上海アリス幻樂団 - 東方風神録 〜 Mountain of Faith.

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東方その三。2007年発売の弾幕STGゲーム。サントラはないので、データから切り出したゲーム音源について。

さて、この作品個人的には東方Project作品の中で、もっとも楽曲の充実度が高い作品ではないかと思っている。ステージ曲でいえば、一面の道中がやや地味かな、という以外はすべて好きな曲だ。

作品が秋と山を舞台にして、さながら紅葉山登りツアーみたいなステージ構成になっているため、そこに掛かるBGMも笛などのトラッドに傾いた楽器が多用されていて、とても良い雰囲気になっている。さらに、楽曲のメロディも印象的なものが多く、明るくキャッチーな面が強調されている。地霊殿はかなり独特の作風だったけれど、今作はかなりポップだ。その意味では、音楽面について東方に興味のある人は、これから入ると良いかも知れない。

まずは一面ボステーマ。
稲田姫様に叱られるから(東方風神録)をケーナで吹いてみた。

ケーナ、といえばZabadakの名曲「かえりみち」*1でとても印象的メロディを奏でている南米の笛の一種で、ここでも非常に効果的に使われている。風神録には、この手の笛系の楽器がすばらしく似つかわしい。
ところで、この動画をアップしているベックマン氏は非常にクオリティの高いアレンジをいくつも作っているのだけれど、この動画以外の再生数が少なすぎる。アイリッシュアレンジのKou Ogata氏くらいには注目されて良いと思うのだけれど。

そして二面。道中曲「厄神様の通り道」は、メロディがとても良い。ステージともどもやや暗い曲調。ボステーマの「運命のダークサイド」はピアノの高速フレーズがものすごく記憶に残るものだから、Mad動画の格好の素材として多用されている。

まさかのインド風アレンジ。既存のMIDIデータの楽器部分を差し替えたものらしいのだけれど、すごく面白い。

で、三面道中曲「神々が恋した幻想郷」は、二面の暗い場面から、とつぜん開けた紅葉の広がる場所に出てくるのとともに、ピアノの明るく印象的なメロディが響いてきて、このステージと曲の構成に非常に感動する。
ピアノアレンジ

ケーナアレンジ

ケーナアレンジが1600という少なさなのは何かの冗談としか(今見たら1700台に。ちょっと増えてきたか)。ていうか、皆「ケーナ」が何か知らないんだろう。笛ということすら分からないという人が多いんではないか。

そして三面ボステーマ「芥川龍之介の河童」。三拍子ということでワルツというか、リズミカルながらも物哀しい雰囲気がある。後半でのハーモニーが特に印象的で道中曲ともども風神録の代表的な曲だろう。

叙情、哀しさを強調したケーナの人もいいが、ヴァイオリンの演奏も非常にマッチしていて良い。

そして四面で、道中曲「フォールオブフォール」はアップテンポな曲調に、すごく秀逸なメロディ。曲構成が元々歌だったものをカラオケにしたとしか思えないようなものになっている。道中曲では突出して好きな曲だ。ちょうど曲がサビにさしかかるあたりで、敵大量出現で処理落ちしつつ中ボス出現、という手に汗握るステージ構成がプレイヤーとしては思い出深い。なお、この曲の動画でサビに「の」の字弾幕が出るのは中ボスの攻撃が「の」の字だから。

ただ、この曲は自作アレンジがニコ動にはあまりない。
かなり再現度の高い耳コピもの。

あと、良い感じのアコースティックギターデュオ演奏。

五面道中曲「少女が見た日本の原風景」はドラマティックなサビのメロディが特に印象的で、タイトルと併せて喪失感漂う寂しさが感じられる。聞けば聞くほど沁みてくる曲だと思う。
そしてまさかのピアニカ、メロディオンこと鍵盤ハーモニカアレンジ。秀逸。

ピアノアレンジもいい。

そして六面は道中曲もいいけど、ラスボステーマ「神さびた古戦場」がすばらしい。威圧感と厳粛な雰囲気が出ていて、溜めからの盛り上がりが良い。これの一番好きなアレンジはクラシック系サークルTAMUSICのアレンジ。ヴァイオリンがやや線が細い気がするが、壮大かつ厳粛。以下のページでフルサイズのmp3がダウンロードできるのでお勧め。
♪TAMUSIC♪-CD / TAM3-0034 東方弦奏響1

そしてエクストラステージだけれど、ここの道中曲「明日ハレの日、ケの昨日」は風神録でもトップクラスに好きな曲で、歴代道中曲としても屈指の曲だと思うのだけれど、どうも人気があるとは言えない雰囲気。何故だ。
神社の縁日をイメージして作ったというとおり、楽しげでいてノスタルジックな響きがあり、もっとも和風なテイストの感じられる曲だと思う。ボステーマ「ネイティブフェイス」ばかりが取り沙汰されるが、こちらも匹敵する名曲。「ネイティブフェイス」も、楽しげでせわしいなかにもノスタルジックな叙情性のあるメロディで、「明日ハレの日、ケの昨日」と同一ステージの曲という雰囲気の統一性があるのが良い。
かなり原曲忠実なアイリッシュ楽器によるアレンジ。素晴らしい。

締めに、風神録の曲から、稲田姫様に叱られるから、神々が恋した幻想郷、フォールオブフォール、ネイティブフェイスそしてエンディングの神は恵みの雨を降らすをオカリナでアレンジしたメドレーを紹介。これ、良いですよ。


で、上で「明日ハレ」を紹介したごっつーことKou Ogata氏の東方アレンジCDが出るようです。

ポルカントはエスペラント語で「民謡」の意らしい。これは期待。ただ、だいたい動画で上がっている曲なのがちょいと難。まあ、出たら買いますが。

そしてこの記事でも強くオススメしたベックマン氏のマイリスト。民族音楽系が好きならかなり嵌ると思います。当然光田康典曲がありますね。

オリジナル曲の出来が良い。凄く良い。全然オリジナルで勝負できる人ですね。サイトにはニコ動にない曲のmp3もあるので、見てみると良いです。
http://music.geocities.jp/balsa_perdida/haioku/index.html
一曲、氏のオリジナル曲。名曲ですよ、これは。陽の沈まない町なども素晴らしい。

というわけで、風神録、道中曲の笛系アレンジ紹介記事みたいになってしまいましたね。しかし、ケーナ、鍵盤ハーモニカ、ホイッスル、オカリナとか、マイナーでニッチな楽器は沢山あるのに、フルートとかのメジャーなのは見つからない。ふしぎ。

そういえば、ファンはすでに読んでいるだろうけれど、東方をそれほど知らないという人は、いろいろ面白いことが語られているので、以下のZUN氏の話は読んでおくと良いと思います。
http://gensou.credits99.com/after.html

*1:今年はZabadakに嵌ったんだけど、レビューを全然書けていない