The Yardbirds - Having a Rave Up

ヤードバーズ - Wikipedia

ヤードバーズ、といえば、とロックファンには説明するまでもなくクラプトン、ベック、ペイジのいわゆる三大ギタリストの居たバンド。あるいはプログレファンなら、アニー・ハズラムが参加するまえのオリジナルRenaissanceを立ち上げ、妹のジェーンとともに活動したものの感電事故で死亡したキース・レルフの居たバンド、として知っている人も多いだろう。

まあ、いろいろな形でヤードバーズに興味を持つ人がいるだろうけれど、私は前に書いたベック・ボガート&アピスでベックに関心があったため、ヤードバーズを聴いてみた。最初はレンタルで「Five Live Yardbirds」から聴いてみたのだけれど、音も悪いし全曲カバーという楽曲はあまり好みではなく、最初の「モンキー・ビジネス」が結構良かった以外は、キースのブルースハープ、というかハーモニカがなかなかすごいこと以外にはあまり印象に残らない。この時期のバンドはやはりブルース由来のためなのか、ハープがリード楽器として活躍することが多く、ギタリスト花形時代を経てギター=ロックという認識がある私などはそこに時代を感じる。

じゃあベック時代は、と思って中古の今作を買ったところ(本当はロジャー・ジ・エンジニアを聴こうと思っていた)、これがかなり良い感触だった。まず楽曲、歌が良いのが多く、またギターが多くリードを取るようになっていてインストもギターを生かしたものがあり聴き応えがある。これは良い作品です。

じつはこのアルバムは英国でのオリジナルアルバムではなく、アメリカで発売された独自の編集盤。当時のバンドはビートルズがそうであるように、シングルとアルバムを別扱いとして、ヒットしたシングルでもアルバムに入れないことが多かった。ストーンズでも、「Paint It Black」は英国盤の「Aftermath」には入っておらず、編集されたUS盤のみに収録されている。

で、アルバムに収録されないシングル曲などを集めて編集盤を作るわけで、今作は発売当時、B面を「Five Live Yardbirds」からいくつか曲をセレクトして収録していた。再発にあたり収録曲がかぶるB面をばっさり削除し、シングルやそのB面、デモトラックなどをボーナスとして16曲収録している。

一曲目「Mr. You're a Better Man Than I」はベースとドラムが印象的なイントロに哀しげなヴォーカルが乗り、サビではタイトルを繰り返す。これは髪型、服装、肌の色なんかで相手のことを判断する人間に対して、あんたは俺よりはましさ、と皮肉を言うというプロテストソングとのこと。メロとサビの部分の緩急がついたアレンジが良いし、歌の哀しげな調子がとてもいい。ベックのギターソロも聴ける。一曲目から前作とは全然違う印象を受ける。

二曲目もなかなか良く、三曲目は確か「Five Live Yardbirds」でもやっていた曲の再演。BBAのライブでも聴くことができる、ピキピキ変な音を出すベックのギターが面白い。四曲目は異様に暗い。グレゴリオ聖歌からヒントを得て作った曲らしい。うなるようなバックコーラスが不気味。これがヒットシングルらしい。当時としては斬新だったのだろうか。

五曲目「Heart Full of Soul」はA面のハイライトで、当時の邦題は「ハートせつなく」。イントロのギターがすぐに覚えられるキャッチーさで、パーカッションなどもちょっとエスニックな感じだと思ったら、イントロフレーズをシタールで演奏したバージョンもあり、いわゆるラーガ調の曲とのこと。もともとシタールバージョンが最初に録音されていて、シタールで演奏することを念頭に置いたらしいメロディは、ギターで弾いても充分インドっぽい。

ジョージ・ハリスンシタールを持ち込んでから、当時はいくつかこういう試みが流行っていたみたいだ。ストーンズの「Paint It Black」*1もそうで、この曲を聴いて真っ先に思ったのはストーンズっぽい、ということだった。

六曲目が「Train Kept a Rollin'」。非常に有名な曲で、後のハードロックの起源だとか言われたりしている、ベースとギターのユニゾンリフがヘビー。すごいのは、キースのヴォーカルが2ライン重ねられていて、二つで違う風に歌っているので、ヴォーカルパートはかなりカオスな出来になっている。

ライブ映像

「Shapes of Things」ではフィードバック奏法が聴ける、とライナーにあるけれど、ソロの後ろでハウリングっぽく鳴っている音がそれなのか。この曲は確かジェフ・ベック・グループで再演しているはず。

14曲目は英国盤セカンドアルバムの同名曲の歌無しバージョン。だが、これだけでも充分ギターインストとして聴き物のでき。歌無しでいいのでは。

以下のいくつもの曲が英国盤セカンドアルバムのデモトラックというか、試作バージョンだが、これだけ聴いても結構面白い。

最後の「Stroll On」はアントニオーニ監督の映画「欲望」に出演した際、「Train〜」の歌詞を変えて演奏したもの。ベック・ペイジのツインリードが聴ける三曲のうちの一曲と言うことで貴重な物。元よりヘビーになって再登場。

というわけで、かなり楽しめるアルバム。1と5はかなり好きな曲だ。

*1:
座ってシタールを演奏するブライアン・ジョーンズ。これは格好いい