季刊「未来」の後藤明生論第五回「「とつぜん」としての世界」について


今回特に補足することはないですね。註釈もだいたい削らずに入ってかなりの分量になりました。特に長い、拓殖大学に関するものと武道教育禁止令のところは、後藤論ではほぼ言及されないところで、わりと面白い背景知識かな思います。後藤明生論で『拓殖大学百年史』を参照してるのなんて私しかいないだろう、という。平田了三「GHQ占領期における武道の一考察」も面白い論文で、GHQ占領下日本の一コマを差し込んでみたかたちです。

その註釈がなんなのかというと、つまりは『挾み撃ち』において古賀弟は何なのか、古賀弟の位置づけから歴史性が見えてくるところがある。古賀弟の象徴性というか重要性は結構大きいと思いますけれど、踏み込んだものはなかったかと。

同時に、『挾み撃ち』の脱線的な饒舌から、当時の細かい状況なんかも窺えたりして、でもそれが無駄になっていない。グァム島の意味や古賀弟もそうですけど、いろんな無駄話がテーマの変奏だったり、伏線になったり、話題の転換点になったりしているのがやはり面白い。

あと「赤と黒の記憶」という言葉が本当に指し示している場所はこれではないか、というのも前から言いたかったことではあります。