Genesis - Calling All Stations

コーリング・オール・ステーションズ

コーリング・オール・ステーションズ

さて、これはジェネシスの97年リリースのラストアルバム。このブログでプログレ五大バンドのアルバムを取り上げるのは初めてなのだけれども、それがよりにもよってこれというのが妙な成り行きだ。

いまさらながら一応おさらいすると、ジェネシスは元々ピーター・ガブリエルをヴォーカルとしてデビューしたバンドで、英国の怪奇な雰囲気を色濃く湛えたサウンド、それとガブリエルの個性的なライブパフォーマンスや歌唱が魅力で、また、トニー・バンクスのキーボードワークはいわゆる「シンフォニック・ロック」のひとつのモデルとなって、多くのフォロワーを生んだし、スティーヴ・ハケットのギターサウンドもまた然り。日本ではプログレ四天王、と言った場合に外されてしまうこともあるのだけれど、ヨーロッパではトップクラスの人気をもったバンドだ。

そんな全盛期のジェネシスのカリスマ的なフロントマンとして活躍したピーター・ガブリエルは、二枚組大作「幻惑のブロードウェイ」を最後に脱退。そこで代わりにヴォーカルに立ったのがドラマーだったフィル・コリンズだ。彼のドラムはプログレ界随一と言われるほど評価の高いものなのだけれど、同時にフロントマンとしてヴォーカルを担当し、ライブではサポートドラマーを用い、インストパートなどではツインドラムを披露するなどして、この時期のサウンドは、ガブリエル時代よりも演奏の技術に関してはより高い評価を得ている。

その後、スティーヴ・ハケットが脱退し、ついに三人になってしまったジェネシスだけれど、ポップな要素を導入していくことで、むしろ商業的にはもっとも成功することになる。特に80年代には「Invisible Touch」などから多数のシングルヒットを出すばかりか、フィル・コリンズのソロ、マイク・ラザフォードのバンド、ピーター・ガブリエルのソロなどがそれぞれ同時期にヒットしたりして、トップチャートをジェネシスファミリーが多数を占めるという事態にもなったという。

そんなポップ時代の全盛期はフィル・コリンズの脱退によって終わりを迎える。しかし、残ったトニー・バンクスマイク・ラザフォードはバンド存続を決め、ヴォーカルをオーディションで選定する。そこで選ばれたのがレイ・ウィルソンだ。

前回のRPWLのアルバムでゲストヴォーカルを務めたのも同じくレイ・ウィルソン。RPWLを聴いて、レイのヴォーカルをとても気に入ったので、そういえば、と中古でおやすくなっていたこのジェネシスのアルバムを聴いてみたのだった。まあ、普通はレイ・ウィルソンといえば、ジェネシスでヴォーカルやった無名の新人、位の扱いなんだろう。しかし、実はレイ・ウィルソンは無名だったわけではなく、むしろ一発屋として知られていたらしい。元々ヴォーカルをやっていたStiltskinというバンドの「Inside」という曲が、Levi'sのCMソングに採用され、UKチャートで一位を獲得したことがあるらしい。
Stiltskin-Inside (Original video)

で、そのCM。
"Creek" Levi's 501 commercial - "Inside" by Stiltskin

このCMを見てびっくりしたのは、採用されてるのはイントロパートだけで歌が始まるまえに終わってること。ちょっと笑った。

で、実は私はジェネシスがよくわからないんですね。ながながとバイオを書いておいていうのもナンだけど。五大バンドではフロイドとジェネシスはいまいち、好きになれない。個別に好きな曲はあったりするんだけれど、どうも嵌り込むような面白さが感じられない。何枚も聴いたりしてるんだけれど、どうにもよくわからないという感じ。ちなみに、スティーブ・ハケットのソロ作は大半聴いているくらい好きだ。

特にジェネシスは、ピーター・ガブリエルフィル・コリンズもともにヴォーカルが好きではない。ジェネシスの楽曲をジョン・ウェットンが歌ったものとか、スティーブ・ハケット・バンドのメンバーが歌ったものとかはかなり好きだったりするんだけれど、ジェネシス本家のが楽しくない。ガブリエルの声はあまり好きではないし、フィル・コリンズの声もまったく感情を動かされないうえ、フィル時代のヒット曲はなんか浮かれすぎていて趣味ではない。

そういう私にしてみると、このレイ・ウィルソンがヴォーカルとなったラストアルバムは、案外聴ける良作だった。当時のUKロックにプログレ風味をまぶしたような作風で、ピーター時代のファンにも、フィル時代のファンにも拒絶されそうだが、これはこれでなかなかいい作品だと思う。むしろプログレリスナーではない人向けな感じだ。

ヘヴィな産業ロック風で、静かに盛り上がっていくヴォーカルが魅力のタイトル曲や、ワールドミュージック的要素も少し取り入れた「Congo」、中盤のバラード作品もなかなか良いし、後半にはキーボードが活躍するプログレ的な「The Dividing Line」が良いアクセントになっている。そして最後の「One Man's Fool」は後半でほとんど別の曲に変わるプログレ展開が秀逸だ。

ジェネシスのアルバムのなかでは、決して凄いとかいう作品ではないが、私個人はもっとも好きなアルバムではある。いまのところ。ただ、是非とも人に勧められる作品か、というとまた困るところがあるのも確か。個人的に私がレイ・ウィルソンのヴォーカルを気に入ってるだけとも言える。


このアルバムでは、90年代プログレの有名どころバンドである、Spock's Beardのドラマー、ニック・ディヴァージリオがいくつかの曲で参加している。ニックはかなりのジェネシスファンだそうだ。余談だけれど、この後、スポビはメインヴォーカルですべての作詞作曲をやっていた中心人物、ニール・モーズが宗教的理由で脱退してしまい、その抜けた穴を埋めるために、ドラマーのニックがメインヴォーカルに転身、ライブではサポートドラマーを用いる、というジェネシスそっくりの再出発をするという驚くべき偶然に見舞われている。

Youtubeには、このアルバムツアーからの映像がアップされていた。もちろんすべてのヴォーカルがレイ・ウィルソンなので、なかなか新鮮に聴ける。テレビ放映された分がすべてアップされているみたいだ。

しかし、ブロードウェイは名曲だな。
Genesis - The Lamb Lies Down on Broadway (Live)

Genesis - Calling All Stations (Live)

Genesis - Congo (Live)