今年読んでたラノベとか

ラノベでまとめて一記事にしようと思ってため込んでたら一番最初のは三月に読んだやつだったりするくらい溜めすぎてしまった。

逢縁奇演『こちら、終末停滞委員会。』

世界中に散在し滅亡への時間を早める怪異「終末」を収集確保し終末を遅らせようとする終末停滞委員会が存在している世界で、人の心を読める終末を持つ少年が彼らに協力し、銃痕と呼ばれる特殊武装を持った少女たちとともに戦う青春バトルラノベ

少年少女たちがデカイ得物を振り回して戦う学園もので、世界中で異様な現象を起こす万単位存在する「終末」を無力化したり確保したりというミッションをこなしていくのが主軸となっていて、なんというかSCPとブルーアーカイブを混ぜ合わせたような感触。主人公は人の心が読める少年でマフィアに利用されて多数の人の死をもたらした罪悪感を持ちつつも決して諦めない不屈さを基軸にしていて、武器も持たずに立ち向かう勇気、絶望的状況のなかで希望を失わないという姿勢は終末停滞委員会のあり方ともリンクして、力強い印象を与えてくれる。

プロローグから魔王が出てきたり異世界転生という夢を見せる「終末」を拒絶して現世に留まる導入、旧人類の遺物や現実性を揺るがす異常現象など、メタ性とともに濃密な情報、設定がガンガン出てきていてだいぶ過積載のラノベって感じがある。

ジャージメイドでスモーカーの、糸でできたロボという特権的位置にいるお姉さんや、褐色長身で主人公が自分より小さいことにときめいてる同級生がヒロインとしてリードしていて、わりと姉萌えの作者なのかなと思ったけどまだ一巻。男子の登場人物のビジュアルが出てこないのがちょっと不満。シャムシール、シールを貼ったものと場所を入れ替える、ジョジョのキッスのアレンジなのかなと思った。しかし小柴さん、文中の描写だとベージュの髪色と指定されているのにイラストだと紫なんだよな。

甲田学人『ほうかごがかり』

ある夜誰もいない学校に召喚されて、名前のない化け物たち、無名(ナナ)不思議の成長を阻止するために日誌に記録をつける「ほうかごがかり」に任命された七人の小学生たちのサバイバルを描くホラー、あるいは作者いわく「メルヘン」ラノベ

『Missing』のコミカライズを読んでいたら『裏世界ピクニック』の元ネタかと思える部分があったりして、名前は知っているだけだった時に新作が出たのでちょうど良いなと買ってあった。ラノベと言ってもオタク要素はなく、シリアスな子供たちの物語でこれもまたラノベだと言える。

七人プラスワンがメインキャラだけども一巻では三人がある程度描かれている。焦点となる人物たちは家庭に問題を抱えており、虐待父から逃げてきて女手一つで子供を育てる母に苦労をさせたくない啓、モデルをやらされ外見しか親に求められていない絢、逆に裕福故に罪悪感がある惺。毎週金曜深夜の「ほうかご」に集められ、怪異の記録をさせられることはそうした自らの抱える問題に向き合う闘争でもあって、見たくないものだからこそそれが露わになることに怖ろしさがある。これを通り抜けられなければ生きられない問題を直視できるか、乗り越えられるか、そういう戦い。

小学生がぶつかるには重い課題が突きつけられている気がするけど、そういう子供たちの戦いを描いていて面白い。

宮澤伊織『裏世界ピクニック10』

カイダンクラフトを通じて生成AI時代における怪談とは何かという問題意識が感じられる巻で、「裏膝枕」というものをめぐっての展開は、ワードサラダめいた自動生成怪談の怖くなさと人の語りによる怪談の差異とは何か、というのが問われているように思った。

生成AI的な光景は不気味だけれど怖いというのとは違う感じがしていて、作中で空魚が生成物を語り直して怪談にしているところがそうだったように、やはり人を怖がらせるには人の心を踏まえた編集作業が必要になってくるのかもしれず、だからこそ怪談は裏世界からのコミュニケーションの試みになる。文脈に巻き込まれて自動的にそうさせてしまうという点で恋愛と怪談は同じもの、という言い方がこの巻で出てくるけれども、これはまた心とは自動的にそうなる仕組みという示唆にもなってて、自由意志とは何か、というのが人の心が分かるか否かという話と繋がってくる。

