- アーティスト: VARIOUS ARTISTS
- 出版社/メーカー: ディスクユニオン(原盤英VOICEPRINT/OPEN SKY)
- 発売日: 2008/01/25
- メディア: CD
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前作はメジャーなミュージシャンも結構居て、その人脈の意外さが新鮮だったけれど、今作ではかなり初見の名前が多く、その意味ではやや地味な作品となっている。けれども、未発表曲が30曲中25曲を占める力のいれっぷりは凄くて、アコースティック主体のトラッドコンピレーションとしての充実度は決して前作に劣るものではない。個人的にはフランクの参加がなかったのは残念だけれど。
今回の参加ミュージシャンでは、Ionaメンバー以外では前作に続き、モイア・ブレナン、メイ・マッケンナ。そしてブリティッシュトラッドプログレバンドとして最近人気のMostly Autumnと、なんと日本のKensoが曲を提供している。それ以外は知らない名前ばかり。意外なところではニック・ベッグスも使っているチャップマン・スティックの開発者、エメット・チャップマンその人が参加している。
未発表曲がほとんどを占めるこのアルバムは二年あまりをかけて制作されたらしい。そんなことをしているからIonaの新作が出ないんだ、と怒りたいところだけれど、この作品の出来にはそんな不満を吹き飛ばしてしまうものがある。
本作は日本盤を買えたので、以下の楽曲解説はライナーを参考にした。各ミュージシャンを細々調べるのは大変だったので助かる。
トラックリスト、*は未発表曲。以下から転載。
http://www.drshosting.co.uk/iona/rowstore.htm
CD1
1.Moya Brennan - Eirigh Suas a Stoirin*
2.Dave Beegle - Big Fish Rumba
3.IONA - Journey into the Morn (new version) *
4.Donockley/Bainbridge - A Stor Mo Chroi *
5.Martyn Joseph - Strange Kind of Friend *
6.Soulful Terrain - Lost for You *
7.Kenso - A Winter in Hokkaido
8.Joanne Hogg - I Ask No Dream *
9.Keith Baker - Asimolar Sunrise *
10.Bainbridge/Keaggy - Across the Sea *
11.Aradhna - Rahim Dhaga*
12.Eureka - Arabesque
13.Richard John Thompson - Excuses to Fall *
14.Debbie Bainbridge - In Your Arms *
15.Invisible Opera Company of Tibet - Dreaming *D2
IONA - Bird of Heaven (2007 remix) *
Nick Beggs - Do Wot you Want *
Chasing the Monsoon - Circles of Stone *
Troy Donockley - Hymn to the Sea *
Nick Fletcher - Silver Moon*
Rachel Taylor-Beales - Super Glue
Debbie Bainbridge - Sacred Space *
Most Autumn - Winter is King *
Fitzgerald/Bainbridge - O Euchari*
Mae McKenna/Bainbridge - A Prayer *
Deborah Martin - The Brilliance of Stars
Joanne Hogg - Almighty Father who Dost Give *
Cides/Chapman - Out of the Ether *
Theophonic Cloud - Luca *
Fletcher/Bainbridge - Red Sun*
1.クラナドのヴォーカルモイア・ブレナン、これはクラナドの曲を自身のソロで再録した曲とのこと。アコースティックな演奏に穏やかな歌。
2.コロラドのプログレバンドのギタリストで、これはソロ作からの収録。フラメンコなアコギ演奏で、軽快かつ情感のあるインスト。これは良いです。
3.本作の目玉曲。四枚目のタイトル曲を、なんとフラキンのロイネ・ストルトをギターに迎え、コーラスにMostly Autumnの女性ヴォーカルを加え、独自の編成で再録したもの。元々は質素な曲だったのを、ドラマティックに展開するパートを加え、ロイネのギターソロを聴かせるプログレな曲に変貌している。正直、Ionaの曲にはどうしてもデイヴのギターが欲しくなるところだけれど、これはこれで良い。こう聞いてみると、ロイネのギターにはブルージーな要素が強いことが実感できる。デイヴはなんというか、自然の壮大さみたいなものを感じさせるのだけれど、ロイネは人間臭さがある、というか。
