自分は金をありがたがらないよと繰り返し主張する人

もうさ、結構前に「まともに読んで」しまったせいで、粘着的な批判をやったんで、もう二度と読むことはないだろうと思ってたんだけど、ふと読んでみると、さらに劣化してるんでびっくりだよ。

格差社会って何だろう - 内田樹の研究室

端的に「ゴミ」。なんだこれ。格差社会についてこの人はずいぶん前から発言してる様子だったし、ニートがどうとか本も出してたはずなのに、なんにも知らないんだな。少しもものを調べた様子がない。これはすごいことだ。仮にも学者が、何の現実的根拠も持たずにここまで適当なことを喋り散らすことができる。

社会問題に対する極端なまでの不勉強と、学問的与太を援用した小賢しい現代批判。その全てがすばらしいまでに的外れ。

「格差」とは何のことなのか?
メディアの論を徴する限りでは、これは「金」のことである。
平たく言えば年収のことである。

違うだろ。金そのものが問題なんじゃない。問題は、労働―生活を維持するに足る金を得る手段―だろうが。ワーキングプアなりフリーターなりそうした非正規雇用が問題になっているのは、それらの労働に対する賃金に格差が生じ、貧困を生み出しているからだろ。「メディアの論を徴」したって、中吊り広告くらいしか見てねえんじゃねえのか?

格差社会」論とは、大意「金のことをつねに最優先で配慮する」振る舞いだと言っているが、ここにもトリックがある。貧困層が生活を維持するために汲々と金に配慮するのは当然だが、生きていくのに困らない程度に稼ぐ人には別にそこまでして金に配慮する必要がない、というごく日常的な常識を無視しているからだ。

格差はそのものは悪いとは一概には言えないが、格差社会が貧困を固定化してしまうという非常にシリアスな問題がそこにはある。生活保護などの保障というのはそうした貧困をしのぐためにも必要な金銭的援助だ。

拝金主義イデオロギーによってこの社会が住みにくくなったと主張するこいつは、つまり、低収入の貧困層からの保障要求を拝金主義だと見なしている。生活を維持するために金をなんとか得ようとするのが拝金主義だと?

ほんとにクズなんだな。

そもそも、おれは格差社会の解決のために金をやればいいというような議論を目にしたことがないんだが。金銭的援助で生活保障をし、職業訓練をして正規雇用への道を開くという方法を論じているものは知っているが。


後半はほとんど自分がいかに拝金主義的現実を離れた知的で人間の価値を分かった人物かを自慢するだけになっていく。年収、資産で他人を判断したことは一度もない、とか言ってるけど、俺の場合はそもそも仕事が違う他の人の年収なんて知らないし、聞かないから判断材料にそもそもならないんだよ。判断材料にはしないけど、相手の年収を知ってるよ、っていうこの文章ってすごい気味悪いんだけど。年収の話してんじゃんよ。

で、自分が貧乏の時は、

たいていそのうち誰かが心配して、私のために手近なバイトを探して来てくれたので、間一髪のところを何度もしのぐことができたのである。

だって。良いご身分だなホント。

どなたも「格差がある」ということについてはご異論がないようである。
だが、私はこういう全員が当然のような顔をして採用している前提については一度疑ってみることを思考上の習慣にしている。

おれは、あんたに、自分にあるイシューについて何らかの判断を言明するにたる情報と知性があるかどうかを一度疑ってみることを思考上の習慣にすることをお勧めする。


格差と貧困については以下の記事で紹介した本が非常に参考になるので、是非お勧め。某人が格差という言葉でごまかした貧困についてきちんと論じられている。

岩田正美「現代の貧困」ちくま新書 - Close to the Wall