Solas - The Words That Remain

The Words That Remain

The Words That Remain

ところ変わってこれはアメリカのアイリッシュバンド、ソーラスの3rdアルバム、1998年リリース。アイルランド系のアメリカ人によってニューヨークで結成されたというこのバンド、ところどころにドラムやエレクトリックベースを導入しつつも、基本はアコースティックなケルティックサウンドでありつつ、アメリカの都会派ならではということなのか、絶妙なバランス感覚でポップさとトラッド臭さを兼ね備えているところがとても面白い。

特に秀逸なのが冒頭のヴォーカル曲で、印象的なリフレインにケルト系とは異質なメロディの歌がばっちりはまっていて、一聴して名曲だと感嘆させられる。

映像でもないものかと探してみたら、上記の動画とともに、どうやら元曲らしいものを見つけ、アメリカのフォークシンガー、ウッディ・ガスリーのカバーだと言うことに気がついた。アメリカとアイリッシュの融合ということになり、この曲の絶妙なバランスがどこから来ているのかがよく分かった。
こちらの方が詩を訳しておられるので是非どうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/kyousum/20051030#p1

次曲ではアメリカのジャズバンジョー奏者(チーフタンズとも共演したり、またはELPで知られるホウダウンのカバーともやっている)ベラ・フレックのバンジョーフィドルが切り込むスピード感あふれるリールで、バンジョーでほのかなカントリー色が伺えるのがメリケンらしくて面白い。

三曲目はギターのカッティングとアコーディオンの穏やかな音色が主軸の牧歌的なジグ。途中でぶっとい音色の低音が聞けるんだけれど、これは何の楽器だろうか。

しっとりとしたヴォーカル曲を挾んでの五曲目は一曲目のようなポップさを持つヴォーカル曲。やはりケルトの歌とは異質だなと思って作曲クレジットを見てみると、作曲はPeggy Seegerとなっていて、これはアメリカのフォークシンガーだという。彼女にはPeteという父親がいて、これがアメリカのフォーク史におけるかなりの重要人物とのこと。ウッディ・ガスリーともども、アイリッシュサウンドアメリカのフォークミュージックを活かしてみる、というのがこのバンドのひとつの軸となっているようだ。

次々曲もヴォーカル曲で、これもキャッチーなメロディで聴きやすい。八曲目はフルートメインのイントロが良い感じ。そしていかにもトラッド的なヴォーカル曲の次は、アコギがリードするインストでこのアコギがとても良い。伴奏でのカッティングも軽快。その次は穏やかな序盤から徐々に盛り上がっていく後半への流れが聴き物。ラストは明るくかわいい感じのヴォーカル曲で締める。

アイリッシュサウンドアメリカの楽曲を導入することで、トラッドとポップさとの絶妙なバランスを実現していて、またインスト曲でもバンジョーを加えたり、基本的に楽曲のテンポも速くこなすなど、非常に聴きやすく、また技術的にもハイレベル。コアーズあたりだとややメジャーなポップスに寄りすぎてしまって私はやや不満なのだけれど、こちらはあくまでもアイリッシュケルトに重心をとりつつ、アメリカンなセンスをうまく導入しているところが非常に秀逸なアプローチだと思う。最近のケルト系では出色の一枚。

ただ、この三枚目でヴォーカルのカラン・ケイシーが脱退して、やや音楽性が変わってしまったらしい。そこで結構なファンが離れてしまったようだ。しかし最近ヴォーカルが変わって以降のものも再評価されつつあるよう。なお、本隊は最近再度ヴォーカルが変わって新アルバムを出した。

そこからの試聴曲が何曲か彼らのMySpaceで聴けるようになっている。これもかなり良い。

これだけ薦めておいてなんだけど、初期の三作は新品が流通しておらず、いま入手が難しくなっているので注意。

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