2015年見ていたアニメ

というわけで年末のまとめ。年一でやると長くなりすぎるので七月時点で半年分をまとめようと思ったけれども、なんだかんだとやはり年末になってしまった。まとめると分量多すぎるねやっぱり。

今年は何を言おうとも放課後のプレアデスがすべて。アニメ単独で六本記事を書いているのはこのブログとしては異常の域だし、というよりパッケージを買ったTVアニメ作品は十数年ぶり生涯二つ目なので完全に別格。そしてトライガンは途中でやめているので唯一パッケージを揃えた作品。自分でもどうした?って感じだ。
http://d.hatena.ne.jp/CloseToTheWall/searchdiary?word=%CA%FC%B2%DD%B8%E5%A4%CE%A5%D7%A5%EC%A5%A2%A5%C7%A5%B9
作品については既にかなり書いているので過去記事を当って欲しいけれども、繊細で丁寧に夢としての魔法を描いた、ファンタスティックでSFセンスあふれるジュヴナイル作品だったかなと。素晴らしいです。佐伯昭志監督が小説版を進行中だとか、菅浩江さんがノベライズのみならずグッズ販売はじめたりとか、関係者やファンの熱意が強固に持続しているのも作品性が反映されているようで楽しい。佐伯監督がお金を貯めていた方が良いかも、というのは何が起こるのか。

第二シーズンに入った「プリパラ」はやはり傑作。ギャグアニメとしてもつねにトップグループを走り続けるレベルにある。「リアル蛇を手掴みしてきたふわりさん」とか、ヤギチームとか、プリパラポリスの口サイレンとか、生きてる鶏でオムライスつくろうとするとか、高速回転早回しでの「とりあえずお似合いよ」とか噴き出す場面はきりがない。最強狂気あじみ先生、上田麗奈はいったいどうなってしまうのかってくらい飛ばしていて、テンションで愛河里花子と張り合っているのすごい。美術の先生なので語尾に画家の名前を連打してくるのは、これ聞いててわからないのも多いぞ。去年のクールラストでは校長の問題を解決し、大人世代もプリパラへ行くという世代を問わない展開もいい。熟女百合の可能性を切り拓くキッズアニメ。大人も子供もお兄さんも。いや、レオナだけは「プリパラの神が許した」例外っぽいけど。ファルルの設定などやたらSF的なのも面白い。今年新登場したあろまと「プリパラとあろまが大好きなのー」みかんが完全に二人の世界を作っていて、EDとかでもお互いが大好きすぎるのは、あれはそろそろ親が仲が良いという域ではないのではと心配し出している気がする濃度。今は斎賀みつき斎賀みつきみたいなキャラを敵役として、それまでのグループの分断・再編話で、各キャラが自由に輝くことというのはそふぃの初期の話の再演でもあり、そふぃが敵のチームに加入することを応援するシーンではセリフではなくらぁらの表情が一瞬曇る描写を入れるあたりの演出も良いなと思う。プリパラはとにかく楽しく面白い。斎賀みつきのひびきは、曲歌が最高に格好よくて宝塚?って感じだし、これが声優の力かと感服する。ファルルもそうだし毎度毎度ボス格の演出は決まってる。レオナに対し、男と思われていた女性のひびきというキャラを持ってきて、演劇に交えてその装いの意味合いを対比する話とか、よく考えられている。いやしかし熟女百合、小学生百合、女装男子と男装女子とプリパラは幼女をどうしたいのか。

プレアデスと同クールの「響け!ユーフォニアム」も非常に良かった。絵のクオリティはさすがで、リアル寄りの青春部活ものをきっちり作ってきた感じだ。中川夏紀、初見でまどまぎの杏子みたいだなと思ってたらなんかキャラの位置的にも杏子みたいですごい良いキャラだったし、最後に仲悪いかと思ってたリボンと仲良く祭行ってるのには笑った。特に八話は麗奈のあの思わせぶりなセリフを久美子に連打していく誘惑のありさまとかがすごい。事前に麗奈が滝先生好き、ということを知ったので、ここまで百合的に突っ込んでいくとは思っていなかった。合奏がこれ完全に隠喩……。コンテ演出藤田春香は原画も担当で原画は七人中六人女性な回。不思議なのはプレアデスともども、百合だと思わせて男が好きとか言ってるのは百合詐欺だとか言う者が出てくること。自分の読解力のなさとわがままを作品のせいにするなとしか言いようがないし、異性愛者は百合の行為者たりえないという排他関係を前提としているのは狭量過ぎて肯えない。原作者的には「この先、秀一が特別な異性でなくなることはありえますが、麗奈との関係は不変なんです」ということらしい。


