共著『現代北海道文学論』が刊行されました

現代北海道文学論 来るべき「惑星思考」に向けての通販/岡和田 晃/岡和田 晃 - 小説:honto本の通販ストア
JRC一手扱い― 藤田印刷エクセレントブックス
これを書いてるのは2020年の五月も末ですけど、告知記事を作ってなかったので。

岡和田晃編著、『現代北海道文学論』が藤田印刷エクセレントブックスから刊行されました。これは『北の想像力』を受けてその執筆メンバーをメインにした書き手らによって、北海道新聞に2015年から2017年まで連載されていたものをその後の付記と完結記念イベントの採録、その他の関連原稿をまとめて一冊にしたものです。

私は笠井清論と山下澄人論の二章で参加しております。当時の告知は以下。
北海道新聞に笠井清論を書きました。 - Close To The Wall
北海道新聞「現代北海道文学論」に山下澄人論が掲載されました - Close To The Wall

各人各様のアプローチでさまざまな作品を論じており、新聞原稿がもとなので分量も含めて読みやすい物になっていると思います。目次を見てもわかるように多彩な作家作品のガイドになっています。2020年に直木賞を受賞した川越宗一『熱源』を2019年時点で論じた原稿もあったり。

執筆陣は私や編者岡和田晃のほか、渡邊利道、石和義之、宮野由梨香、倉数茂、田中里尚、松本寛大、横道仁志、藤元登四郎、三浦祐嗣、藤元直樹、巽孝之、高槻真樹、齋藤一、丹菊逸治、川村湊、河﨑秋子の各氏となります。詳細な目次も転記しておきます。以下の記事では正誤表もあります。
『現代北海道文学論 ~来るべき「惑星思考(プラネタリティ)」に向けて~』(藤田印刷エクセレントブックス)が発売 - Flying to Wake Island 岡和田晃公式サイト(新)

●はじめに
●第一部 「北海道文学」を中央・世界・映像へつなぐ
・「惑星思考(プラネタリティ)」で風土性問い直す時/岡和田晃
円城塔――事実から虚構へダイナミックな反転/渡邊利道
・山田航――平成歌人の感性の古層に潜む「昭和」/石和義之
池澤夏樹――始原を見つめる問題意識/宮野由梨香
桜木紫乃――「ごくふつう」の生 肯定する優しさ/渡邊利道
村上春樹――カタストロフの予感寓意的に描く/倉数茂
佐藤泰志――「光の粒」が見せる人の心の揺らぎ/忍澤勉
外岡秀俊――啄木短歌の言葉の質 考え抜き/田中里尚
朝倉かすみ――故郷舞台に折り重なる過去と現在/渡邊利道
山中恒――小樽で見た戦争 自由の尊さ知る。松本寛大
桐野夏生――喪失の果て 剝き出しで生きていく/倉数茂
桜庭一樹――孤立と漂流流氷の海をめぐる想像力のせめぎ合い/横道仁志
●第二部 「世界文学」としての北海道SF・ミステリ・演劇
・河﨑秋子――北海道文学の伝統とモダニズム交錯/岡和田晃
山下澄人――富良野倉本聰 原点への返歌/東條慎生
今日泊亜蘭――アナキズム精神で語る反逆の風土/岡和田晃藤元登四郎
荒巻義雄――夢を見つめ未知の世界へ脱出/藤元登四郎
「コア」――全国で存在感 SFファンジンの源流/三浦祐嗣
露伴札幌農学校――人工現実の実験場/藤元直樹
佐々木譲――榎本武揚の夢 「共和国」の思想/忍澤勉
平石貴樹――漂泊者が見た「日本の夢」と限界/巽孝之
高城高――バブル崩壊直視 現代に問いかける/松本寛大
柄刀一――無意味な死に本格ミステリで抵抗/田中里尚
●第三部 叙述を突き詰め、風土を相対化――「先住民族の空間」へ
渡辺一史――「北」の多面体的な肖像を再構成/高槻真樹
小笠原賢二――戦後の記憶呼び起こし時代に抵抗/石和義之
清水博子――生々しく風土を裏返す緻密な描写/田中里尚
・「ろーとるれん」――「惑星思考」の先駆たる文学運動/岡和田晃
・笠井清――プロレタリア詩人 「冬」への反抗/東條慎生
・松尾真由美――恋愛詩越え紡がれる対話の言葉/石和義之
・林美脉子――身体と風土拡張する宇宙論的サーガ/岡和田晃
柳瀬尚紀――地名で世界と結び合う翻訳の可能性/齋藤一
アイヌ口承文学研究――「伝統的世界観」にもとづいて/丹菊逸治
樺太アイヌ、ウイルタ、ニヴフ――継承する「先住民族の空間」/丹菊逸治
・「内なる植民地主義」超越し次の一歩を/岡和田晃
●連載「現代北海道文学論」を終えて/岡和田晃×川村湊
●補遺「現代北海道文学論」補遺――二〇一八〜一九年の「北海道文学」
・伊藤瑞彦『赤いオーロラの街で』(ハヤカワ文庫、二〇一七年)――大規模停電の起きた世界、知床を舞台に生き方を問い直す/松本寛大
馳星周『帰らずの海』(徳間書店、二〇一四年)――時代に翻弄されながら生きる函館の人々/松本寛大 
高城高『〈ミリオンカ〉の女』(寿郎社、二〇一八年)――一九世紀末のウラジオストク、裏町に生きる日本人元娼婦/松本寛大
・八木圭一『北海道オーロラ町の事件簿』(宝島社文庫、二〇一八年)――高齢化、過疎化の進む十勝で町おこしに取り組む若者たち/松本寛大
・『デュラスのいた風景 笠井美希遺稿集』(七月堂、二〇一八年)――植民地的な環境から女性性を引き離す/岡和田晃
・須田茂『近現代アイヌ文学史論』(寿郎社、二〇一八年)――黙殺された抵抗の文学を今に伝える/岡和田晃
・麻生直子『端境の海』(思潮社、二〇一八年)――植民地の「空隙」を埋める/岡和田晃
・『骨踊り 向井豊昭小説選』(幻戯書房、二〇一九年)――人種、時代、地域の隔絶を超える/河﨑秋子
・天草季紅『ユーカラ邂逅』(新評論、二〇一八年)――〈死〉を内包した北方性から/岡和田晃
・「惑星思考」という民衆史――『凍てつく太陽』(幻冬舎)、『ゴールデンカムイ』(集英社)、『熱源』(文藝春秋)、『ミライミライ』(新潮社)/岡和田晃
●あとがき

詳しくは岡和田さんの以下のツリーをクリックしてもらう方が早いかも知れません。


ついでに『物語・北海道文学盛衰史』1967年、まだ河出書房が新社じゃなかったときの本と、『現代北海道文学論』2019年、藤田印刷エクセレントブックス。カバーデザインもこの52年前のものを踏まえてたりするのかな。