野間三賞の贈呈式・祝賀会に行って来ました


12月17日、野間文芸賞野間文芸新人賞野間児童文芸賞の贈呈式・祝賀会があり、なんの因果か私も参加してきました。畏れ多くも野間賞受賞者笙野頼子さんから招待されたのでした。エッセイや帯文に私らしき人物が出てくる時もありましたけれど、まさか、と。それも帝国ホテルという貧乏人には縁遠い場所で、かなり恐々としながら行きました。

会場にはいると贈呈式が始まり、選者の方や受賞者のスピーチが行われました。笙野さんを見るのはこの時が初めてでしたけれども、案外とイメージ通りという感じがしました。受賞スピーチはこれまた力の入ったもので、何にしてもパワフルなんだな、と。対照的なのが新人賞の松波太郎さんで、いきなり脱ぎだして何かと思ったら、受賞作『LIFE』にちなんで、LIFEと手書きした白Tシャツをスーツの下に着ていたという。体育会系らしいノリがなかなか楽しい人でした。松波さん私の年下とか。

祝賀会に移り、笙野さんの席の近くで会った女性が、笙野頼子ファンサイト管理人で時々ユリイカにも書いている木村カナさんでびっくり。岡和田さん、私、木村さんで笙野読者チーム、という感じで場内をうろついていたりしました。笙野さんは挨拶で忙しそうでしたので。

当日はやはり主賓でしたので、笙野さんには正体のお礼を言ったり、ちょっとした話をした程度でしたけれども、会場で、刊行間近の『猫キャンパス荒神』を頂きました。しかもサイン付きで。以前人づてに笙野さんが私に著書をくださる、という話があったとき、私は「全部持っているから」、といって断ったことがあったのですけれど、その理由以外にも、その時は読者をやっている作家の方から著書をもらうなどすると、感想についての距離感が変わってしまうということを心配したのでしたけれども、まあ最近は献呈頂いた場合は明記して感想書いているので、変わらずにいられるかは読む人の方で判断してもらいましょう。笙野さんは今回ばかりは断りませんよね、と言って新著を渡して下さいました。断れるわけがない。ありがとうございました。


「ネット最強」て。そういえば、このkingというハンドル、ここで説明したことはないかも知れないですけれど、高校時代の私の逸話に対して友人連中がつけた「バカキング」の略なんですね。常識知らずで社会性のない私にはピッタリだと評判のニックネーム。
二次会会場にも顔を出したのですけれど、まあ狭い空間に知った名前の作家批評家さんがいらっしゃる。みなさんスピーチしてたんですけれど、笙野さんの圧倒的な存在感、というか、ある人が笙野頼子の名前を見つけるとびくっとする、自分は何か論争したわけでもないのに、と言っていたような畏怖を与える存在に見られていて面白かった。文壇的なつきあいから遠く、かつ雑誌からパージされても論争を辞さず、そしてあの圧倒的なエネルギー、そして「文学」への強固な信頼。松波さんは、賞自体はどうでもいい、というような若者らしい言い方をする時があるんですけれども、笙野さんはそれは言わないわけです。23年望んでいた賞だった、と言う。作品を書いて、それが読まれて、評価される、という文学的過程への皮肉ではない信頼と感謝が感じられる。それは選考委員になった時の責任感や、また不自然に委員を下ろされることになった時、果然と声を上げることにもなるのだと。文壇外にいながら最も文学を信頼し、擁護しようとする姿勢に皆畏れを感じているのかも知れません。

という雑感でした。笙野頼子さま、ご招待頂きありがとうございました。野間文芸賞、おめでとうございます。次はまた23年掛けて、野間児童文芸賞も獲って野間賞も三冠、ですね。

猫キャンパス荒神

猫キャンパス荒神