Songs For Luca

VA - Songs for Luca

VA - Songs for Luca

前回に続きジョアンヌ・ホッグ関連。彼女の本来の活動はIonaなわけだけど、日本ではゼノシリーズのヴォーカリストとして、Ionaのヴォーカリストとして、どちらが有名なのだろうか。

さて、今作はそのIonaの本体とも言えるギタリストDave Bainbridgeのお子さんであるルカの自閉症治療のために制作されたチャリティ盤。アイオナの未発表音源や、各メンバーのソロ、プログレ系、トラッド系またはジャズ系のミュージシャンなどから提供された楽曲によるコンピレーションとなっていて、その参加メンバーの豪華さはちょっとすごい。

メンバーもさることながら、収録された楽曲がどれも秀逸でびっくりする。ロック、プログレな要素は薄めで、トラッド、アコースティックな響きのものがメインだけれど、そのどれもが高水準で、アイオナメンバーそれぞれのミュージシャンとしての力量の高さを知れると同時に、関連人脈にも恵まれたバンドなことが感じられる。

メンバー以外の名前に関しては知らないものも多く、調べてもよくわからない人も多いのだけれど、楽曲のクオリティはどれも高い。

イオナメンバーや、その他ミュージシャンなどへの格好の入門盤でもあるとは思うのだけれど、ここで気に入ったミュージシャンのアルバムなどを探すと、どれも入手困難だったりするので困るのが最大の難点か。

チャリティ盤というと、チャリティに主眼がおかれて内容がおろそかになると思う人もいるかと思うけれど、本作はチャリティということを抜きにしても名コンピレーションといえるほどの内容の充実があり、アイオナファンのみならず、トラッド系音楽ファンも必携の一作だと思う。

楽曲、ミュージシャンリストを日本盤のレーベルのサイトから転載
http://www.mplant.com/iona/disc.html

(CD1)**未発表音源
1. Columba Aspexit (DAVID FITZGERALD)
2. Open Sea (EDEN'S BRIDGE)
3. Sight (TROY DONOCKLEY)
4. In the Wake of Colmcille (DAVE BAINBRIDGE)**
5. Shepherd Wheel (PETER FAIRCLOUGH)  
6. A Kings Prayer (FLOWER KINGS)**
7. Brightest and Best (JONAANE HOGG)
8. For Luca (NICK BEGGS)**
9. The Whistlin' Gypsy Rover (MAE McKENNA)
10. Esther (FRANK VAN ESSEN)**
11. Beijing (IONA)**remix
12. I'll Look for You (JEFF JOHNSON)
13 . Starlit Garden (DEBBIE BAINBRIDGE)**

(CD2)**未発表音源
1. After The Rain (KARNATAKA)
2. Morning Has Broken (RICK WAKEMAN)
3. My Song is Love Unknown(TERL BRYANT)
4. Labyrinth (FRANK VAN ESSEN)**
5. Lament (JULIE TIPPETS)
6. Man (IONA)**日本でのライヴ音源
7. Like Father, Like Son (ADRIAN SNELL)
8. Misty Eyed Adventures (MAIRE BRENNAN)
9. Forever in my Heart (NICK BEGGS)**
10. Aspirations (GENTLE GIANT)
11. Ca' the Ewes (MAE McKENNA)
12. Open My Eyes - Reprise (DAVE BAINBRIDGE & DAVID FITZGERALD)**
13. Bright Flame (DEBBIE BAINBRIDGE)**