非常に秀逸な意見。私としては友情もまた百合だし、プレアデスの二話七話も最高の百合話だと思う。官能性と高校生的自意識があるユーフォと、SF的平行世界を舞台にお互いが違う世界から来ている相手を介してその友情を確認するプレアデス七話は傑出した百合回だと言っていい。彼女たちが男が好きだしてとこれらがなかったことになるわけがない。まあ、百合だと思わせて男に落ち着く「百合作品」が多い時代があったという話は聞くのでわからないこともないとはいえないけれども、それでプレアデスやユーフォを叩くなら俺がお前を殴る。BLに比べて友情関係も含めてしまえる「百合」という区分はその点いい。「Free!」はこれの男版だったと思う。しかし百合のようにあれを上手く形容できる言葉を知らない。

アイドルマスターシンデレラガールズ」は前にも書いたように、これはかなり楽しく見た。特に前川みく多田李衣菜の11話はプリパラのシリーズ構成土屋理敬脚本で最高だった。しかし、李衣菜は「にわかキャラ」というキャラはあまり好感もたれないだろうにそれでキャラを立てようというのは凄いなと思う。後半で普通に勉強し出すのはキャラ崩壊にならないのだろうか。アニデレはやっぱり竹内武内俊輔が逸材。プリパラのサンタルチア歌ってたアシカと徳田ねねの元彼が竹内武内俊輔だったという面白み。アニデレ、おそらくは2クール続けてやるはずだったのが制作の遅れで分割になったようだけれど、それはやっぱり高雄監督のこだわり故だったのだろうか。非常に象徴表現というか隠喩暗示を多用していて、でも多用しすぎているようにすら感じられる画面作りはちょっと窮屈だった。高垣楓早見沙織の格を感じさせる話とかもろもろ個々の話数は良くても、後半クールはずいぶん微妙なところがあったのは、美城常務の説得力のなさで、いつその行動のバックボーンが明らかにされるのかと思っていた。不採算部門を精算する、というだけではあれ、納得できるか? 久野美咲というか市原仁奈の「あの人たち、さっきから何を言ってやがるです?」というセリフが正しすぎる。というか、美城常務はシンデレラにおける継母というか、敵対者という「役割」なんだろうけど、なんかそういうシンデレラとかの枠組みが物語的肉付けより先行してないかな。そこで未央が演劇をはじめたので、象徴性を突出させるたぐいの演劇的演出なのかな、と得心したのだけれどこの理解は合っているのかどうか。とはいえ後半、美嘉みりあ回は印象的で、特にみりあの黒沢ともよの演技に驚いた、というか黒沢ともよはユーフォの久美子でもあって、この幅広さ、黒沢さん凄い、と感嘆したのがこの話数でのみりあの感情表現だった。アニメはみくりいなもそうだけれど、ラブライカの組み合わせもすごく良かったのに、妙に貧乏くじばかり引かされる美波の扱いはどうかと思うなあ。鷺沢文香と橘ありすの組み合わせも一瞬しかでないけどすごい良い。ありすって凄い厄介な性格っぽいんだけれど、それが文香に対してすぐに心を開く感じの関係最高だってなった。文香はいわゆる読書家キャラでアレでアイドルやってるってのが面白いんだけれど、しかし彼女は何の本を読んでるのでしょうかね。古典?洋書?みたいなごつい装丁の本持ってるけど、あれ、イメージとしての「本」じゃなくてなんか根拠ある描写なのか。読書家キャラとしては「グラスリップ」の幸が出色のキャラだった。新潮文庫カミュを読んでるバイセクシャル?の腹黒キャラは非常に面白い描写。ただ、すごく俗っぽい月が綺麗ですねネタを重要シーンで使ったところは個人的に減点な。

