- アーティスト: Ritual
- 出版社/メーカー: Tempus Fugit
- 発売日: 2007/09/25
- メディア: CD
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ライブアルバムの次は音楽性が変わる、という話を聞くが、このアルバムも以前とは音楽性をけっこう変えてきた。前作まではトラッド要素を交えて、エキセントリックではあるもののハードロックのスタイルではあったのだけれど、今作でははっきりとプログレ寄りに傾いている。オープニング曲なんて、Kaipaの曲かと思うようなトリッキーなリフ作りで意表をつかれる。また、ラストには20分を越える大曲が据えられ、さらにアルバム全体がムーミンコンセプトで貫かれていて、プログレやります、という意気込みを感じるアルバムだ。
プログレ化、ということで以前の音楽性との違いが気になるところだけれど、メロディセンスとヴォーカルはやはり秀逸で、その点では非常に充実していると思う。ハードめな曲の勢いやアコギやリコーダー、ニッケルハルパ等での奇妙な編成でのアコースティック曲の叙情性もある。ただ、やはりハードロック的な勢いは薄れているので、プログレもいけるという人以外にはどう聞こえるのかはわからない。
私個人としてはかなり良い、と思う。エキセントリックでトリッキー、メロディは印象的だし、アコースティック曲での奇妙な編成は興味深く、どの曲もそれぞれ個性的でアルバムとしての流れも良好だ。Ritualで一番好きかも知れない。うーん、面白い。
プログレ好きでリチュアルをこれから聴いてみようという人にはこれを勧める。ハードロック好きなら3rd、よりトラッドなものを聴いてみたいなら1st、という感じか。
1.The Hemulic Voluntary Band
前にも書いたけれど、アルバムタイトルでもあるこの曲名は、ムーミンのヘムル有志楽団、のことらしい。私はムーミンが全然分からないので何とも言えないのだが。曲は、冒頭からKaipa的なトリッキーなリフが展開して、非常に面白い。キーボードがまた妙な音を出している。サビのメロディが耳に残る。
2.In The Wild
ハードなアンサンブルに加わったピアノが良い味を出している。そしてちょっと暗めのヴォーカル。しめやかな雰囲気のピアノソロからヘヴィなベースリフの上をノイジーなギターソロが走る、という展開はこれまであんまりなかった感じかな。
3.Late In November (Snufkin's Perspective)
ニッケルハルパ、アコースティックギター、リコーダーというトラッドな雰囲気のバッキングが面白い。そして哀しげな歌が良い。良い曲。
4.The Groke
ヘヴィなサウンドだがこれも哀しげな雰囲気を持っている。メインのフレーズを演奏している楽器は、これはキーボードだろうか。寂しい音色が印象的だ。
5.Waiting By The Bridge (Moomintroll's Perspective)
一転して明るめでポップな印象がある曲。楽しくにぎやかな感じ。中間部ではいかにもプログレ、といった感じのトリッキーなインスト。
ここまでが「Chapter1」となっていて、次曲が「Chapter2」だ。時間的にちょうど折り返し点で、レコードのA面B面みたいな構成になっている。
6.A Dangerous Journey
節タイトルが振ってあるのを数えると9パートにもなる26分を越える大曲。スザンナがどうしたとか、ヘムルがなんだとか、スナフキンがとか、物語性のある詞のようだけれど、よくわからないのでそこら辺はパス。
序盤はニッケルハルパの音色が印象的なアコースティックパートでなかなか良い感じだ。その後ダークでミステリアスな雰囲気のパートになり、続くVolcanoのパートがとても素晴らしい。歌メロが最高だ。このパートだけで曲を作ってくれと思うくらい良い。このアルバムのハイライトだな。ベースの唸り具合も良いな。その後、またやや穏やかなサウンドに変わり、曲が進行していくと、Monsterというパートに入り、プログレメタルのごとき騒々しいハードなアンサンブルが炸裂する。そこからヴァイオリンのようなニッケルハルパの音がリードしていく部分はかなり格好いい。そしてまたミドルテンポのパートに移行し、ゆっくりとエンディングへ。