Eileen Ivers - Crossing the Bridge

クロッシング・ザ・ブリッジ

クロッシング・ザ・ブリッジ

アイルランドのフィドラー、アイリーン・アイヴァースの三枚目のアルバム、1999年リリース。
11歳ですでにオール・アイルランド・チャンピオンシップのフィドルでタイトルを獲得するなど、若い頃からその才能は注目されていたという。リバーダンスでの活躍や、タイタニックサウンドトラックへの参加などでも知られている。

一曲目からドラムとベースを導入し、アイリーン自身もエレクトリックフィドルをワウを効かせて弾きまくるフュージョンケルトが炸裂しているのを聴いても分かるように、このアルバムではアイリッシュミュージックを基本にしながらも、より現代的なアプローチをとっていて、フュージョン要素だけではなく、ワールドミュージック色も多彩に取り込んでいるところが特徴だ。まあ、ここ何回かずっとそういうのばかりを取り上げているのだけれど。

参加メンバーがまた豪華で、アメリカトップクラスのドラマー、スティーブ・ガッド、最近再結成ライブも敢行したReturn to Foreverでの活動が有名なアル・ディ・メオラブレッカー・ブラザーズの兄、また前回記事にしたSolasからリーダーのシェイマス・イーガンとギターのジョン・ドイルまでが参加という、フュージョン畑、ケルト畑からみても面白い構成になっている。

一曲目の「Gravelwalk」、ドラムはスティーブ・ガッドで、フレットレスベースもかなり動きまくるし、エレクトリックフィドルの縦横な活躍も格好いい。Solasメンバーも参加し、フュージョン要素を導入したハイテンションな楽曲で、素晴らしいアルバムの導入になっている。

次曲ではアフリカのコーラスを導入した穏和な曲で、アイリッシュトラッドとアフリカンとの面白い組み合わせ。

三曲目はしっとりとした情感で聴かせるアイリッシュエア。もういかにもアイリッシュという感じでさらにピアノも入れて叙情性の演出も抜群。

「Whiskey & Sangria」ではアル・ディ・メオラのお得意のスパニッシュギターが登場。アルのギターに絡むフィドルがここでは非常にスパニッシュな感触で弾きまくる。パルマ(手拍子)、カスタネットも入って、この曲はとてもケルトとは言えない雰囲気だ。しかし秀逸。

次の表題曲ではヒップホップ風のバックトラックにスクラッチノイズまで入った異色の作。ランディ・ブレッカーはここでトランペットを吹いている。ムーディな雰囲気が芬々としている。面白い曲ではある。その次はタイタニックサウンドトラック、「バック・トゥ・タイタニック」収録曲だったらしい。フィドルソロでのスローなインスト。

その次はSolasメンバーらも参加し、バンジョーなども入ったちょいカントリーぽさもあるインスト。解説にはドブロ・ギターが使用とあるけれど、中盤あたりの独特の音色のアコギがそうだろうか。ドブロ・ギターは間違いで、リゾネーター・ギターと呼ぶのが正しいらしいが。バンジョー、リゾネーター・ギター、アコースティックギターといろんなギターの音色が楽しめる面白い曲。リゾネーター・ギター - Wikipedia

八曲目の「March Up Fifth」でまたもやガッド。序盤のやや暖機運転のようなテンポだけれど、テンポアップしエレクトリックフィドルが弾ける後半の場面はかなり格好いい。ここでもリズム隊のフュージョン風な演奏が格好いい。

その次はなんと「Polka.com」として、ポルカ。ボーランとフィドルのデュオで、シンプルながらもテンションの高い演奏を聴かせる。

十曲目「Islanders」ではコンガなどを入れて明らかに南国風のタッチ。ドラムはまたもガッドでSolas組のほかに、ホーンセクションも入ってどこまでも南国風。

ボーラン、ギター、フィドルのトリオで疾走する「Crowley's / Jackson's」はアコースティックケルト好きには堪らない一曲。これは良いです。

ラストはスローなインスト。三曲目に比べてずっとゆったりとしていていかにも終幕を感じさせる。

ワールドミュージック色を導入したケルトアイリッシュはいくつかあったけれど、ここまでフュージョン要素を取り入れたものはあんまり聴いたことがなかったので、かなり新鮮。さらに元よりテクニカルでテンションの高いフュージョンとの相性はかなり良いみたいで、ガッド参加曲やアル参加のものなどはかなり面白い出来だ。


トレードマークの青いフィドルを弾くアイリーンさん。

CBSでの紹介番組が。

彼女については丁度良い演奏動画が見つからない。音だけ丸上げはあるんだけれど、ねえ。

楽曲試聴なら
Eileen Ivers - MySpace
こちらで。このアルバムからはアル参加曲と、綺麗なエアとバンジョー入りインストが聴ける。