年末の秋クールで特に良かったのは「スタミュ」。男子のミュージカル学科での少年たちを描く作品で、ほぼ女性キャラがいない。女性向けなんだろうと思うけれども、すごく堅実で良い作品だった。今年一番のダークホースといっていい。キャラデザも柔らかくて見やすく、みんなかわいらしい。最初は見るつもりがなかったけれど、一話冒頭のとつぜん上級生たちのダンスシーンがはじまって笑わされ、これうたプリ路線だ、と思ってネタ枠のつもりで見ていたら、ものすごく真面目な作品で意表を突かれた。特に九話はすばらしい。なぜかは言えない。細谷佳正の「野暮助」こと天花寺が面白くて、ネコ大好きというキャラなんだけれど、主人公星谷がネコ嫌いで、って話を聞いて「なぜ天使を?」と言うのがツボすぎ。私の見る範囲ではなんかあまり話題になっていない気がするけど、とても良い作品。楽曲の作詞はプレアデスでも活躍してたくまのきよみ。そういえば、数年前にある知り合いから、友人が声優やってて、カタカナ名前の人で、みたいな話を聞いて、男性だと言うからブリドカット・セーラ・恵美じゃないな、知らないなあと思ってたんだけれど、メインやってるランズベリー・アーサーってその人だったのかな。ミュージカル枠でせっかくなのでと見ていた「Dance with Devils」はいわゆる乙女ゲーの先行アニメ化か。プリパラらぁらの茜屋日海夏主演だけれどゲームだと出番ないのかこれ。アニメも結構面白いけど、アズナが。ゲームだとアズナルートあったりしないのかな。乙女ゲーならではなのか、順繰りに男キャラにいろんな意味で狙われたり、人の言うことを聞かないで危うい場所にどんどん進んでく主人公面白すぎる。木村昴がラップ好きということでか劇中でラップ取り入れたキャラソン歌ってる。OPの犬とかEDの謎ダンサーとか話はシリアスなのにミュージカルあわせてネタっぽさはやはり出てくる。

コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜」も非常に良い。昭和の元号候補だった神化の元号を用いてもう一つの昭和を舞台に、さまざまな歴史的事件を素材にしつつ、超人という正義あるいは「正義の味方」の存在を問う。主人公ジロウが超人課を離反する、という決定的事件をブラックボックスに入れて、超人課時代と離反した後の時間軸を主な描写場面にしながら物語を進めていく巧みな展開。ED曲が最高。サザエさんの脚本家を迎えてサザエさんをパロディする第九話は小松左京をタイトルに用い、永遠に生きる家族を超人として捉えるSF話。この第九話とアースちゃんの正しさを描いた七話が特によかったか。分割2クールだということで、来年もまたやるとのこと。「UN-GO」の小説版も買ったままだけれど、超人幻想の小説も時間があれば読みたいところ。

ハッカドール THE あにめ〜しょん」は、オタク系ニュースアプリを元にしたキャラクターを使ったもので、こういうのはなかなか楽しいものになるはずだと思っていたので、予想以上に面白くなっていて良い。ニュースアプリらしく、オタク系ネタを存分につっこみまくりながら、10分尺に詰め込んでいるのでだれずにテンポよく見られるのが美点で、脚本がわりとこっちの予想を外してくるのが面白い。3号回では女の子だと思っていた3号が実は男子で、というのをばらして、あの男の子がそれでもいいと目覚める展開が来るはずだと思ったら、すごい綺麗な話で落としていて、この意表のつきかた。オンラインゲームネタだと、引きこもりのゲームオタク、というのではなく、家族仲もよいのにゲーム仲間から足を洗えないって話で、最後家族が助けに来るのはバカバカしくも嫌味がなくて良いバランス感覚。2号はショタ好きだという設定があることをどっかで見たので、これは3号とそういう絡みがあるに違いないと思っていたらOPにワンカットあるだけだったのが不満。ハッカドール同士の関係の描写が足りないな。OP映像が非常に良い。ショートアニメで監督がほとんどのことをやるパターンは見ることが多いけど、制作進行までやってるのは初めて見た。

境界のRINNNE」、じつは私は高橋留美子ってきちんと読んだ作品がない。らんまは昔テレビでやってたのを見てはいたし、犬夜叉は最初のほうは知ってるんだけれど、それだけだ。で、これは放映前から知人が推していたので見たんだけれど、これはとても面白い。さすがラブコメの始祖みたいな人だ。むちゃくちゃクールな間宮桜のキャラ造形とか素晴らしく、古いのか新しいのかわからない無時間的な印象がある。絵的には確かに古いんだけれど、ものすごい安定感と信頼性がある。親の因果が子に報う貧乏な主人公のリアルな嫌さってのと、そこに組み立てられた八話の金のリアリズムとか唸るものがある。絵を思いっきり今風にしても面白いんじゃないかな。二期と言わずずっとやってていい。

