アーカイブの更新報告欄になりかけていたので、ざっとメモ。書こうとしたことを忘れるくらい前に読んだものばかりだ。
今泉忠義 - 源氏物語 全現代語訳
源氏物語 1―全現代語訳 桐壺・帚木・空蝉 (講談社学術文庫 216)
- 作者: 今泉忠義
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1978/01
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面白い、というか興味を惹かれたのはいわゆる宇治十帖の部分で、ここは男の都合で追いつめられる浮舟が悲惨ですっごい気持ちの悪い展開になるんだけれど、そこのところが翻って源氏物語全体に対する批判的応答に見える。感触が質的に違う。作者別人説があるというのも肯ける。
学術文庫版は学者による丁寧でオーソドックスな訳、という感じで現代語訳のなかではあまり目立つものではないけれども、悪くはないと思う。それでも込み入った敬語表現が読み慣れないなあ。角川与謝野訳の方が読みやすい感じはしたけれど、そっちは歌の語釈がない点で不親切か。これを選んだのは一冊一冊が短くて区切りがいいからだったりする。新版では合本にして分厚くなっているけど、これは古書でまとめて三千円くらいだったのでよかった。
アントニオ・タブッキ - 夢のなかの夢
- 作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,和田忠彦
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 1997/12
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ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ - 千のプラトー 資本主義と分裂症(上)
コレは凄い。圧倒的に訳が分からない。笙野関連本として月一冊で読んでいこうと思ったけど、上巻読了にすんごい難儀したので続きはやめた。辛うじて面白く読めたのは「言語学の公準」でのマイナー言語について語っている所ぐらい。ここは議論の基本的な部分を既に知っていたからか、なんとかついていける。あとはだいたいわからなかった。すげえな、ドゥルーズ=ガタリ。どういう教養と蓄積と知性があればこれが読みこなせるのかが見当つかない。米澤穂信 - 遠まわりする雛 ふたりの距離の概算
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
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- 作者: 米澤穂信
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「概算」の方は、マラソン大会中に謎を解かなければならない、というような芝居がかった舞台設定を使って謎を解いたら、やたらに生々しい身近な悩みにたどり着く、というのが面白い。「距離」って、そういうあれか。というか、第一作はともかく、古典部シリーズはだいたい大掛かりな仕掛けを使って、ものすごく日常的なところに持っていくのが特徴か。いや、日常の謎系統のミステリがそういうもんなのかな。
船戸与一 - 蝦夷地別件
- 作者: 船戸与一
- 出版社/メーカー: 新潮社
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そういう意味でまあ面白いとはいっていいんだけど、やたら長いしややファンタジーな剣の達人は出てくるしオチの付け方が無理矢理な感もあり、微妙なところも多い。調べは丹念だけれど小説としてはそんなに好きではない。かと思えば巻末の『砂のクロニクル』のあらすじが本作と固有名詞を入れ替えただけに思えるくらいそっくりだった。大国に抑圧される少数民族の蜂起を好んで扱うせいか、あらすじレベルだと見分けがつかない。
なぜか最近小学館文庫から出直している。
マイクル・コナリー - ナイトホークス
- 作者: マイクルコナリー,Michael Connelly,古沢嘉通
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レイ・ブラッドベリ - 火星年代記
- 作者: レイ・ブラッドベリ,小笠原豊樹
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上田早夕里 - リリエンタールの末裔
- 作者: 上田早夕里,中村豪志
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林譲治 - ウロボロスの波動
- 作者: 林譲治
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野尻抱介 - 太陽の簒奪者 沈黙のフライバイ
- 作者: 野尻抱介
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- 作者: 野尻抱介
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篠田節子 - 絹の変容
- 作者: 篠田節子
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中里十 - どろぼうの名人
- 作者: 中里十,しめ子
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北野勇作 - かめくん
- 作者: 北野勇作,前田真宏
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田中ロミオ - 人類は衰退しました
- 作者: 田中ロミオ,戸部淑
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アニメが岸誠二、飯田里樹、上江洲誠という「瀬戸の花嫁」や「天体戦士サンレッド」スタッフによる作品ということで見てみたら、一話、二話の素晴らしい出来にはまって、四話が終わったあたりで原作既刊七巻を全て読み終えた。
原作は人類が衰退した数百年未来を舞台に、超科学力を持つものの思考回路が幼児に近く、蓄積というものを知らない妖精さんというファンタジックな存在との交流が巻き起こすドタバタを描いた、メルヘンの装いをまとっているすこし(かなり?)不思議系ブラックユーモアスラップスティックSFという感じだ。随所に本気SF要素を投入してくるあたりあなどれない。
孫ちゃんこと「わたし」という名称未設定(人間だけは固有名詞を持たない)の語り手のあけすけに打算的なキャラクターと語りがとても楽しい。イラストは戸部淑で、十年前から知っている人なのにこの人の絵のラノベを買うのは初めてだ。戸部さんのイラストはいいですね。原作はアニメに比べてもうちょっと大人びた感じで、こちらの方が原作設定には近いかなと思う。
アニメでは結構端折られているシーンもあり、特に原作第三巻の「おさとがえり」編は一冊の内容を二話で構成したため無理がたたっていると思うので、これは原作をあたってほしいところ。他の話は概ねよく、特にアニメで一番最初のエピソードは音楽演出の嵌り具合が素晴らしかった。ドアが開く時コンビニの入店音だったのは、守銭奴キャラが話す時は常に小銭のSEを鳴らしていた飯田里樹音響監督の仕掛けだろうか。
「ひょうりゅうせいかつ」ではある場面で、ここをアニメにしたら確実に村瀬克輝さんが出てくる、と思ったシーンがあって、それはアニメではカットされてたなあ。アニメは主演の中原麻衣はじめ、妖精さんの台詞など、声がつくと非常にインパクトが強くていい。特に主役で語り手の中原麻衣はつねに喋りっぱなしだけれど緩急があって台詞のセンスとあいまって聞いていて気持ちいい。
OPでは岸誠二得意の腰振りダンス作画がTVアニメでは久しぶりに見られて、しかもそれが作品の狂気を自然に滲ませていて面白いし、EDは「あずまんが大王」OP「空耳ケーキ」のメルヘンさとポップさとエキセントリックさが同居する感覚でこれはと思ったら、上野洋子こそいないものの、その相方だった伊藤真澄の曲で、これがビジュアル共々素晴らしい。