ディスク1
1のFitzgeraldは、アイオナ創設メンバーの一人で、デイヴと連名でアルバムを出したりしている。サックスやフルート奏者で、ここではアンビエントな雰囲気のインスト曲となっている。
Breath of Heaven
2のEden's Bridgeケルト系ロック、ポップバンドということで、柔らかい女性ヴォーカルにイーリアンパイプ、フルートが絡むかなり秀逸な一曲。穏和で優しく、メロディアス。アイオナからプログレ、ロック要素を抜いた感じといえばいいか。
Isle of Tides
3はアイオナに欠かせないパイプ奏者トロイの1stソロからの楽曲。ソロとは言っても、トロイが前面に出るわけではなく、ギターやストリングスをからめて空間的な広がりを持たせた穏和な楽曲。
Unseen Stream
4はデイヴのアコギソロ。タイトルが明らかにキング・クリムゾンだけれど、特に似ているわけではない。物語性を感じさせる展開で、叙情的な表現力の高さをうかがわせる。さすが。
5のPETER FAIRCLOUGHはキース・ティペットと共演歴のある、ドラム、パーカッション奏者、でいいのかな。ヴォーカル入りジャズナンバー。トランペットのソロがなかなか激しい。楽曲自体はミディアムテンポなアダルトなもの。アイオナは初期はフュージョン路線だったわけで、この楽曲もなかなか自然に聴ける。
6ご存知現代スウェーデンの代表的プログレバンドフラキンの名曲。これはリバーブ処理などリミックスされており、かつギターソロを取り直したver。
スペース・リヴォルヴァー
7はもちろん、ジョアンヌ・ホッグ。ソロアルバムからの楽曲。アレンジはデイヴとトロイが行っている。幼稚園とかで合唱してそうな、とても楽しげで優しい歌。良い曲です。後半にリズム隊とトロイのパイプがどかんと入ってくる展開はアイオナ風。
Celtic Hymns
8は初代ベースのNICK BEGGSのこのアルバムのために制作された楽曲。この人は元カジャ・グー・グーのメンバーで、また独特のタッチギター、チャップマンスティックの奏者としても知られている。この楽曲はニックがスティックだけで演奏したもので、ベースとギターのデュオみたいに聞こえる。音を歪めたりせず、アンビエントでアコースティックな雰囲気。
9のメイ・マッケンナはフィドル、ホイッスルの入ったケルト系楽曲。この人は私にとってはCamelの「Harbour of Tears」の冒頭で「Irish Air」の素晴らしいアカペラを歌った人として印象深い。アカペラであんなに感動した曲は他にない。それでソロの「ナイトフォーラーズ」を聴いてみたらわりと普通にポップス調であんまり面白くなかったのを覚えている。
Shore to Shore
ハーバー・オブ・ティアーズ(紙ジャケット仕様)
10のフランク・ヴァン・エッセンは現ドラマーにしてヴァイオリン奏者。オランダ人らしい。シンセによるイントロからアコギが出てくるのだけど、ここでアコギが演奏している超有名曲の名前が出てこない。脳内でだいたいを再生できるが曲名がわからない。アコギが終わると、ドラムが入ってヴァイオリンがアコギのメロディを再演する。ドラマティックな展開だ。
11はアイオナの1stからのリミックス。曲名通り、大陸的なメロディが特徴的な曲。前半と後半の対照的なドラマティックな構成、デイヴのギターのセンスはやはりさすが。バックで聞こえるジョアンヌのコーラスがまた凄い。ホイッスルやフルートのトラッドな響きが良い。リミックスでより展開のドラマ性と壮大さが加わった感があり、素晴らしい。聞き比べるとかなり違う。
12、ジェフ・ジョンソン。この人の情報が日本語ではほとんどない。が、曲はよい。穏やかな声のミディアムテンポな歌もの。なお、公式サイトを見てみたら、ベースに現アイオナのフィル・バーカーが参加している。アイオナも取り上げた聖ブレンダンをタイトルに冠したアルバムもある。
http://www.arkmusic.com/music/?id=54&cat=1
Prayers Of Saint Brendan ジャーニー ホーム : Jeff Johnson | HMV&BOOKS online - GECC3806
13のDebbieはたぶんデイヴの奥さん? あるいは親族か。ピアニストらしく、ピアノソロを披露。しめやかにディスク1掉尾を飾る。