4.Ionaのフロント二人によるユニットによるインスト。リール風? この二人によるユニットはアルバムも出しているのでそちらもオススメ。トロイのヴォーカルが良いので。
5.20年以上のキャリアを持つというシンガーによるアコギ弾き語り曲。このアルバムのために提供された曲で、これは良い曲。
6.ノースカロライナのユニットらしい。これは彼らの書き下ろした曲を、キーボードがデイヴ、ヴァイオリンがフランク、あとチェロとパーカスの四人で演奏したもの。フランクのヴァイオリンが静かなメロディを奏でる落ち着いたインスト。
7.Ionaの来日公演に清水義央が飛び入りしたことで仲良くなったというKensoの「美深」のライブテイク。これのオリジナルは「Chilling Heat」らしいのだけれど、入手できなかったので、これはうれしい。ドラムが村石氏から小森氏に変わってのライブ。全体と比べてかなり毛色が異なる感じがあるが、アナログキーボードの暖かみのある音色はそれはそれでしっくりくるものがある。
8.ジョアンヌのソロアルバムの曲を、ラジオ放送用にスタジオ録音したもの。トロイのホイッスル、フランクのヴァイオリン、デイヴのキーボードがバックアップし、演奏も秀逸。
9.アメリカのハンマー・ダルシマー奏者の書き下ろし曲。打弦楽器でピアノの先祖といわれるダルシマーと、ピアノの多重録音もの。ちょっと変わった音色が面白い。軽快で楽しげなトラッド。
10.フィルはかなりのキャリアを持つギタリストで、デイヴのあこがれの人物らしい。そのデイヴのキーボードとギターのデュオ演奏。デイヴがフィッツジェラルドとやっていたような空間的(?)なインスト。
11.シンシナティで結成されたユニットらしいが、シタール以外にもインド系楽器が目白押しで、しかもサンスクリット語でのヴォーカルが凄まじくトラッド。インドのバンドではない。これはなかなか印象深い楽曲。
12.ドイツのバンドらしい。トラッド色を持ちつつもエレクトリックギターがフィーチャーされており、なかなか聴き応えがある。
13.フェアポートコンベンションのギターとは別人のシンガー。アコギ弾き語りの良曲。
14.デイヴの妻デビーのピアノインスト。要所でしっとりとしたピアノ曲を入れるのがこの人の役目。
15.ゴングの関連バンド、というか、デヴィッド・アレンの認定を受けたバンドのギタリストによるインスト。シンセの多重録音のなかを、たゆたうような幽玄なギターが奏でられる瞑想的なサウンド。
ディスク2
1.Ionaのセカンドからの大曲をリミックス。トロイのパイプ、フランクのヴァイオリンを加味してよりダイナミックになって再登場。イントロでのサックスがヴァイオリンに変わっているところと、全体にメリハリをつけたリミックスがされている印象。これは前作のBeijingリミックスと同じ傾向か。音がより厚くなっている。ベースがより前に出てきて、さらにいくつかパートが付け加えられている様子。しかし、やはりIonaナンバーの良さは格別だ。なんというか、厳粛な気分にさせられる。
2.元カジャ・グー・グー、ニック・ベッグスによるスティックインスト。都会的なインスト。前作では落ち着いた曲だったけれど、ここではスティックでのかなりの早弾きを披露するなど、よりテクニカルな楽曲になっている。
3.トラッド系プログレバンドとして前作にも曲を提供しているKarnataka解散後に作られたバンドからの楽曲。Karnatakaは活動再開しているようでここでの女性ヴォーカルは再結成Karnatakaにも参加している模様。ここではシンセ、アコギ中心なサウンドで歌メインの曲となっていて、聴きやすく、メロディアスなバラードとなっている。後半の歌の盛り上がりが聴きどころ。
4.トロイがBBCに提供した楽曲。シンセをバックにホイッスルがメロディを奏でる。
5.クラシックギター奏者の小曲。
6.新人女性シンガーによる曲。アコギやマリンバ等を生かした音で、静かなヴォーカル曲。
7.再度デビーによるインスト。ここではリコーダー、ピアノを演奏している。リコーダーのトラッドなメロディとピアノの叙情的な響きが絡む秀逸なインスト。これはよい。
8.Mostly Autumnのクリスマスepの楽曲をリミックス。ヴォーカル部分も良いが、トラッドプログレらしいフルートソロへの展開が面白い。
9.Iona創設メンバーの二人によるインスト。デイヴのシンセをバックに、サックスソロ。ドイツの古楽作曲家による曲らしい。
10.メイ・マッケンナとデイヴのデュオ。デイヴのいつものアトモスフェリックなキーボードに、スコティッシュ・ゲール語でのヴォーカル。
11.アメリカのマルチプレイヤーの、シンセによるアンビエントな曲。この曲が収録されたアルバムにはトニー・レヴィンも参加しているらしい。
12.ジョアンヌのBBC音源。ゼノサーガのKokoroっぽい曲調。ピアノとホイッスルのシンプルな伴奏。
13.チャップマンスティックの開発者とその弟子によるスティックデュオ。
14.デイヴの友人夫妻によるユニットで、タイトル通りこのアルバムのために作られた曲。シンプルな楽曲だけれど、聴かせるヴォーカルと、秀逸なメロディの落ち着いたバラード。良い曲。
15.5のクラシックギタリストとデイヴのデュオ。デイヴはキーボードで、ニックがエレクトリックギターを弾いている。ハケットのギターインストみたいな感じもするのはクラシックギター奏者としての素養の共通性か。