第十九回文学フリマに「幻視社」で出展します

2014年11月24日(月祝)開催、第十九回文学フリマに出展します。ブースは「Fホール(2F)カ-28」です。
文学フリマ | 小説・評論・詩歌 etc.の同人/商業作品展示即売イベント

第十九回文学フリマ 
開催日 2014年11月24日(月祝)
開催時間 11:00〜17:00
会場 東京流通センター 第二展示場
アクセス 東京モノレール流通センター駅」徒歩1分
http://bunfree.net/?%C3%CF%BF%DE
幻視社 [第十九回文学フリマ・評論|ファンタジー・幻想文学・怪奇文学] - 文学フリマWebカタログ+エントリー

以下に表紙と目次。毎年のように五百円になる、と思いましたけれど、印刷代が値上がりしていて、その値段では著者取り分のぞいて完売しても赤字になる価格だと言うことに今気づいたので、たぶん600円になると思います。

幻視社 第八号 熱/狂 目次
小 説 ドアがない エンドケイプ
 とかげの体温 佐伯僚
 
特 集
〈フィクションのエル・ドラード〉と水声社の本

叢書全作レビュー
 ラミレス『ただ影だけ』 サエール『孤児』 オネッティ『別れ』
 ドノソ『境界なき土地』 コルタサル『対岸』『八面体』
 他叢書から
 マルセロ『連邦区マドリード』 リシャール『ロラン・バルト 最後の風景』
ガザミ 倉数茂 東條慎生 渡邊利道
 特別採録 SF乱学講座
 「ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を深く味わう」岡和田晃
 
中村うさぎを読む
 鼎談 中村うさぎ――内なる他者性を求めて佐伯僚×東條慎生×岡和田晃
 中村うさぎ作品レビュー
極道くん漫遊記 家族狂 借金女王のビンボー日記 私という病 セックス放浪記 狂人失格 聖書を語る 死からの生還
 岡和田晃 ガザミ 倉数茂 東條慎生 渡邊利道
 エッセイ
 中村うさぎと東電OLと友人Sのこと 佐伯僚 
 依存症の時代――「生きづらさ」のゼロ年代史 倉数茂
 
〈東欧の想像力〉を読む その三
 ボフミル・フラバル 剃髪式 東條慎生
 
未発表遺稿掲載 向井豊昭
 骨の中のモノローグ 向井豊昭
 向井豊昭アーカイブ通信&作品リスト補遺 岡和田晃
 
 表紙イラスト・デザイン 狩野若芽

今回は何と前回ブースに来て頂いた小説家・批評家の倉数茂さんが参加しています。ラミレス『ただ影だけ』のレビューと、中村うさぎ論を寄稿頂きました。

小説

エンドケイプさんのシュールな掌篇と、佐伯僚さんの身体改造系短篇となります。佐伯さんのものは水のエレメントが印象的な作品で、お二人ともいつもながらのテンション。

〈フィクションのエル・ドラード〉と水声社の本

第一特集のラテンアメリカ文学叢書、〈フィクションのエル・ドラード〉は、全六冊とまだ少数で、補足として水声社の近刊他書を扱う予定でしたけれど、スケジュール的にミスって(企画を決めたのが遅過ぎた)それは二冊に留まってしまったので、代わりとしてジュノ・ディアスの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を扱ったSF乱学講座の講義を採録しています。

エル・ドラード、寺尾隆吉が今のところ全部訳していて仕事の速さ半端ないな、という感じですけれど、初紹介の独裁者の側近の卑近さが露わになっていくラミレス『ただ影だけ』や、コルタサルの短篇集の未訳分など、未紹介だったりしていたものをいろいろ訳すのと、絶版重要作を復刊していくようで、水声社久しぶりのラテンアメリカ文学叢書として期待大だと思います。みなさんいろいろ違った書き方ですけれど、ガザミさんが担当したオネッティの想像力の裏と表を対比したレビューが良かったです。また、他叢書では、邦訳されたバルトはすべて読んでいた、という渡邊利道さんによるリシャールのバルト論レビューが読み応えあります。

ジュノ・ディアス講義、これがかなりの長さで、約百枚分ありまして、かなり詰め込みました。それでも三段組み20頁という長さで、訳書の割注をつくった岡和田晃本人による精読が生かされた講義になっています。『マトリックス』につけた注のくだりなど、非常に面白く、オスカーワオ読者はこれだけのために買ってもいいんじゃないかな、と思うくらい。文字起こしを担当された柳剛麻澄さん、ありがとうございました。

中村うさぎを読む

第二特集、中村うさぎ二階堂奥歯特集で意外な方面に読まれたことに手応えを感じたことで企画されたこの特集、佐伯さんと岡和田さん、そして私による鼎談を巻頭に、書籍レビューや佐伯さん、倉数茂さんのエッセイで構成され、小特集くらいを考えていたのに結果的にかなり厚みのあるものになりました。なんといっても、二十年来の読者だという岡和田さんによる、鼎談での整理が非常に上手い。そこに、幻視社唯一の女性佐伯さんの見方を聞いていく形になります。佐伯さんの鼎談での発言とエッセイの体験は、女性にとって中村うさぎはどんな風に見えているのか、の貴重な証言となっています。

ゲームライター、ジュヴナイル(ライトノベル)作家、買い物依存症エッセイ、そして整形、デリヘル体験等々、特異なエッセイストとして知られる彼女の履歴をたどっていく企画となっています。倉数さんによる論考は、エッセイというか、時代性とからめて「依存症」ということを考察する試論になっていて、包括的な、歴史的視点を特集に持ち込んでくれています。倉数さんは批評家として二十年のキャリアがあり、いやはや、さすがというしかないです。

私もこれをきっかけにはじめて中村うさぎを読んだのですけれど、いやはや、面白い人です。『ゴクドー君漫遊記』は読んだことなかったのですけれど、これも含めていろいろ他にも読んでみたいと思いました。買い物エッセイの初発のものを読んだのですけれど、これが本当にどうかしているとしか思えないありさまで、貧乏人としては世界が隔絶しすぎていて、もうなんともいえない。カーテンに75万とか正気とは思えない。霊感商法の商品を、値切って買って消費者センターに驚かれる(値切る度胸はあるのになぜ断ることが出来ないのか、という)話が好きです(著者の変さがよく出ている)。

向井豊昭

未発表遺稿、七十枚の「骨の中のモノローグ」および、岡和田さんによる解説と、新たに見つかった作品のリストです。

「骨の中のモノローグ」は、戦時下の疎開生活、父の死、母の苦労などが、大森貝塚の話にサンドイッチされる構成。「国民学校落第生」とも重なる戦時下向井少年の話です。戦時下ということがますます気になる最近、これも微妙な気分のなかで読みました。

以上、本文124ページ、表紙入れて128ページ、しかも今回は鼎談、講義録と三段組みで詰め込んだ記事が増えたため、前号にくらべ一割以上の増ページとなり、総計174000字ほどとなりました。過去最高の文字数です。前号は150000くらいだったはず。よろしくお願いします。