Chris Squire - Fish Out Of Water

Fish Out of Water (W/Dvd)

Fish Out of Water (W/Dvd)

リードベースといえばもちろんプログレ界のリードベースクリス・スクワイアを忘れてはならない。イエスのメンバーはリレイヤー発表後にそれぞれソロアルバムを出しているのだけれど、そのなかでもっとも評価が高いのが、このクリスの1stソロだ。1975リリース。

このアルバム、かなりの名盤で、イエスのメンバーのソロの範疇でだけではなく、イエスの正規アルバムと並べても遜色ないほどのできばえ。叙情的なプログレが好きなリスナーは必聴だ。

さて、このアルバムは参加メンバーも面白い。ベースやギターも演奏するクリス・スクワイア他、ドラムにイエス全盛期を支えたビル・ブラフォード、キーボードはレフュジーやイエスの「リレイヤー」に参加したパトリック・モラーツ、サックスにキャメルやキング・クリムゾンその他様々なバンドに参加した名プレイヤーメル・コリンズ、フルートにキャラバンのジミー・ヘイスティング、パイプ・オルガンにBarry Rose(詳細不明。コーラス指揮もやる人らしいが)、そしてオーケストラを従えての非常に豪華な編成。ブラフォード、モラーツ、コリンズという顔合わせはかなり凄い。

Amazonリンクは今年リイシューされたもの。デジパック仕様で、リマスターおよび「Lucky Seven」のUSでのシングルverがボーナストラックに付いているCDと、1と2のメドレーまるごとのプロモビデオ、スクワイアへのインタビューが数十分と、アルバムまるごとを流してそれにスクワイアがコメントをしていくオーディオコメンタリーが40分収録されている計100分近い収録時間のDVDがセットになったデラックスエディション。輸入盤なのでもちろん音声は英語で、私にはよく分からないが、英語がリスニングできる人には非常に興味深いのではないか。これで1500円程度というのは凄い。ただ、安いのはUS盤で同内容のUK盤は値段が倍近いので注意。

各曲。

1.Hold Out Your Hand (4:13)
モラーツのフワフワしたキーボードリフから、スクワイアのベースがゴリゴリとした音色でメロディアスに切り込む印象的な導入部。完全にリードベース状態で楽曲の一番目立つメロディを奔放に弾きまくる。スクワイアのヴォーカルはコーラスとしては良いが、メインを張るにはちょっと物足りないところはある。しかしなかなかメロディアスな歌だ。ベースソロとキーボードソロが聴き物。ラスト、オーケストラが盛り上がるとそのままなだれ込むようにメドレーで次曲へ。

2.You By My Side (5:00)
前曲からシームレスにピアノ主体に落ち着いた雰囲気のミドルテンポのバラードへ。インスト部ではフルートが穏やかなメロディを奏でる。

3.Silently Falling (11:27)
フルートの叙情的なイントロが前曲の続きのように思わせる。10分を超える大作で、プログレ度の高いドラマチックな一曲。穏やかなイントロからベースが切り込むハードなパートが始まる。曲調も幾分スピーディに加速し、スリリングさを増していく。中間部ではモラーツが延々ハイテンションなソロを披露していて凄いうえ、バックでのスクワイアのベースもうなりを挙げて弾きまくっていて物凄い。ソロ終了後、冒頭の歌が戻ってきて、その後、ピアノのしめやかなフレーズとともに始まる哀しげな歌が良い。A面はほとんど続き物の感じ。

4.Lucky Seven (6:54)
サックスが入るこれもミドルテンポの歌もの。アメリカでシングルカットされたらしく、短縮バージョンがボーナストラックになっている。ベースがグリグリ動くのが聴ける。中間部は長いベースソロと、サックスのソロ。オーケストラも案外絡んでくる。

5.Safe (15:13)
前曲のサックスソロから流れるようにこの曲に。これまでよりも牧歌的なバッキングになっていて、穏やかな印象が強い。それでも長いベースソロなどが当然あるのだけれど。全体にこのアルバムは抱擁感と優しい雰囲気が満ちていて、あまりロックな攻撃的な感触はない。テクニカルな複雑な構成というわけではなく、淡々と少しずつ盛り上げていく緩やかなドラマ性がイエスとはまた違ったプログレらしさを見せている。曲の後半部はほとんどインストで、起伏のある展開を繰り返して静かに終わっていく。

6.Lucky Seven (US Single Edit) (3:27)
インストパートを削ったシングルバージョン。


とにかくベースの目立ち方は半端ではなく、ベースのメロディアスなプレイを主軸に据えた楽曲は穏やかな叙情性を持っていて、わりとリラックスして聴けるプログレ作品となっている。やはりイエスに比べるとヴォーカルが弱いが、充分素晴らしい作品だ。