美狂乱 - Parallax

PARALLAX

PARALLAX

和製プログレその三。これは日本のプログレバンドのセカンド、1983年リリース。日本のキング・クリムゾンと呼ばれるこのバンドはギタリスト須磨邦雄を中心として結成され、須磨のロバート・フリップの影響を如実に受けたギタープレイが特徴的で、音的にもヴァイオリンを用いたり、中期クリムゾンの影響は色濃い。

とはいうけれど、聴いた感じは例えばAnekdotenなどに比べてあんまりクリムゾンフォロワーという感じはせず、ギター、メロトロン、ヴァイオリンと、似たパーツを使いながらも組み立て方、フィーリングの違いが組上がりに多大な違いを出しているという感じがする。中期クリムゾンの特徴って、ジョン・ウェットンのある種ブルージーな叙情性にある気がするので、雰囲気として似通ってる感じはしない。でもやっぱりギターは似てるな。

正式メンバー須磨邦雄(G、vo)、白鳥正英(b)、長沢正昭(Dr)以外に、ゲストとしてヴァイオリンの中西俊博、チェロの溝口肇、トランペットの岡野等、そしてキーボードとしてジェラルドの永川敏郎が参加している。

このアルバムは全三曲のザ・プログレ仕様の構成。

1.サイレント・ランニング
軽妙でフックのあるギターリフがリードする曲で、キング・クリムゾンを期待するとかなり意外だ。すごく普通に良い感じのロックをやっている感じがある。中盤でのヴァイオリンソロなど、やはりデヴィッド・クロスとはまったく違った質感。
2.予言
爽やかな感じすらあるオープニングから、どんどんと荘厳さと不気味な感じが増していって、中盤ではまさに不気味な変則コーラスが炸裂する。そこからのギターソロがかなり聴かせる。
3.組曲「乱」
冒頭不安感いや増すオープニングから、ベースランニングにギターが多重録音で迫ってくるところの何とも言えない不気味さ。何というか、この種の独自な空気感の演出手法が、キング・クリムゾンとの最大の違いだと思う。中盤からはメロトロンが鳴るなかをギターがずっと俺のターンとばかりに弾きまくる。終盤突如として切り替わり、メロトロンの穏やかな演奏。


で、このバンドはいまも活動中で、近年特にアニメ関係での活動が活発だ。「魁!!クロマティ高校」のアニメで劇伴を担当し、一部ファンからはそのサントラが美狂乱史上の最高傑作ではないかなどと言われるほど本気のサウンドを展開しているようだ。

魁!!クロマティ高校 オリジナルサウンドトラック

魁!!クロマティ高校 オリジナルサウンドトラック

http://d.hatena.ne.jp/camelletgo/20061111/p2
私はまだちゃんと聴いてないが、アニメは見ていたので、BGMの異様さはかなり印象に残っている。というか、サントラに即興演奏とか入れて良いのか。サントラに名を借りたオリジナルアルバムな感あり。

面白いのはここからで、その美狂乱クロ高サントラにはアニメクロ高の監督である桜井弘明がベーシストとして正式参加しており、wikipediaによると第七期としてカウントされているらしい。桜井弘明が洋楽ロックマニアなのは有名で、「デ・ジ・キャラットにょ」での一話を費やしたビートルズの「マジカルミステリーツアー」パロディやクロ高のDVDジャケットなどから明らかだけれど、まさかプログレバンドに正式参加するほど演奏できるとは知らなかった。
魁!!クロマティ高校(1) [DVD]
Queen 2
そして今現在、美狂乱こと須磨邦雄エヴァンゲリオンのスピンアウト企画、「ぷちえう゛ぁ」の音楽を担当している。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/02/01/puchieva/index.html
ぷちえう゛ぁ」は2ラインで制作していて、片方の監督が美狂乱メンバー桜井弘明によるもの。ネットで無料放送されているので是非見てもらいたい。
http://www.b-ch.com/contents/feat_petiteva/index.html
第一回と二回は違ったけれど、今現在配信されている「学校に行く」「誰だ?」「友情」の三つは桜井弘明監督によるもので、音楽はもちろん美狂乱須磨邦雄

アニメがシュールなら音楽も奇抜で、凄まじいアヴァンギャルド感。これはひどい。音の方はセカンドとは結構違って、ヴァイオリンを前面に押し出している。ギターがそこまで出張っていないのが意外。「誰だ?」の話ではバンドサウンドでない室内楽っぽい音になっていてこれまた意外。ちなみにこのヴァイオリンは須磨邦雄の息子須磨和声。アニメ監督、息子(過去作では息子の知り合いが参加していた)というワンダーなメンバー構成。

しかし、このバンド、クロ高のサントラと初期二作以外が軒並み入手困難。とりあえず聴けるのだけは聴いてみよう。