Sylvan - Artificial Paradise

Artificial Paradise

Artificial Paradise

ドイツのプログレバンド、シルヴァンの2002年リリース作。90年代から活動しているバンドで、99年デビュー、これは三作目にあたる。これ以前の作は入手が難しいので未聴。

このバンド、わりとプログレメタル系のバンドとして紹介されることが多いみたいだけれど、プログレ色もメタル色もそんなに強くはなく、普通のロックっぽい部分の方が大きい。一曲の長さが7分を越えたり、10分を越える大曲もあるけれど、雰囲気を重視して間を取ったりするために長くなっていることが多い。基本はヴォーカル主体のロックで、叙情的でメロディアスな良質の曲を聞くことができる。

その点では同じくドイツのRPWLなんかと近いところもある。ただ、シルヴァンはむしろ最近のマリリオンにより近い。マリリオン特有の浮遊感をマイナスして、もうちょっとスタンダードなロックサウンドへ舵を切ったという感じがする。最近のバンドの例に漏れず、ややメタル的なヘヴィさも垣間見せるけれど、エモーショナルで秀逸なメロディが曲を引っ張っていて、どの曲も佳曲ばかり。

冒頭の「Deep Inside」はピアノが美しい佳曲で、サビへの盛り上がりが良い。次曲の「Thats Why It Hurts」もミドルテンポのエモーショナルなバラードで、その次の「Strange Emotion」は女性コーラスやサックスなんかを取り入れてファンキーな明るさがあるポップな一曲。8分越えの「Human Apologies」はプログレメタルといっていい、ヘヴィなギターリフと曲展開の頻繁な切り替えが取り入れられた楽曲。とはいってもそこまでヘヴィというわけではなく、わりと聴きやすい。その次のやはり8分オーバーの「Timeless Traces」はイントロからのロングトーンのギターが印象的な美しいバラード。これは良曲。初めて四分を切る長さの「I Still Believe」はメタリックでハードな一曲。一転して「Around The World」では軽快な雰囲気の曲で、ポップでメロディが良い。ピアノ伴奏のシンプルな幕間「Souvenirs」。

そして、今のところたぶん最長の、20分を越える今作の表題曲「Artificial Paradise」はメロディがひときわ素晴らしい彼らの代表作。イントロも長いし曲も長いけれど、Part1の五分過ぎくらいまでは聴いて欲しい。ここのサビのメロディは最近脳内でよくリピートされる。

Different faces on the other side in our artificial paradise
In a world full of fates and illusions - do you see them?



ラストの観衆大合唱がいい。

ただ、ミドルテンポの曲が多く、どの曲も良い曲だけれど逆に突出した一曲というものには欠け、一聴しただけだとスルーしてしまうかもしれない。けれど何度か聞くうちにどの曲もその良さがだんだん分かってくる。そこら辺はマリリオンとかRPWLとかもそうだった。

ヴォーカル主体のプログレ風味現代ロック、という感じで楽曲の水準は高いので個人的に最近オススメのバンドだ。プログレに興味はなくても行けるんじゃないかと思う。