ディスク2
1のカルナタカはちょっと前に解散してしまったトラッド系ロックバンド。アイオナほどプログレよりでない。以前ライブ盤を聴いてあまり面白くないと思ったけれど、改めて聴くとこれはなかなか良い。
Delicate Flame of Desire
2はなんとリック・ウェイクマン。アコースティックライブからのピアノソロ。クラシカルならしい曲で、いかにもウェイクマンの良曲。
Simply Acoustic
3は初代ドラマー、タール・ブライアントのソロアルバムからの曲。なんだけど、これ、ジョアンヌ・ホッグのソロアルバムにもアレンジが全然違うけど同じ曲が入っている。これもジョアンヌのヴォーカルに思える。後にジョアンヌがアレンジを変えて自身のソロでカバーしたということだろうか。このバージョンはジョアンヌのソロのとは異なり、ポップさはほとんどなく、中間部のギターソロの茫洋とした感じが印象的。なお、このタール・ブライアントは、レッド・ツェッペリンのベーシスト、ジョン・ポール・ジョーンズのソロアルバム(「The Thunder Theif」)にもニック・ベッグスともども参加している。
Psalm
ASIN:B00005QYL4:image
4もフランクの楽曲。前半はシンセ中心の茫洋としたイントロで、途中からピアノなどのフレーズが入ってくる。そして中盤でパーカッションとともにエスニックなヴァイオリンが切り込んでくる。後半ではやや曲調が変わり、壮大なスケール感から物悲しいメロディに展開していく。エスニックだったりクラシカルだったり、物語性の高いドラマティックな構成など、フランクの楽曲は凄くレベル高い。でもソロアルバムが入手しづらいのが難。
ASIN:9076742332:image
5のJulie Tippettsはまたもやあのキース・ティペットの奥さんとのこと。ここではアカペラでのなんというか、曲名通りの嘆きをやっている。かなりプリミティブな民族音楽っぽい。
6は光田康典フェイヴァリットのアイオナセカンド「ケルズの書」から「Matthew The Man」の東京でのライブ。宗教的荘厳さとアイリッシュトラッド的躍動感とプログレのドラマ性が一体になった名曲。
7はエイドリアン・スネルによるピアノ独奏。この人はかなりキャリアの長いミュージシャンらしく、テレビなどでしばしば演奏しているらしい。デイヴはアイオナ結成前にエイドリアン・スネルのツアーに参加しており、そのとき、フランクと出会っている。フランクがアイオナのドラマーになるのはもっと後だけれど、1stリリース以前はフランクが元々のドラマーだったみたいだ。その意味で、アイオナにとって結構重要な人物。
8モイア・ブレナンはご存知エンヤの姉でアイリッシュロックバンドクラナドのヴォーカリスト。以前アイオナのアルバムにもゲストで参加しており、ちょこちょこ関係がある。ここではマリンバを伴奏にミステリアスなヴォーカルを聴かせる。
Misty Eyed Adventures
9はニック・ベッグスによるスティック演奏。
10ではなんとジェントル・ジャイアントからの楽曲提供。ここではどこか妙ながらもオルガンが印象的な落ち着いた静かな曲を提供している。うまーく溶け込んでる。
Power & Glory
11は再度メイ・マッケンナ。アカペラに自身の声を多重録音したとおぼしきコーラスをかぶせた曲。いかにもトラッドな良い雰囲気。トラッドなマッケンナを聴きたいなら「ナイトフォーラーズ」ではなく「Shore to Shore」を聴くべきなのか。
12はアイオナオリジナルメンバーの二人のデイヴによるインスト。シンセで演出された空気のなかを笛の音色が響く。聖堂でのライブ演奏。
13、デビーのピアノ独奏。しめやかにエンディング。今調べたらこの人、アイオナのいくつかのアルバムにオーボエ奏者として参加してる。