えとたま」はニコ生番組を欠かさず見ていたので当然本篇も見たけれど、ちょっと古くさい萌えアニメのセンスを現代に生かす非常に楽しいアニメ。渡辺明夫キャラデザの2D作画の本篇と、QP:flapperデザインのデフォルメキャラの3Dがあるんだけれど、3D作画は凄い作り込みだった。とにかく場を盛り上げようとする宣伝戦略なのか、ニコ生もそうだし、ニコ生の本篇でも声優が何人もリアルタイムでコメントしてくるので、声優のコメントに埋もれて絵が見えなくなることもあるくらい。公式の悪のりもなかなかで、第一話のアンケートの結果に対して公式が「わりと低くてわろた」っていうのに村川さんが「わろってんじゃないよ!」ってところが好き。ニコ生だと黙っていても所作がうるさい村川梨衣が目立つけど、送りバント*1、神・ゴッドいわゆるゴッちゃんだとか、エジブ(B)トなど数々の名言名シーンを残した巽悠衣子がひときわ光っている。巽悠衣子といえば、やはり雨宮天とのこの動画が至高のもの。
「魔法科高校の劣等生」ほのかと雫の魔法塾 第10回 - YouTube
二分くらいから見てもらえれば。これは巽悠衣子というより雨宮天のリアクションが神がかっている。絶句の辞書に載せたい。人間の真実を見た気分になれる。2014年もっとも見返した動画。これもわりと楽しかった「ビキニ・ウォリアーズ」で「神 巽悠衣子」表記を見たときは笑った。いやそれはいいんだけれど、とにかく村川梨衣のためにあるようなキャラのにゃ〜たんをメインにして楽しい作品だった。にゃ〜たんはまんま村川さんだと言われたりするけど、あれで村川さんって何かを悪く言ったりとか全然しない人で、これはどっかで言われてて自分もはっとしたけれど、自分のプライベートや親族の話もしないし、仲の良い声優が誰かって聞かれてもすぐには佐倉綾音の名前すら出さないくらいプライベートの切り売りに対して抑制的なの、凄い倫理観のある人じゃないかと気づいて、すごく印象が変わった。何も考えてない人じゃなくてものすごく考えて喋ってる(から、ちょくちょく間があく)んじゃないか。声優仲間からも気遣いの人だと言われているし、イベントについてコメントしても必ず来れなかった人にも言及するのとか、じつは偉人か聖人のたぐいではないか。石川界人がどっかで僕はもう村川さんのファンだ、と宣言してたのはそういうところを見ているからだろう。チェンクロのキャラソンBarracuda No.1」も格好良すぎて笑う。チェンクロキャラクターソングアルバム「ソングス・オブ・チェインクロニクル」全10曲視聴版 - YouTube
がっこうぐらし!」は既に記事を書いているし概ねあの読みで良かった気がする。六話であれだけ正面から説明するとは思ってなかったけど。「死んでないだけ」だった生存を「楽しい」ものにするのがゆき、という。ほんとはあの記事で書き残した『渚にて』を絡めた記事を書く予定だったけれどここで。何を書こうとしていたのかかなり忘れてしまった。やっぱりそのときに書いておかないと細部が甘くなるな。

渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)

渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)

プレアデスの記事でも参照したネヴィル・シュートのポストアポカリプスSF、『渚にて』だけれど、これを先の記事でも参照しようとして忘れていた。『渚にて』を直接に指し示すかどうかはともかく、じっさいに破滅もののSFはゾンビものの先祖的な作品群ではあるらしい。私はゾンビもの映画もゲームも全くやらないのでいわゆるお決まりのガジェットを通俗的に知っているに過ぎないけれども、『渚にて』では迫りくる放射性物質の到来による死の恐怖にさらされつつ、核戦争後の寂れた町や無人のショッピングモールが出てきたり、ある人物は確実に死んでいるだろう家族へのお土産を買うために町を奔走するのだし、また他の人物は、芝刈り機を買ってこれからの季節に備えたり、ベンチを買って庭に備え付けたりもする。いずれもこれからのことがあるかのように。かとおもえば、カーレースではスーパーカーを走らせて、死んでもかまわないような爽快なレースを走る。実際、相当数の死傷者を出しながらレースが行われ、自殺と見まがうような有様はこの小説のハイライトでもある。原作にはあったらしい実家の様子を見に行く場面がカットされたようだけれど、『渚にて』でも実家の様子を見に行く場面は特に印象的なところの一つだ。「がっこうぐらし!」はこうしたネタを意識しているはずで、災害を生き延びるという話なのは東日本震災の後だからかも知れず、学校で明るく過ごそうとする彼女たちの姿が哀しいのは、既にほとんどのことが終わってしまった場所で生きて行かざるを得ない切なさがあるからだ。めぐみの死に向き合うための時間。もちろん学校そのものがサバイバルの現場だという認識もあるだろうけれども。原作とはかなりニュアンスが違うらしいので原作も読んでみないととは思っている。