平坂読『変人のサラダボウル8』

岐阜コメディ第八巻、異世界からの暗殺者が怪盗に転じて高校生探偵友奈につきまといめんどくさい友人にったりの探偵風パートと、惣助の年の上下で揺れる恋愛模様、リヴィアの出家と不犯の誓い、サラの芸能界成り上がり物語などなど今回も色々。

異世界からの転移者がこの日本・岐阜で色々な仕事や名前を得る、転職・転生の物語をベースとして様々な話が個々に展開していく群像劇だけど、友奈とアルバのちょっとした推理みたいなところに尺を割いてるのはやはり探偵が主人公で小学館ゆえのコナンネタにあやかる作品らしさと言うべきか。アルバの存在がこれからより重要になっていく予感もある。友奈の恋愛感情を気づかせる役目にしろ、探偵のライバル役にしろ。友奈は助手を大義名分にして毎日料理を作る通い妻状態で惣助にもっとも近い位置だけれど、ブレンダが意外な共通の趣味から急接近しつつある。

惣助も娘のサラと一つしか違わない子供相手と恋愛関係になるとは思えないんだよな。女性として意識している場面があるのもブレンダだし。しかし事務所水没のエピソードはやけにリアルだなと思ってたらあとがきの一行目で笑った。自宅浸水はまー、大変だろう。

女性と関係を持ちすぎて出家したリヴィアが女性だけで営む旅館に用心棒として雇われる展開、女所帯に女性で安心と思わせてコイツがあまたの女性に手を出してきた「性獣」なのでこの旅館がどうなってしまうのか怖すぎる。小動物の檻にライオンを投げ込むような事態だ。

長良川揖斐川木曽川の三川の治水の話が出てくるけど、名古屋市民だった頃は小学校でその辺の話は習った覚えがあって懐かしい叙述だった。そこら辺の川のどこかにタワーが建ってて遠足か何かで上った気がする。しかし「東京も名古屋も全部岐阜!!」の帯文は面白すぎる。

みかみてれん『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 7』

遥奈の不登校事件をめぐる姉妹回後篇。遥奈の事件はれな子に中学校時代の不登校事件という最大の弱みに直面することを余儀なくし、友人たちの力を借りることで乗り越えた先にもまた同じ姉妹関係が現われ、姉妹で始まり姉妹で終わる濃厚な姉妹百合巻だった。

遥奈の行動の真相がだいぶ単純というか、れな子が最初に予想していたものどおりだったのは二巻掛けたにしては拍子抜けだけれど、二ヶ月経ったら行くという発言のなんだそれという理由も含めて幼い妹っぽさとして良かったのかも知れない。代わりにもう一つのれな子ifの導入ではあるか。

この巻だと照沢耀子と風呂入ってるのお前今度はそっちかって笑う。紗月照沢の策動、突然の婚約騒動でリュシーを出しつつ、ってやってるとどうも紫陽花さんの出番がなくなってしまいがちではある。れな子の紗月評がいちいち辛辣だしちょいちょい口に出して、締められてるのが笑ってしまう。

わたなれ七巻の作者のコメントで面白かったのは今作の二つの核として百合だということと「頑張る女の子っていいよね」ということが挙げられていて、それが核だったのかと改めて気づかされた。毎回れな子が誰かのために奔走する話になっていて、作品としてのポップさ、主人公の好感度に繋がってる。友達をつくろうとして恋人が出来てしまうというところに百合ラブコメの仕掛けがあるんだけれど、その前段階として引きこもりからの脱却を目指して前向きに頑張る主人公を据えていることで作品の基本的カラーが決まっている。読んでいて楽しい作品というのはそこから来てるんだな。

みかみてれん『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) SS集』

店舗特典、フェアなどで発表されていたらしいショートストーリーに書き下ろし短篇を追加したもの。一つ二つ持ってるものもあるけど、普通は集めるのも難しいものを集めて本にしてくれるのはありがたい。人気作品でもないと再発表の機会もないだろうし。

