日本近現代史を読んだり

(25日追記・改訂)

大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書)

大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書)

岩波新書の日本近現代史シリーズを四冊目まで読む。私は歴史がかなりダメなので、最近いくつか日本史の通史ものに目を通しているけれど、やはり歴史ものはテーマを絞ったものならともかく、通史的な叙述はどうしても情報の羅列に見えて頭に入ってこない。冷静で客観的であるほど、歴史叙述からわかりやすい物語性がなくなるんだろうと思うので、文句も言っていられないが。

その点、ネット右翼といえばいいのかレイシストといえばいいのか、そういう連中の歴史観は非常にわかりやすい物語性を持つので、感染しやすいのだろう。最近歴史ものに目を通しているのは、そういったネット右翼のデマを直感的に判別するための常識を身につけられるようにという意味もある。元々は笙野頼子の小説を読んでいて「近代」に興味を持ったからだが。やはり、「近代」はいまある現実の状況の下地だなあというのはしきりに思うので、この時代について考えるのは面白い。

近現代史となると、黒船来航をきっかけにした欧米諸国との関係がはじまり、アジア諸国との関係が大きな変化を被るわけで、そこらへんが重要なんだろう。しかし、岸田秀は日本は黒船によってレイプされた、という表現をしていたと思うが、この比喩はやはり問題がある。日本は確かに黒船以降の欧米諸国と不平等条約を結ばされ、否応なく近代化への道を邁進するわけだけれども、近代化をある程度進めていくなかで、朝鮮半島や中国大陸への進出を始め、不平等条約を今度は朝鮮、中国に対して結ばせることになる。

岸田の比喩に倣い、こういう言い方が許されるならば、欧米諸国の「近代」の被害者である日本は、同時にアジア諸国への加害者となったわけで、言ってみれば体育会系の部活での上下関係に近い物があると思う。先輩にやられたことはそのまま後輩にやり返すという。

日清戦争閔妃暗殺とかいろいろあって、植民地時代には朝鮮の民族自決運動、三・一運動の弾圧によって七千人の死者と一万数千人の負傷者を出すわけで、これで朝鮮に恨まれないわけがない。

この巻では植民地政策にそれなりの頁が割かれていて、植民地の人びとに対する軽侮や差別待遇、独立運動の武力鎮圧などが記述される。また、朝鮮を日本の食料庫とするために行った増産計画によって、米が日本に輸出され、現地の人びとは米が食べられなくなるという羽目に陥ったりしている。そして地主に有利な耕地整理で土地を奪われ生活できなくなった人びとは日本に渡っていく。関東大震災で虐殺された朝鮮人たちというのはそれでやってきた人たちだろう。

この時代、日本は資本主義というか帝国主義というか、欧米列強と一緒になって植民地獲得競争をしていたわけで、最近小学校でDVDを使って教えていたという、太平洋戦争をアジアを列強から開放しようとしていた正義の戦争だったなどという話は、流石に無理がありすぎる。

で、資本主義とか産業革命とか国民統合とかいろいろな問題が「近代」を軸にしているわけで、では「近代」とは何か、そして「日本の近代」はどんなものだったのか、ということが気になってくる。

普通選挙治安維持法の1925年体制の確立でこの巻は終わり、次の巻は満州事変から始まる。