一月はラノベ原作で似た趣向のアニメが被りまくって話題になっていたけど、「聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>」は明らかにある種の傑作だったと思う。なんというか予算不足を逆手にとって、キャラや演出を過剰に誇張して決まり文句で話をわかりやすくし、どんなに画面が崩れてもオモシロに回収される雰囲気を作ってしまうあたり、手練れの技だと言うしかない。雑さというか過剰さというかが明らかに意図的な作りで、序盤のただ倒れるための雑なヤシの木とか、天才的だよあれ。ファンも叩く人もみんな楽しかったアニメなんじゃないかな。アンチもすべてが監督の掌の上って感じがある。作画が間に合わなくて喋っている間波打つ海が映っているだけのシーンとか笑いしかない。12話でOPを十秒だけカットするとかほんとマジかよってセンス。こんなに面白いのに原作者はともかく、イラストレーターが凄い不満らしいのが不思議だ。原作からどう変えられているのか読み比べたい気がしたけれど果たせず。BGMが格好良いのが多かったな。雷帝戦とか。アンジェラ役の小見川千明が良かった印象。

ラノベ四天王と言われたなかでは「アブソリュート・デュオ」がわりと印象的で、江畑諒真のOPは今年最高レベル。特有の体重移動の動きもそうだけれど、デュオということでフィギュアスケートをサビに持ってくるセンスが見事。デュオということでみなコンビを組んでいて、それと相まってBL感と百合感が出てくるのが他ラノベアニメと比べた特色になっている。内ゲバばっかしてるとか戦闘の退屈さはともかく、終盤のみやび・巴の、ハーレムものでのサブヒロイン同士の百合展開はすべてよしってなるし、三つ目のEDの至高の百合ソングぶりは特筆すべきものがある。柊★たくみkanoso以来久々に名前を見た。

百合と言えば、一月の幾原監督の「ユリ熊嵐」もすごい面白かったけれど、書くことが思いつかない。すごい素直にまとめていた気がする。吉村昭羆嵐』は傑作なので読むと良いと思う。これで一年が始まって、秋クールでは「ヴァルキリードライヴ マーメイド」「緋弾のアリアAA」「ゆるゆり さん☆ハイ!」という百合アニメラッシュで終わる凄い年だった。

ヴァルキリードライヴ マーメイド」は全面的なエロ推しで画面がほとんど真っ白になるくらい胸とかがもろ出しの作品なんだけれど、ウィルスに感染したせいで、エクスタシーを迎えると武器に変身するというとんでもないネタでバトルものを展開する。ウィルス保有者が集められた閉鎖された島での自由をめぐる戦いというバトルもののメインストーリーに、女性同士で性的に絶頂して戦闘するという無茶なネタの組み合わせによる百合アクションバトル。男が太巻き加えていたシーンしか覚えてない「閃乱カグラ」の「爆乳プロデューサー」による企画らしく、爆乳には興味持てないけれど、これは非常に面白い作品。変身トリガーがそれなので、変身のスムーズさはコンビの愛情関係の進展度と関係してくるという点でバトルものの盛り上がりと恋愛関係の進展が強固に結びつく。うまいですね。第四話の武器にならずに巨人になる話はとんでもなくて、雑破業の脚本と知って笑ってしまう。投手と捕手の女性同士で「身も心も一つになる」と明言してるシーンだけれど、これで巨人になるっていうのはやっぱり野球だから「巨人」という洒落なんですか。おい最終話やりすぎだぞ。

緋弾のアリアAA」はハーレムものの主人公ポジションを女性に変えたような作品なんだけれど、主人公を狙うキャラがわりとマジで性愛で迫ってくるのを友情と強弁する世界観。原作の後のほうでは明らかにいわゆる「ハッテン場」の女性版「女の子ランド」とかいうのが出てくるらしく、レズビアン用語とかオーラルセックスでのコンドームみたいなアイテムの名前が出てくるとか、ガールズラブに本気すぎるのはなんでなのか。ヴァルキリードライヴとあわせて、女性同性愛を世界観に組み込んでる作品だ。日常話やってるほうが全然面白いんだけれど、前半のクライマックスのバトル場面で完全に尺を余らせて無残なことになったりしてるのは、そこら辺の見極めに失したからだろうか。わがままというより騙したり悪意すらあってさすがに不愉快なうまるより、動画工房はこれとミカグラにリソース当てろよと思った。夢喰いメリーコンビのラジオ面白い。

ゆるゆり さん☆ハイ!」は制作会社やスタッフを変えての三期だけれど、ようやくここで原作尊重のアニメ化となった感じがある。原作は少ししか知らないけれど、動画工房版は、ネタにするのといじめの境界がわかんない人が作ってたんだなって印象があるのと、オリジナル回のつまらなさが空前だったのに比べて、ギャグと言うよりコメディよりで落ち着いた作りの今作の充実ぶりはとてもいい。傑作。二期までのスタッフは「さばげぶっ!」みたいなのを作るには合ってる気がする。百合といえば漫画だけどガンガンオンラインの「ななしのアステリズム」が読み切りの時からこれは、と思っていたのが連載でどうなるかとおもったらちゃんと続いていて楽しい。ガンオン漫画のアニメ化有力候補だと信じている。田中くんはじめ、男子同士の関係を女性が描くものや少女漫画よりの作品が増えているのは野崎くん効果だろうか。

