岡和田晃「向井豊昭の闘争」連載スタート

評論連載「向井豊昭の闘争」を「未来」(未來社)で開始します。 - Flying to Wake Island 岡和田晃公式サイト
岡和田さんのブログの方でも告知されていますように、硬派な学術系出版社として知られる未來社のPR誌『未來』で、岡和田晃による向井豊昭論「向井豊昭の闘争」が始まっています。2012年1月号からスタートで、一回あたり二十枚弱の連載です。

月刊PR誌「未来」|未來社
まだ最新号はウェブに載ってないみたいです。あと、入手するには直接購読するしかないようです。

アイヌではない者によるアイヌ文学という向井豊昭のスタンスを、彼の早稲田文学でのデビュー以前の仕事をたどりながら論じていくようです。第一回では向井豊昭が1966年に同人誌に載せた作品が「文學界」の同人雑誌評で高く評価され、翌年には別の作品が全文「文學界」に転載されていたことなどが書かれています。そしてそれは内向の世代の小説家後藤明生が文芸誌に書き始める端緒*1となった中篇が同人誌からの推薦作として文學界に転載された翌月だったというから面白い。この二人、ほぼ同時期に文學界に登場している訳ですね。

向井豊昭の仕事は一般に早稲田文学でのデビュー以降しか知られていないけれども、それは氷山の一角でしかなく、岡和田さんは海に沈んだ見えない部分を地道に足を使って博捜して、この連載のベースとしてしているようです。

向井豊昭読者は必読の論考でしょう。一応向井特集を編集した私も知らないことだらけで、一読者としてとても興味深く読んでいます。ここらへんのレアな作品もアーカイブあたりで紹介してみたいですけれども。

以下は私と岡和田監修の向井豊昭遺稿公開ページです。
向井豊昭アーカイブ
「幻視社第四号」での向井特集もそのまま公開しています。
追悼 向井豊昭 1933〜2008
岡和田による、本連載の予告とも言える「向井豊昭論序説」もありますので、是非ご参照。

*1:後藤のデビューは一般に新人賞の佳作として1962年「文芸」に載った「関係」とされているけれど、年譜を見るに、五年のブランクを経てこの中篇「離れざる顔」が掲載されてから頻繁に文芸誌に作品を載せるようになっているので、実質的なデビューはこの1967年だといえる