林英哲 - かえりなむ、いざ

かへりなむ,いざ

かへりなむ,いざ

一噌幸弘グループに引き続き現代ジャパニーズ・トラッドシリーズ。日本の和太鼓奏者のソロアルバム、1993年リリース。英題「Back to the Eternal Land」

この人は初の和太鼓ソリストらしく、活動も三十年に渡る。「鬼太鼓座」、「鼓童」といった国際的太鼓集団に関わった後、独立しソロ活動を開始している。これはソロディスコグラフィとしては初期のもので、他にもジャズミュージシャンやオーケストラとの共演などもあり、海外での活動も盛んだ。

そしてこれには前回取り上げた一噌幸弘や、ミジンコ研究でも有名なサックス奏者坂田明らがゲスト参加している。

編成は和太鼓を基調に、サックス、田楽笛、シンセ、ベースなどが加わる。さらに、ジャンベ、タマというセネガルトーキングドラムなどといった楽器を演奏する外国人奏者までが加わり、伝統音楽の枠にとらわれない国際色豊かな音だ。

1. 太鼓伝
これは、和太鼓のみによる演奏。多数の太鼓が鳴っているけれど林の多重録音なのだろうか。オープニングらしい導入で、独特のリズム感が面白い。
2. 犀太郎がゆく
フリーなサックスがなぜかとても祭囃子の演奏のように聞こえる。太鼓以外にも、ジャンベなどのパーカッションが加わり、聴き慣れたようでいてそうではない、という独特の印象。和太鼓のドコン、と響く低音が心地よい。
3. 河内楽士
太鼓のリズムのうえを、シンセの楽しげなフレーズが踊るいかにもお祭り気分な一曲。ユーモラスな曲調だ。
4. 大地へ
和太鼓、ジャンベ、タマのパーカッション部隊によるリズムアンサンブル。ヘヴィ。タマ、ジャンベの二人は、セネガルのシンガー、ユッスー・ンドゥールのバンド、シュペール・エトワール・デ・ダカールのメンバーとのこと。
5. 重金魂
太鼓、パーカッションによる演奏。
6. 山下りの花道
このアルバムのハイライト。和太鼓に、アフリカンなリズム二人が加わり、そこにいかにも祭囃子な一噌幸弘の笛が奏でられる。途中、一噌のいつもの過剰な速吹きが混じりだす。そのあとを坂田明のサックスがソロをとる。そのあとはリズム隊と管楽器隊とが対話的に演奏を繰り返していく。青森県岩木山の下山囃子をモチーフにしたという。
7. 錦江湾波風囃子
これにはもう一人の和太鼓奏者がクレジットされているけれど、これ二人だけ、ではないと思うんだけれど。太鼓にパーカッションも交えた打楽器アンサンブル。なぜか楽しくなってきてしまう音だ。
8. 遥かな犀太郎
和太鼓、ジャンベ、タマの打楽器隊に、ベースを交えたリズム隊による演奏。独特のフレーズのベースにアフリカンなリズムと太鼓が絡まり、サックスが加わる。

というわけで、とにもかくにも太鼓、のアルバム。ジャパニーズ・トラッド・グルーヴとアフリカンリズムの融合プラスジャズという多国籍音楽ぶりを発揮している。林英哲は他にもさまざまな試みをしており、オーケストラとも太鼓協奏曲を録音したりしている模様。

この人、宇崎竜童の竜童組に参加している。以下の曲では太鼓ソロを披露している。

ていうか、このバンドすげえ。ブラスに太鼓にヴァイオリンにハープと、とにかく大人数。ほとんど脈絡を感じられないカオスな楽器編成(真ん中のドラム、なんつったか)だ。宇崎竜童は後に和風ハードロックバンド六三四(アニメNARUTOの音楽も担当してた)をプロデュースしているのだけれど、こういう趣向の人なのね。港のヨーコのイメージしかなかったけれど。
で、下のはクラシック系ということになるか。

ティンパニと和太鼓のデュオ。

以下、公式サイトとインタビュー。
林 英哲 オフィシャルサイト
「日経WagaMaga」終了のお知らせ