てさぐれ!部活もの すぴんおふ プルプルんシャルムと遊ぼう」も。これはもう長いし別番組とコラボしていろいろ楽しんだけれど、なんというか荻野可鈴の頭の回転に驚く作品だなとは思う。荻野可鈴の知識はないけど天才的センスと、上坂すみれの知識教養文化資本の鬼っぷりとの対決となった回のラジオとかすごい面白い。西明日香とニコ生やってるのもすさまじい。西明日香とかシーサイド関連のラジオ聞いてて毎回思うし、あんまりタイトル引用とかもしたくはないけれどそのうちアニメ化まで持って行くつもりだと思うのでここで書いておくけど「中古でも恋がしたい!」とかいうタイトルのラノベ作ってドラマCDまで企画した連中くたばれって思うね。このタイトル言わされる声優が不憫。「さくら荘のペットな彼女」のタイトルも大概最悪だなとは思ったけれどもはるか下を行く。

VENUS PROJECT -CLIMAX-」は六話構成の変則放送だし埋もれてしまっている気がするけど、これ実はすごい良い作品だと思う。負ける人は負け、勝つ人は勝つというシンプルかつ真面目なアプローチで描かれていて、やたらみんな胸がでかい絵面のB級感を良い意味で裏切ってくる。貧しい国がマズシスタンとか、ソバガスキーってキャラがうどん喰ってるとか、凄いセンスでこれも雑破業じゃねーか。ちょっとしたカブトボーグ臭を感じる。

