Flairck - Gevecht met de Engel


アコースティックトラッドバンド、フレアーク2ndアルバム。1980作。ボックスセット「Oeuvre」二枚目。バイオリンをSylvia Houtzagerに交代。Altavista翻訳による直訳、「Fighting with the Angel」。やけに物騒だな。

本作では音楽性はそのままにクオリティを非常に高めた感がある。旋律の叙情性、演奏の緊張感が渾然となった高密度の音楽は相変わらずだが、表現力豊かなメロディが惜しげもなく繰り出される矢継ぎ早な展開が増え、前作に多かった音数の少なくメロディもはっきりしない静かな部分を切りつめている。

そのため、退屈を誘いがちな部分が少なくなり、より聴きやすさと親しみやすさを増した本作は、万人に勧められる名盤と思う。ただし、セカンド単体では入手困難。初期のスタジオ盤三枚が2枚組CDになったものが存在しているようだけれど、専門店とかにでも行かない限り見つからないかと。

1.Oost-West Express(East-West Express) 前作の「Voorspel In Sofia」に並ぶ代表曲。いきなりアコギとベースによるリズムが走り出し、フルートとバイオリンによる主旋律のリフレイン。このメロディがまたすばらしい。トラッドな叙情とドライブ感にあふれ、非常に印象的。中間部では悲しげなフルートのメロディとアコギがかき鳴らされる。終盤また主旋律がリプライズし、どんどんスピードを上げていくユーモラスな幕。ここらへん、まさにトラッドという感じ。

2.De Vlinder(The Butterfly)シタールによるイントロ、ハープも参加し、中近東のイメージを強調し、リードは何の楽器だろうか。中盤にバイオリンのスリリングな速弾き、そしてフルートとバイオリンのユニゾンによる演奏。終盤で主旋律がリプライズする展開は非常にドラマティック。

3.Voor Antionette(For Antionette) タイトル通り、アコギによる優美な小曲。

4.De Stoomwals(The Steam Rolling Mill) 序盤フルートのみによる素朴なメロディ。しかしすぐに激しいバンドアンサンブルによって変奏され、スリリングな展開。中間部を挾んで後半ではまた激しいパートに移行するが、その直後にまた素朴なメロディが現れる。笛の音はフルートよりも音の高いものだろうか。これもまたドラマティックな展開を持ったプログレチックな曲。

5-8.Gevecht met de Engel deel 1-3(Fighting with the Angel Part1-3) B面は三つのパートに分かれたタイトル組曲。ちょっとスパニッシュないきなりのアッパーなオープニングから緩やかなフルートによるトラッドに展開したり、めまぐるしく展開が変わり演奏も白熱しているのだけれど、叙情的なトラッドメロディがつねに生きている。パート2ではより叙情的なスローテンポの演奏が多くなり、それを引き継ぐパート3では中盤を過ぎて、いよいよ激しくハイテンポになって、ラストではまた印象的なメロディが盛り上がって終わる。


余談だが、こういったトラッド系のワールドミュージックを聴いていると、RPGゲームなどで耳にした様々なBGMがふと、頭に蘇ってくる。祭りを前にした村などで、こういう音楽が鳴っていたという記憶がある。まあ、話は逆で、こうしたワールドミュージックを取り入れたのがゲーム音楽なのだけれど(世界を旅するゲームでは雰囲気作りのためにワールドミュージック的な音楽知識が必須なのだろう)、だから、この手の音楽はゲーム音楽好きにアピールするはずだと思う。

私なんかはフルートによるトラッドなメロディというと、FF6の世界崩壊後のBGMが非常に好きで、あの物悲しい旋律は忘れられない。ああいう曲が好きなら、フレアークの音楽などにも馴染めるんではないかと思う。

ただ、聴く人によっては演奏のテンションが高すぎて、もっとゆっくりやれ、と思う人もいるかも知れないんだけれど。