- アーティスト: ピエール・モエルランズ・ゴング
- 出版社/メーカー: インディペンデントレーベル
- 発売日: 2005/10/25
- メディア: CD
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これ以前に、「Second Wind」と「Breakthrough」というアルバムがでているものの、両者ともにかなりの入手困難アイテムになっていて、Amazonの中古で万単位の値段が付いている。
ムーランズ・ゴングとはいっても、アリスタ時代のメンバーはほとんどがゴングジラの方で活動していたため*1か、今作ではロシアで現地のミュージシャンたちとレコーディングされている。アリスタを離れてからの二作でも、スウェーデンのプログレバンドTribute*2に参加した縁で、そのメンバーと録音したりしていてメンバーは固定せず、バンドはほとんどムーランのソロプロジェクトとなっている。
で、前に紹介したゴングジラのアルバムがギターを前面に出したヘヴィなフュージョンに傾いていて私は不満だったが、今作では鍵盤打楽器が主導する軽快でリズミカルな演奏が楽しめる秀作に仕上がっている。Virgin時代の密度の高さにはさすがに及ばないが、ムーランズ・ゴング好きなら聞き逃せない一作だ。
やはり、コンポーザーとしてのムーランがいないと面白くないんだなというのがわかった。鍵盤打楽器やドラム、パーカッションを生かした楽曲構成の面白さはあまりゴングジラには感じられなかったので、そこらへんのセンスはムーランが一手に引き受けていたのだろう。やはり、ムーランズ・ゴングの面白さはパーカッション奏者のリーダーアルバムという点にあるんだと思う。
以下各曲
1.Flyin' High
サウンドスケイプ。これと七曲目がサウンドスケイプとなっていて、それ以外は全てムーラン作曲。ミハイル・オゴロドフ(?)という今作でキーボードのみならずドラム、パーカッション、リコーダーといった楽器を担当するが各サウンドスケイプを作曲している。曲名から受ける印象とは異なり、水をイメージさせるような音色が印象的。
2.Airway to Seven
ZEPの曲のもじりみたいなタイトルだが、別に似ているところはない。シンセとギターがリードするフュージョンサウンドにヴァイブが絡み、そこからピアノの演奏のバックでリバーブを効かせたヴァイブが響く。そしてキーボードのソロからフェードアウト。
小手調べな感じの軽快な曲。
3.Pentanine part one
二部に分かれたタイトル曲の1。ヴァイブのリズミカルでミステリアスなバッキングが効果的なミドルテンポの曲調。ミニマム風のバッキングとリコーダーやなんやらの楽器が控えめにソロを取る前半。後半、サウンドエフェクトが響いてフェードアウト。
4.Au Chalet
アンサンブルにヴァイブが効果的に絡むこれまたミニマムミュージック風のリフレインが印象的な曲。中盤のキーボードの変なソロ展開は面白い。
5.Trip a la Mode
ギターとキーボードのユニゾンに、変なタイミングでパーカッションが入るひねったリズムパターンが特徴的。その基本パターンに、様々な楽器が適宜味付けしていくことで楽曲が展開していく。ギターとキーボードのユニゾンは最初っから最後までリフレインしっぱなし。
6.Reminiscence
風のSEをバックに、ヴァイブの変拍子っぽいリフレインから始まる。夜を思わせるアダルトな雰囲気がする。曲が終わると不思議なサウンドスケイプ。
7.Interlude
文字通り、ピアノのインスト。
8.Classique
ヘヴィなリズムとオルガンを軸にした今作では異色の曲。またも後半にサウンドスケイプ。
9.Lacheur
これもキーボードを軸にしたフュージョンサウンド。アナログキーボードのプログレな音が大活躍。これも後半にスペーシーなサウンドスケイプ。
10.Blue Nuit
数曲ぶりに鍵盤打楽器がアンサンブルをリードする。冒頭の展開が一段落したところで入るヴァイブのメロディが非常に綺麗。
11.Pentanine part two
パート2。ヴァイブのミニマムフレーズが軸になっている。二分ほどの小曲。もっと展開して欲しい。
12.Montagnes Russes
これはシロフォン、木琴の軽快なリフレインが導入になっている。この曲ではゲストのトランペット奏者がいる。後半はキーボードのソロをメインにしつつ、トランペットもちょこちょこ音を出す感じ。
13.Troyka
ヴァイブのリフレインフレーズがバックでずっと鳴りつつ、各楽器が少しずつ音を重ねていくいつものパターン。幻想的な雰囲気だ。7曲目以降この曲まで、曲がいったん終わると不可思議なサウンドスケイプが必ず挟まっている。意図が良くつかめない。
今作ではほとんどの曲がミドルテンポの緩やかな曲になっていて、ダイナミックでパワフルでもあったVirgin時代とは結構感じが違う。また、どの曲も鍵盤打楽器をバッキングのリフレインフレーズに用いて幻想的、幻惑的な感じを出すことに使われていて、あまりリード楽器としての特性を発揮してはいない。
アリスタ時代後半の音楽性を継承しているサウンドだという感じだ。
秀作ではあるが、物足りなさもあるのは事実。しかし、ピエール・ムーランは新作の制作に取りかかっていて、なかなかの手応えを感じていた矢先の急逝というのだからたまらない。惜しい人を亡くしたものだと思う。
ライブや未発表音源の発掘をすすめて欲しい。
*1:というか、ゴングジラは元々ムーランズ・ゴングとして再結成する予定だったのが、ピエール・ムーランが不参加のためにああいう形になった
*2:Mike Oldfieldの影響を受けたバンドらしいのだけれど、これまた作品が入手困難で私は未聴