短く

ローリング☆ガールズ」は絵のセンスは秀逸で、微妙に引き込まれない部分もあったけれど、いいんじゃないかと。ブルーハーツカバーが基本コンセプトにあって、女性によるカバーによってブルーハーツ自体の詞とかにかわいさがある(頑張れっとかの)ことを気づくことが出来た点だけでも評価できる。「幸腹グラフィティ」は胃袋を掴む系百合作品で、食をあんまり艶っぽく書くと気持ち悪い感じもしてしまうのだけれど概ね良い。
SHOW BY ROCK!!」は金髪褐色ツインテツンデレ眼鏡とか属性を山盛り詰め込んだレトリーが際立つ、全体に良い作品だった。他ユニットももっとでて欲しいね。アニメ化前から佐倉さんが出ているということでニコ生を見て、稲川英里のプロっぷりに驚愕した作品でもあり、観客との対決で素人を完全パーフェクトのスコアで、しかも課題曲の歌手本人が歌いながら完勝するありさまはすさまじかった。名人が主演っていうのは恵まれている。「山田くんと7人の魔女」はキスで人格入れ替わりというネタなので、声優それぞれが入れ替わった相手の喋り方を真似する演技ですごい面白い。中身男の女同士のキスシーンとか、みんなが軽率に異性も同性もキスしまくるのも楽しい。男同士のキスシーンばかり描いて女同士のが少ないのが不満。「頼むから天ぷらだけはやめてくれ」という五七五の名台詞。声優がほとんど皆主演格の有名な人ばかりで、ここに突っ込まれたED曲ユニットのヴォーカルタカオユキは結構声質自体の魅力もあって頑張ってたと思う。話を飛ばしまくってたみたいだけれど、あの話で終わらせるにはこうするしかなかったし、タイアップ契約なのか妙なところでOPが入れられまくるのも仕方ないか。早見沙織はいいなあ。「グリザイアの楽園」は通俗的な悲惨をとにかくこれでもかと詰め込んでそれをハイテンポで展開していくのでなかなかに楽しくはある。原作は人気あるようだけれど、もしこれをじっくり丁寧にやったらバカバカしくて見ていられないだろうと思うのでこの飛ばし方は正解なんじゃないかな。「シドニアの騎士 第九惑星戦役」、これはSFというか異種ラブコメの新境地を切り拓いている。
血界戦線」は一巻を発売時に買ったまんま読んでないけどこういう作品だったか、と。ようやく放送された最終回は、長尺もあってすごい充実感があった。伸ばしただけはある。「ガッチャマン クラウズ インサイト」はわかりやすくするためか、センスの良いところとすごい悪いところが混在している印象がある。民主主義とは何か、というのを空気の支配というところから描いていて、期せずしてきわめて時事性ある作品になっている。熟慮のはじめと拙速のつばさという対比があり、両者手を取り合うOPカットがいい。「のんのんびより りぴーと」素晴らしい作品ですね。間の取り方、長回し演出などこの作品だから出来ること。ただ、オリジナル回で夏海以外の人物が兄に声かけるとか、ちょっとした違和感があった。兄に注意を向けるのは夏海だけじゃなかったかな。佐倉さんはロゴスもいいけど夏海が特に好きだな。ラジオでの村川さんとのテンションの高さたるや。デコポンガス川面監督。知る限り監督がアニラジに出てくるのはこれとプレアデスだったのはキャラデザイン大塚舞ともども奇妙などうでもいい共通点。「それが声優!」は、声優浅野真澄原作のアニメ化で、それゆえの業界ネタのリアルさがなんというか、面白いというか、痛ましいというか。青二モデルっぽい事務所の妙なしきたりをキャラ自身にいいことだと言わせているあたりの苦々しさたるや。いやわりと面白い作品だけれども。Shirobakoあたりに比べて挫折ルートへの道がわかりやすく見えているのとか生々しいし、声優志望者には参考になるかもなとは。変に胸の大きいキャラとかがいなくて、声優自身が原作だからかキャラを妙に性的に押し出さない抑制があるのは興味深いと思った。作画の趣味かもしれんけど。「城下町のダンデライオン」は言葉にするのが難しいけど理想的?な萌えアニメって感じがある。九人の王族兄弟姉妹の次期王選挙がメインストーリーだけれど、特殊能力をもった家族間の親愛感を基盤に兄貴のラブコメとか妹の百合アイドル活動とか、ものすごいいろいろ詰め込んである。原作春日歩ラノベイラスト含めると来期で三作アニメ化か。「アクエリオンロゴス」は微妙なところもあるけれど、「なぜなら俺は救世主だから」の一言ですべてを説き伏せる主人公キャラがいい。「わかば*ガール」はきんモザ原悠衣による単巻四コマのアニメ化だけれど、二期やったきんモザに比べてこっちのが面白いのでは、と思う。特に良いのは真柴直で、これの声が村川梨衣というのにはいつ聞いても驚く。こんな声も出せるのか。「戦姫絶唱シンフォギアGX」は第三期で面白くはあるし、水瀬いのりってあんな声や歌が歌えるのかと驚かされた作品でもあるけど、一番面白かったのは一話冒頭だったかな。「六花の勇者」悪くはないけどワンクール一冊でやるのはだれるので難しいところだとは思った。作品とは関係ないけど、山形石雄さんの母親が私の母と同じ職場だったそうで、氏のデビュー当時、話を聞いた母からあんたはなんかそういうのないの?と言われたことを覚えております。原作読んだ方がいいですかね。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」は少年兵の問題を扱っていてこれは非常に面白い。疑似家族的な紐帯をヤクザものの枠組みで描いている感じ。「ご注文はうさぎですか??」は早見沙織こと青山ブルーマウンテンのバーテン服が一番いい。このメンツのなかだと清川元夢速水奨こそがむしろ萌えキャラになるギャップ感。「うたわれるもの 偽りの仮面」は、前作はラジオしかしらないし、腐女子ネタとかずっとこの日常やってて欲しいね。バトルとか別に。利根健太朗がメイン格でレギュラー、しかも凄い良い役もらってる。しかし日笠陽子結婚か。