2025年に読んだ本

今年読んだ本の10選とかそういうの。各書名から当該書籍の感想記事にリンクしているので詳しくはそちらを。

2025年に読んだ本10作。

劉慈欣『三体』三部作

国際的に話題となった中国SFの大作。文庫化された年に積んでた単行本を読む。全五冊からなる長いシリーズだけれどやや古典的なスタイルで語られるファーストコンタクトもの。一部の文化大革命の歴史と謎が引っ張る序章、二部のエンタメ極振りからの三部の観念性への爆走。作者の女性観というか恋愛観とかに問題はありつつも、全体主義は人類の発展を阻害するという価値観が提示されている。

C・S・ルイス『ナルニア国物語』

新潮文庫版の新訳が始まり未読だったので月一で読んでいった。キリスト教の考えが埋め込まれていると言われつつもシンプルに冒険ファンタジーとして楽しめるところもありつつ、最終作は結構すごくて、キリスト教徒にとってファンタジーが書かれる理由の一端を見た気がする。

小山田浩子『小さい午餐』

新潮社のウェブサイトで2019年から二年間連載されていた作者の外食エッセイ。初の連載だったという。『パイプの中のかえる』よりも一回がずっと長いのでより小説的な状況の描写が多くなり、周囲の雑談が記録されていてその場の空気感を味わえるのが面白い。

米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』

冬の巻が刊行され、アニメの完結篇となる第二クールが放映する直前に短篇集以外のシリーズを最初から読み返して最終巻まで読み終えて感慨深かった。アニメも小説もその年のベスト10に入れるくらい良かった。

田中小実昌『田中小実昌哲学小説集成』

著者の「哲学小説」と呼ばれた作品群を集成する全三巻の企画。小説を読めなくなったという著者がカントやスピノザ、果ては柄谷行人までを読みつつ、引用と思索を続けていく独特の作品群。

キシュ『ボリス・ダヴィドヴィチのための墓』

悪党やならず者を描いたボルヘス『汚辱の世界史』のオマージュかつアンチテーゼとして、ソ連の粛清などによって公的な歴史から消された者たちを描く短篇集。裁判沙汰になった論争を巻き起こし、作者のフランスへの亡命の原因となった話題含みの書。

トーマス・ベルンハルト『寒さ 一つの隔離』

自伝五部作の四作目で最後の邦訳書となる。最初に翻訳された自伝五部作第五作『ある子供』が出たのは2016年、二年で一冊、十年近く掛けての訳出となった。この次の自伝五部作の五作目は『ある子供』という幼少期の回想が描かれ、自伝五部作の最初の作品は『原因』と題されていて、この自伝シリーズは最初と最後が繋がる環のようになっている。

野坂昭如『アメリカひじき・火垂るの墓』

夏の戦争文学月間の一冊。二つの表題作で直木賞を受賞した著者の代表作たる短篇集。映画は幼い頃に見ただけの「火垂るの墓」の原作を初めて読んだけれども、神戸を舞台に関西弁が飛び交い、助詞を省いて読点で文節をどんどん繋げていく饒舌な語り口調のような文体の質感が印象深い。戦争で亡くした妹への贖罪のような短篇複数で描かれる。

石川博品『アフリカン・ヴードゥー・ジュージュツ』

二年ぶりの新刊。本書はこれまでの石川作品で一番ソリッドでタイトな小説かも知れない。アフリカで暮らす少年が柔道家の日本人と出会い、数代にわたる師弟らがジュージュツを洗練・変化させつつ受け継ぎ、憎悪・暴力・差別・国家の生む分断を超える理想の境地を求める生を描く長篇小説。

R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』

19世紀、銀に二つの言葉を記すことで生まれる翻訳の魔法によって世界の覇権を握るイギリスを舞台に、各地から翻訳者となるべく集められた学生たちが徐々にこのシステムの植民地主義的収奪に気づき、反旗を翻す改変歴史ファンタジー大作。

そのほかの印象的なもの。
鈴木比佐雄、座馬寛彦、羽島貝、鈴木光影編『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集――報復の連鎖からカントの「永遠平和」、賢治の「ほんとうの幸福」へ』
広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集 ―報復の連鎖からカントの「永遠平和」、賢治の「ほんとうの幸福」へ
蛙坂須美『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』
こどもの頃のこわい話 きみのわるい話 (竹書房怪談文庫)
寮美千子『詩集 水の時 Voice of St.GIGA』『詩集 星の時 Voice of St.GIGA』
詩集 水の時 Voice of St.GIGA
詩集 星の時 Voice of St.GIGA
宮崎智之・山本莉会『文豪と犬と猫』
文豪と犬と猫 偏愛で読み解く日本文学

あと今年は詩集を読んだ。詩がよく分からないので有名なやつを色々、とりあえずざっと読んだだけで別に分かった気にはならなかったけれど。

今年聴いてたCD

この時代にあえてCDを買うこととかCDが増えすぎて大変とか、そんな話もバズっていたけど、私は今年はここ数年で一番CDを買った年になった。それでも10枚くらい。途中からあえて買ってたところもあるけど、いずれもこれまで聴いていたアーティストの新作や旧作。
Acoustic Asturias サムウェア・ノット・ヒア
サムウェア・ノット・ヒア
アイン・ソフ 妖精の森
妖精の森

ARCANA HANGED MAN 吊るされた男
HANGED MAN / 吊るされた男

KENSO An old warrior shook the Sun 老兵礼讃
An old warrior shook the Sun - KENSO

TEE TOTAL EDGE EFFECT
TOTAL EDGE EFFECT

Jackson Browne The Road East - Live In Japan
ロード・イースト -ライヴ・フロム・ジャパン-

Jackson Browne Standing In The Breach
スタンディング・イン・ザ・ブリーチ - ジャクソン・ブラウン

Jackson Browne Downhill From Everywhere
ダウンヒル・フロム・エヴリホェア

Dave Bainbridge To The Far Away
To The Far Away

Dave Bainbridge On The Edge Of What Could Be
On The Edge Of What Could Be (2cd)


アコアスについては去年に触れたけれど、アイン・ソフも去年よく聴いてたプログレバンドのサブスクにないやつ。アルカナは10年以上前にもブログでソロアルバムを取りあげたことがあるケーナ奏者山下Topo洋平と、これもこのブログでは度々取りあげているギタリスト鬼怒無月、そしてピアニストの上野山英里によるトリオのアルバム。アコースティックでかつスリリング。
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Kensoの新作はいつも通りか。
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TEEはフルートフロントのプログレバンド。これはサブスクになかったのを中古で見つけて購入。
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ジャクソン・ブラウンのライブ含めた三作はつい追うのを忘れていて、日本盤が新品で入手しづらくなってたところで辛うじて手に入れた。
デイヴ・ベインブリッジはケルトプログレバンド、Ionaアイオナのフロントマンで、新作リリースを知って旧作を買ってないことに気づいて二作を買ったけどこれは良いですね。新作はYoutubeでも聴ける。
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