Asturias - Circle in the Forest

Circle in the Forest

Circle in the Forest

マルチプレイヤー大山曜を中心とするプロジェクト、アストゥーリアスの1stアルバム。1988年リリース。

新月津田治彦(G)、花本彰(Key)、Zabadak上野洋子などが参加している。

このブログで最初に取り上げたのがアコースティック・アストゥーリアスということで、やっとこさエレアス時代の1stを聴けた訳だけれど、これはかなりの傑作。ニューエイジ的な音作りが私には今ひとつ面白くない部分もあるけれど、和製プログレ屈指の名盤なのではないかと思う。

特に、Mike Oldfieldへのオマージュとして作られた20分超のタイトル曲は大作主義時代のマイクの作風を取り入れた楽曲としてはかなりの水準で、私が知るなかでは、マイクの初期四部作が持つドラマ性を唯一再現することに成功した曲だ。

また、大山曜はこの時期ゲームミュージックも手がけていて、このアルバムにはゲームで使用した楽曲が結構取り入れられている。詳細は以下で。


1.Ryu-Hyo
アコアスの復活作でリメイクされたバージョンが個人的には超名曲なのだけれど、このエレクトリックバージョンもやはり名曲。エレアスverでは後半部分がずっとエレクトリックギターのメロディアスなソロになっている。構成としてはアコアスverが決まっていると思うけれど、このギターのメロディも素晴らしい。
アストゥーリアス - Ryu-Hyo
レア映像。

2.Clairvoyance
打ち込みサウンドが目立つデジタルな質感。リズムを強調したパートのアンサンブルからギターソロへ展開していく部分が爽快。

3.Angle Tree
シンセのバッキングのなかを、アコギがシンプルかつ美しいメロディを丹念に奏でていく非常に印象的な曲。元々は「ディガンの魔石」の「Abilia Hair」という曲。
「ディガンの魔石」全曲集4:15秒から元曲が聴ける。

4.Tightrope
2曲目と似たスタイルか。こちらではキーボードリードになっている。中間部での笛のような音色が聴けたかと思うと、ギターが鋭く切り込んでくる展開はなかなか良い。

5.Circle In The Forest
で、タイトル曲。20分超を一気に聴かせるドラマティックな名曲。1のRyu-Hyoと並んでアストゥーリアス屈指の名曲だと思う。

詳細な曲構成は以下の記事で解説されているので、乞参照。
ぬんぬっき Asturias 『Circle in the Forest』 / Progressive Rock
なお、導入部ではミネルバトンサーガのタイトル画面での曲が再利用されている。

上ではファミコン音源だけれど、アストゥーリアスverではもっときちんとした音源で鳴っているので、ゲームのファンの人は聴いてみる価値はあると思う。

序盤の爽やかなピアノフレーズからよりミステリアスな雰囲気を帯びていき、五分あたりからのエレクトリックギターとアコギが盛り上がる展開が良い。ギターの多重録音とドラムのパーカッシブな演奏が秀逸。そしてアコギのスピーディなカッティング。上野洋子の声が響く。

8分あたりからは躍動感のあるメロディが印象的なポップな感じのパートに。盛り上がってきたところでトラッド調なアコギが切り込むところが良い。12分過ぎから一気に雰囲気が変わってしめやかなピアノの演奏。

このメロディがとても印象的で秀逸。ここのメロディは「ディガンの魔石」の「Euress」。基本メロディも良いし、バックで鳴っているメロディのもの悲しさも素晴らしい。

このパートが終わると左右から交互にフレーズが飛び出してきて、16分あたりからアフリカンパーカッションが入ってくると、いよいよ盛り上がり最高潮。ここは「ディガンの魔石」の「Cordarn」が再利用されている。シンセがメロディを反復し、パーカッションがドカドカと盛り上がり、上野洋子の多重録音コーラスが神秘的に響き渡り、エレクトリックギターが縦横に弾きまくる! ここら辺のエキサイティングぶりはMike本家に及ばんとするものがあると思う。

いや、むしろ初期四部作のMike Oldfieldが好きな人は、80年代以降の諸作を追うよりもこれを聞くべきだと思う。それくらい名曲。

ただ、シンセや打ち込み色が強く、ギターの音色と合わせて古さやチープさが無視できないと思う。生音志向が強いとちょっと厳しい部分はあるだろう。そこは注意。

こんなに素晴らしいアルバムなのだけれど、作者的には若気の至りや稚拙な点が目について、再発などにはあまり積極的でない様子。じっさい2004年の再発ではこれだけオミットされているし、大山曜氏自身、音楽的にもっとも優れているのは3rdだと認識している様子。しかし、メロディの瑞々しさや、ドラマ性のある展開などの面では後のものにはない魅力がある。誰が、というか本人がなんと言おうと名盤です。

今現在大山曜氏はMike Oldfield的な一人多重録音の大作スタイルを今一度トライしているらしく(新作のコンセプト : Asturias)、ブログでいろんな使用楽器が紹介されている。いやが応にも期待が高まる。

このアルバムは国内盤が品切れだけれど、今は輸入盤が入手可能になっている。「Brilliant Streams」ともども、是非聞いてもらいたい作品だ。3rdはいま入手不可だと思われる。

【ディガンの魔石 全曲集[+α]】

13:22 Euress
18:31 Cordarn
28分過ぎから、このアルバムの抜粋が聴ける。というか、この動画からこのアルバム買った奴が何人かいるぞ。

大山曜による曲解説
Asturias公式ブログ
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http://d.hatena.ne.jp/camelletgo/20070115/p2