のモノトーンのうえ、紙が半透明のざらざらの材質でできていて、全体として一貫したデザインになっている。ブックレットがこうなってるのはスペシャルエディションだけなのかもしれない。
バンドは現在サードアルバムまでを出しているが、私はまだサードは未聴。そのうち入手する。公式ページによると、ライブアルバムを準備しているらしい。
Paatos - Won't Be Coming Back
http://www.paatos.com/
余談だが、個人的には、このバンドを聴いていると、フリー、バッドカンパニーのヴォーカル、ポール・ロジャースの子供である、スティーヴ、ジャスミンのいるイギリスのロックバンド、boaの「Duvet」を思い出す。
BoA - Duvet