- アーティスト: Gong
- 出版社/メーカー: Blue Plate Caroline
- 発売日: 1990/07/23
- メディア: CD
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前作以降、メンバーが大胆に再編され、ピエール、ベノワのムーラン兄弟、ミレーユ・バウアーを引き継ぎ、ベースがハンスフォード・ロウ(この人は後々までグループのベースを担当することになる)に交代、四人編成のバンドなる。結果、ドラム、パーカッションのピエール、ヴィブラフォン、マリンバのベノワ、マリンバ、ヴィブラフォンのバウアー、ベースのロウ、と鍵盤打楽器二人にリズム隊の、リズム楽器奏者オンリーがメンバーという、まれに見る特異な編成となった。曲によっては三人が鍵盤打楽器を演奏していることもある。
そのほかに、前作に続き、アラン・ホールズワース、ミック・テイラー、ボン・ロザガ(この人もロウと同じくムーランズ・ゴングのメンバー)がギターで、カーヴド・エアのダリル・ウェイがバイオリンで、そしてフランシス・コーズがコンガ、パーカッションでゲスト参加。
前作「ガズーズ(US盤ではExpresso)」に続く今作では前作で確立したパーカスフュージョン(そんなものがゴング以外にあるかどうかは知らないが)として、さらにパーカッションを前面に押し出した作風となっていて、よりリズミカルで軽快な演奏となっているように思う。ソロ楽器が前面に出ていた前作では、メインストリームよりのフュージョン的な感触が強く、ホールズワースにバンドが食われかけていた印象もあったが、今作ではより鍵盤打楽器群の活躍ぶりが鮮やかで、ヴァイブ等がソロを取る機会も多くなっている。
前作と並ぶムーランズ・ゴングの代表作。
1.Hevy Tune ベースが重くうねるイントロに、ヘヴィなホールズワースリズムギターが乗り、ミック・テイラーがソロを取る、タイトル通りの重い曲展開だが、途中でヴァイブが軽快なメロディを刻み、ユーモラスな表情を加えている。中盤以降はテイラーのソロ。
2.Golden Dilemma ライブでも拡張されて演奏されていたハードさ、スピード感では随一のムーランズ・ゴングの代表作。鍵盤打楽器群やコンガ等のパーカッションが活躍するリズミカルでスピーディなドライヴを見せつける導入部はすばらしい。始終鍵盤打楽器が活躍し、ソロイストは後半に出てくるのみ。本メンバーだけでも魅力的な楽曲を構築できる(むしろ本メンバーだけのほうが、と私は思うが)ことを示す。
3.Sleepy リバーブの効いたヴィブラフォンがタイトル通りの印象を残すミドルテンポの曲。ダリル・ウェイのなめらかなバイオリンが効果的に響く。リズムセクションがまたトリッキーなプレイをするのが聴き物だ。中間部での効果音みたいな妙な音のギターはホールズワースだろう。後半ではロウのベースをリードとして、バイオリンがテンションの高いソロ。ラストはおとなしめなホールズワースのギター。
4.Soli これもライブでの定番。ロウのベースとヴァイブが競いあうような序盤のハイテンションな演奏が聴きどころ。つづいてベノワのヴァイブがソロを取るのが個人的にはうれしい。ツインヴァイブのデュオも聴ける。その次にはホールズワースのギターの登場。ギターのバックでもきちんとツインヴァイブがリフを刻んでいる。その後ヴァイブとギターが入れ替わるようにソロを回しあうムーランズ・ゴングならではの魅力的な構成。最後は序盤のフレーズが戻って終了。ヴァイブとギターのソロが堪能できる名演。
5.Boring ミステリアスなヴァイブとマリンバの響きのなかを、バイオリンがクラシカルな美しいソロを取る。中盤になるとパーカッションが大々的にリズムを刻みはじめ、バイオリンはよりアップテンポでテンションの高い演奏。ウェイのバイオリンが多彩に活躍する佳曲。
6.Three Blind Mice 三匹の盲目のネズミ、というタイトル通り、小気味よい鍵盤打楽器が演奏をリードする、軽快でユーモラスな佳曲。ホールズワースのウネるギターも出てくるが、やはり主役は鍵盤打楽器群だろう。中盤でのヴァイブとマリンバが緻密に絡むパートが良い。またもコンガが出てきてラテンなリズムを聴かせたかと思うと、ラストではここぞとばかりに走り回るネズミを思わせる甲高く小刻みなフレーズを刻むマリンバが活躍して、一気に終わる。
ホールズワースの活躍が前作にくらべ減っていることから、多少評価が低めになっている本作だが、パーカスフュージョンとしての鍵盤打楽器の活躍からすればむしろこちらが代表作だろう。甲乙つけがたい出来ではあるので、前作共々聴いて欲しい作品だ。
次作でピエール・ムーランはアリスタに移籍し、バンド名をピエール・ムーランズ・ゴングとして活動を始める。その時期のものについては以前に記事を書いたので乞うご参照。