どれも各巻のちょっとした裏話やなんやで、なくてもいいけどあれば嬉しい温度感のもの。なかでもチキチキシリーズというか香穂が自作自演で会話・質問のお題を持ってきて各メンツがそれぞれ答えていくのはプロフィールの掘り下げにもなっていて面白い。真唯がTVのレギュラー持ってるとか。紫陽花さんがれな子の顔が好きとか言うところとか。SSで紗月とさらにキスしてなかったか? れな子は自分は同性愛者じゃないみたいなこと言ってた気がするんだけど五人をずっと性的な目で見てるだろってずっとツッコミ続ける感じがあるしそれを香穂にはっきり指摘されてもいる。それでいて武装を解いて元気のないダーク香穂にハマりそうになってるとか、お前!ってなる。

みかみてれん『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 短編集』

SS集に対してこちらは公式サイトなどで公開されていた短篇に書き下ろしを加えたもの。美術部の先輩というサブの新キャラを出した他、紗月と紫陽花のまあまあ長めの話と花取さん視点の短篇という構成。一貫してれな子には他人を褒める才能があることが描かれている。

最初のれな子が後輩になる短篇で出てくる詠先輩、ひどいオチで笑った。れな子の後輩ぶりに対して優秀な先輩の精神面での弱さが描かれるわけだけれど、れな子自身もクインテットだなんだと憧れられながらその実自信のなさを抱えていて、鏡映しの存在を描いてる話だろう。

紗月さんのラブレター、紗月の好きな作家をれな子が読んでハマってしまい、どんどん本を読ませて喋らせて紗月が感想を味わっていたら、れな子にファンとして自分より先を行かれそうになって必死に引き留めるところがいじらしくて良い。良い漫才コンビだと思う。感想をいう、褒める才能の話が前話から続いていて、紗月をそこに導く話になっている。自分は本になったものしか読まない、作家には興味がないと言い張っていたのにれな子がじゃあ自分一人でも即売会に行くと言い出したら態度が崩れるの笑う。しかもそれが「文フリ」っていうね。正式名称が違うけどまあ「文フリ」。紗月の自己開示のなさの話かと思ったらそうでもなかった。紗月が唯一褒めるしかしない紫陽花さんと一切褒めないことでその思いの強さが窺える真唯、紗月の最愛の二人を奪っていったれな子って紗月の人生においての最大の「敵」なんだなあと思った。

紫陽花さんの生徒会選挙、彼女の人のためになることをしたいという行動へ踏み込む勇気をれな子が支える話になっていて、色々なサブキャラの再登場と、やはりれな子の人を褒める才能が描かれている。生徒会に入るかどうかって話が短篇で書かれるということは、と思った通りのオチではあった。不登校・引きこもりから「陽キャ」に憧れて高校デビューをしたというれな子は「陽キャ」というかクインテットの皆に対して色々思うところはあれど根底的にはすごい人たちだと仰ぎ見る姿勢なので褒め言葉みたいなのはポンポン出てくるところがあって、その率直な言葉が心を掴んでる。

みかみてれん『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 8』

紗月篇の前篇となる八巻。真唯婚約騒動をめぐるルネ社長の暗躍を背景にフランスの真唯の友人リュシーとキャバクラ行ったりラブホ行ったり、恋人と餃子パーティで関係を深めたり、そしてこの騒ぎのなかで紗月の想いは何だったのか、で引きを作っていく。

身体はデカイのに精神は子供のリュシーに振り回されてキャバクラ行ったりラブホ行ったりするの、ありおとが漏れてる!漏れてる!と思った。いやまあありおともまだ一巻しか読んでないけども。でも香穂篇で普通にラブホ女子会の名目で一緒に来てたのコミカライズ読んで思い出した。

紫陽花さんが土壇場で強いのは良いですよね。家出しちゃうようなことも出来る、というよりあれは自分のわがままでれな子がいなかったら帰るつもりだったわけで、生徒会立候補の話もだけどれな子も含めた他人・友達のためには強靱な意志の強さを持ってるってのはらしいな、と思うわけで。天使と呼ばれる感じの良さやおっとりした物腰、人の善性を信じている姿勢、こういう人はやっぱり思考の足腰強いところがある気がするし。

偽装なり結婚の話が前面に出て来たけど同性婚は日本ではできないけどフランスでは可能という話が出ていて、リュシーを介して同性婚が現実の話として一応置かれてはいる。でも複数人で婚姻可能な国はあるのかは知らない。