ガストサウンドチーム - イリスのアトリエ グランファンタズム オリジナルサウンドトラック

イリスのアトリエ グランファンタズム オリジナルサウンドトラック

イリスのアトリエ グランファンタズム オリジナルサウンドトラック

引き続き民族音楽ゲーム音楽は、アトリエシリーズで有名なガストのゲーム、「イリスのアトリエ グランファンタズム」のサウンドトラック。ガスト作品の楽曲が評判がいいのは聞いていたので、何かしら聴いてみようと思ってこれを買ってみたところかなり素晴らしい作品だった。

民族音楽風の笛の音を多用した編曲がツボなうえ、印象に残るメロディラインを作るセンスもずば抜けている。さらに凄いのは、各楽曲に大抵はもう一段階の盛り上がりを用意していて、楽曲に起伏があることだ。のんびりとした曲調かと思えば、サビの部分でどっと曲を展開して盛り上げたり、はっとするメロディが差し挟まれたり、二分少々の長さのなかに惜しみなくメロディを詰め込んでいて飽きさせない。音色などの楽器の選択、印象的なメロディの多さ、そして楽曲ごとの展開力の高さ、この三点のレベルの高さが今作の凄さ。

どれもこれもが印象的で、それが総計65曲のあいだずっと続いていくあたりは驚異的なクオリティといえる。メロディ重視の曲作りはファルコムサウンドを思わせ、しかしあれほど「クサイ」方向性ではない感じ。戦闘曲の作りはファルコムだとロック調なのに対し、ガスト作品ではフュージョン風な印象だ。

また全体的に久石譲の影響が感じられる。というか、多用されるモチーフがトトロの「風の通り道」を意識しているように思える。これを聴いていてトトロのサントラをとても聴きたくなりレンタルしてきたりした。

「欧風民族音楽」というのが基本的にアトリエシリーズのコンセプトらしいのだけれど、「イリスのアトリエ」ではもっとワールドワイドに手を広げてみたらしく、試聴できる限りの以前の作品とはやや風合いが違っている。ちなみに、このグランファンタズムは「イリスのアトリエ」シリーズの第三作で、これより前には「エターナルマナ」の1と2がある。イリスシリーズは調合を主眼においたアトリエシリーズとは異なり、通常のRPGに近い作りらしいのだけれど、ゲームの方はやっていないのでわからない。

この作曲を担当するガストサウンドチームは、BGM部分はすべて中河健が担当し、もうひとりの阿知波大輔はヴォーカル曲の大体を担当、というパート分けになっている。他のゲームだとサウンドチームには別の人も加わったりしている。

ガスト作品では「イリスのアトリエ」シリーズ三作、「アルトネリコ」の1のサントラ、「エリーのアトリエ アンノウン・オリジン」あたりを聴いてみたけれど、この作品を最初に聴いたせいかもっとも気に入っている。

曲数が多すぎるので特に印象的なものを抜き出すと、牧歌的な「郷里の陽」、明るい感じの序盤から哀しい調子に展開する部分が良い「Grand Fantasm」、牧歌的でありつつ歴史を感じさせる広がりを持つ「古書に囲まれる日々」、アコギの挿入が面白い戦闘曲「thunderclap」、笛のトラッドな響き「霧の針葉樹」、これも明るい調子から荘厳な雰囲気へ展開するのが秀逸な「古き城を訪れて」、序盤のフレーズがラピュタっぽい「古城の洞穴」はメロディも好きだし展開力もある一曲、そして個人的に最大の名曲が「神の庭園」、これは素晴らしい。序盤からのトラッドな笛のメロディが良いし、サビのメロディも良い、笛やハープの音も神秘的な雰囲気を出している。「おてんば姉妹」は従来のアトリエシリーズっぽい曲調で、久石譲的に言えば「魔女の宅急便」あたりの雰囲気がある懐かしい欧風音楽。やっぱりフュージョンっぽい「Soul Boy」は明快な調子が気持ちいい一曲。「精霊のふるさと」と「幽霊少女」は以前の作品からのアレンジ曲らしいのだけれど、どちらも佳曲。

二枚目の「Tutorial」は曲名に比べてかなり良い曲なのが意表を突く。これも戦闘曲なのだろうか。後半の展開が良い。メインテーマのアレンジでありつつかなりデジタルな曲調と乱舞する楽器のアレンジが面白い「心の迷宮」。後半に固められている戦闘曲はどれもなかなかいいんだけど、特にいいのはキーボードソロがプログレっぽい「Rain Of Blossoms」と中盤のギターによるサビが素晴らしくて何度も聴いてしまう「Desire And Commandments」か。

とにかく、楽曲の充実ぶりには目を瞠るものがある一作だ。素晴らしい。ガスト作品はファルコム作品と並んでもっと聴いていきたいと思う。なんとマナケミアシリーズにはKBBのベースが参加しているらしいし。

楽曲の試聴は以下の公式サイトで五曲がフルでダウンロードできる。グランファンタズムの曲のだいたいの感じはつかめるのでどれもオススメ。
ガストショップ
他の曲も聴いてみたい場合は以下やAmazonのページでも冒頭部が聴ける。
イリスのアトリエ グランファンタズム オリジナルサウンドトラック ゲーム・ミュージック CDアルバム - Neowing

なお、アトリエシリーズのサイトでは他にもフルでダウンロードできる楽曲がいくつかあり、以下から試聴できるものを探してみて欲しい。
ガストショップ

このゲームのものではないけど、試聴できるもののなかで特に名曲なのが「ヴィオラートのアトリエ」の「にんじん村一番娘」だ。今年一番聴いたゲーム音楽の曲の一つで、これホント名曲だと思う。以下から
ヴィオラートのアトリエサウンド試聴ダウンロードできるので是非とも聴いて欲しいのだけど、Youtubeも貼っておく。

こういう音楽を他にももっと聴いてみたいのだけど、ジャンル的には何になるんだろうか。なおこの曲は「ヴィオラートのアトリエ」でたぶん一番聴くことになる初期状態の村の音楽。村を発展させていくと音楽が変わるらしく、発展の仕方によって複数の楽曲が用意されているとのこと。そのうちのひとつ「デニッシュは7コール」が試聴できる。「にんじん村一番娘」をじっくり聴いてみてから「デニッシュは7コール」を聴くと、発展前の曲が上手く溶かし込まれていて感動的。