Kaipa - Angling Feelings

Angling Feelings

Angling Feelings

カイパは元々は70年代のスウェーデンで活躍していた古参のプログレバンドで、現在フラワーキングスを中心に活動しているロイネ・ストルトが在籍していたことでも知られていた。80年代に活動を停止してしまうが、キーボーディストのハンス・ルンディンのソロプロジェクトにロイネ・ストルトを呼んでみたところ、これはカイパだ、ということになって、2000年代に突如再結成して活動を再開した。

今年出た今作は再結成から数えて四作目で、前作でロイネ・ストルトが脱退してしまい、ギタリストを替えての新編成第一作となる。キーボードに前述のHans Lundin、新ギタリストはスウェーデンのメタルバンド「Scar Symmetry」のリードギタリストPer Nilsson、ベースにThe Flower Kings、Midnight Sun、The TangentのJonas Reingold、ドラムにフランク・ザッパ門下生(?)で超絶テクニカルバンド Mats & MorganのMorgan Agren、そして男声ヴォーカルがこのブログでも何度か書いた、RitualのPatrik Lundstromと、女声ヴォーカルAleena Gibson

どの人も自分のバンドを持っていたりする実力者にしてテクニシャン揃いで、知名度的にはそりゃあトランスアトランティックにはかなわないが、北欧プログレ系で考えればかなりのスーパープロジェクトだろう。アレーナ(アリーナ?)だけは過去の仕事がよくわからないが、幼い感じから艶のあるアダルトな雰囲気まで幅広いスタイルを持っている実力派で、リチュアルのパトリックとのツインヴォーカルがこのバンドの大きな魅力となっているのは間違いない。

音楽性はフラワーキングスと比較されることが多いが、ロイネ・ストルトが抜けた分あちらに比べるとテクニカルなメリハリの効いたアンサンブルになっている。一曲目のタイトル曲冒頭などに顕著な、人を食ったようなひねりのあるフレーズを反復する手法が目立つ。そこでメタル畑のギターがなかなか小気味よいプレイを披露していて、音数多めのスピーディな感覚が曲全体の雰囲気を爽快感のあるものにしているように思う。

もちろん、kaipaらしさとして良く語られる牧歌的な雰囲気も同居していて、土着的なものを感じさせるフレーズ作りはハンス・ルンディンのセンスによるものだろう。さらに、トラッドっぽさを感じさせる要素として、リチュアルでベースのみならず民族楽器などをも演奏するマルチプレイヤーFredrik Lindqvistをゲストに迎え、リコーダーやホイッスル等がフィーチャーされている。彼の笛群は全体の半数の曲で採用され、それが非常に効果的に組み込まれていて、牧歌的な雰囲気を強く打ち出すことに成功している。民族音楽の音色が好きな私にはこのゲスト参加はかなり奏功しているものに思える。

何となく曲ごとの印象に差がなく、どれがどの曲が区別しづらいというきらいはあるものの、実力者ぞろいの充実の演奏、爽快さのあるギターの活躍によるメリハリの効いたアンサンブル、トラッドな雰囲気のリコーダーやホイッスルの導入、ツインヴォーカルによる歌ものとしての秀逸さ、などなどかなりの高水準プログレとしてまとまっていると思う。

私は再結成kaipaは第二作「Keyholder」しか聴いておらず、そのアルバムでは「A Complex Work Of Art」が名曲だなと思った以上には平坦な印象しかなかった(まあ、単に聴いた時の気分の問題もあるだろうが)。今作でもやはり曲ごとの平坦さは感じたものの、最初から最後まで聴いていて楽しい、という感覚が持続する、結構な好盤になった。歌も演奏も実力者なので、どこを聴いても面白い。これは、という突出した点はないが、高品質、高水準ではあると思うので、興味のある向きは聴いてみても損ではないとは思う。

フラキン的な陽性の明るさがあるし、そこにトラッドな味付けがあったりして、なかなか私のツボをついてくれる。ギターが替わったのはフラキンと差別化する意味でも、アンサンブルやユニゾンのメリハリという意味でも良い結果をもたらしたんじゃないかなと思う。古参のファン的には微妙かも知れないが、私にはポジティブな変化をしたと思う。

公式サイト
KAIPA