利根健太朗折戸マリ日笠陽子のアイムトリオとして知られているけど、リス園行った話以来、最近日笠に会っていないと利根さんが言っていたのは結婚したからだったのかな。声と言えば、トウカ役の三宅華也って初めて聞いたけどなんかすごいツボ。え、すごい良い声じゃない? 少年ぽいけどちょっと柔和というかユーモアがあるというか。牧歌的な声だ。「K RETURN OF KINGS」、映画を見てないので話は多少わからないけれども、別にそれでも充分見ていて楽しい作品。中二的センスを映像にするにはたぶん本当はここまでやらないといけないってことがわかる。「ワンパンマン」は大元のやつを最初だけ読んでなんて面白くないんだと思って見る気はなかったけど、アニメは動かしまくって見ていて退屈しない出来の良さがある。ただしやはり話になんの興味もひかれない。三話でもういいかなってなったキルラキルよりはずいぶんマシとはいえ。
ラノベ枠「落第騎士の英雄譚」は、OPの剣を持ち替えるカットとか動きがわりと良くて、剣術バカのシンプルなストーリーなのはいいんだけれど。牢獄の主人公に切った髪を送る恋人って戦国時代のエピソードにそんなのなかったかな、ちょっとええってなった。最後も家と家の関係の感じとか、これじつはすごい封建的な感覚じゃないかな。結局ヒロインがなんか男を立てる女になりはじめてる。よく動いてはいてその点楽しくはあるけど。漫画版がウェブ公開されていたので同時に読んでいたところ、アニメで印象的な「太刀筋が寝ぼけているよ」や、妹の「糸を引くようなコミュニケーション」「炎属性のステラさんをやれます」「デブ」「ブス」の応酬等の切れのある台詞回しは漫画版にない。原作にもともとないものなのかはわからないけど、ここら辺のテンポの良さはアニメ特有。声優のアドリブだったりするのか。「学戦都市アスタリスク」は落第騎士と比較されてしかもけなされているのをよく見るけど、やや地味だけれど最終的にはこっちの方がいいな。東山奈央キャラは落第の方がいいけど。ここらの比較発言とかを見て思ったのは、「萌え」ももちろんいろいろ問題はあるけれど、「燃え」とやらが信用ならないのは「男の子」の感覚みたいなものを無自覚に賞賛して妙に保守的なものに回帰してんじゃないかって気がするところ。「燃え」を持ち上げるくらいなら俺は萌えアニメしか見ねーわって気になる。こっちは最初ISの後を狙うにはもっと開き直る必要があるのではと思ったけど、サヤとキリンの回あたりからは良い感じに見られるようになって、吸血鬼百合姉妹とか出てきて楽しい(公式サイトの姉妹の漫画だと妹相当アレだけど、どれだけ原作要素あるんだアレ)。主人公さんいちばん好きそうなのは斧のレスターなあたり、ハーレムもの主人公らしくなってきた。サヤみたいな発声わりと好き。坂本真綾ラスマス・フェイバーのEDが良すぎる。「ランス・アンド・マスクス」は子供の夢を守る、みたいなのと疑似家族もののセンスはむしろキッズ向けのテーマをティーン向けラノベ的道具立てで描いたみたいで深夜アニメ的には食い合わせが悪くなってしまった感じがある。予算がないのが目立っていた感じがなあ。
てーきゅう」はいつまでやるんだってくらい続けていて、もう飽きた部分もあるけどそれでも時々結構面白いので見てしまう。OP歌ってるアーススタードリーム、まあどうなるかと不安を感じさせるところあるけど、ミラノ国際ジュニアピアノコンクール1位の人がメンバーでピアノ弾いてるとか、わけがわからない。ライブだと、ピアノ弾き終わったらダッシュでダンスに戻って行ってて笑った。「キュートランスフォーマー」はてさぐれの石ダテコー太郎による男性声優版作品だけれど、細谷佳正を楽しむアニメになっていて、上坂すみれのにじみ出る闇がてさぐれに続いてここでも感じられる。「あにトレ!EX」は健康的な(エロ)アニメって感じでなんかすごい。ろこどる奈々子の伊藤美来の声は破壊力高いことを再確認するし、スタッフみんなで踊ってる動画とか面白かったけど、最終話をニコ動で配信しないとかいう訳のわからない仕様になっていることに驚愕した。「弱酸性ミリオンアーサー」、実在性に続く映像化はなんでちょぼらうにょぽみになるのか、メディアミックスセンスが異次元のゲームだけれど、一話冒頭の盗賊アーサーが地面に叩きつけられているときの効果音かと思った低い音が佐倉綾音のうなり声だと気づいて驚いた。のど壊すぞ。ちょぼセンスを一線級の有名声優で組み立てる凄いアニメだ。一話90秒なので何度も見てしまう。しかし牛木義隆デザインで佐倉さんだからこれは夢喰いメリーだ。「不思議なソメラちゃん」も監督が歌まで歌って。

気になったところ。

去年どうかと思った作品について書いたけど、今年はああいう風に不愉快になるのが目に見えている作品は見ないことにしたので門と英国王女のアニメは見てない。とはいえちょっと気になったやつについて。

俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件」は、馬鹿なギャグアニメだけれど、作中のお嬢様が僻地に監禁されて一般常識についても教えられず、見初められたら中途退学していく、っていう戦前の女学校をデフォルメしたような設定になっているこのヤバさにあまり気づいていない感じなのはちょっと。お嬢様たちは主人公を珍獣のように見るけれど、珍獣なのはむしろお嬢様たちだ。今年、ブレンディのCMで牛の擬人化を描いていた作品が炎上したけれど、あれは牛を擬人化してしまうことで人間の家畜化を描いてしまっているディストピア感に作り手が気づいていないところがヤバさだった。食肉にされてしまう進路が決まった子とか、カニバリズムかよって。胸の大きい女性が乳牛になることを志すセクハラ感も確かにあるけど、最大の問題はそこではなくて。で、ブレンディのCMよりヤバいのが庶民サンプルで、このお嬢様学校って、もう完全に家畜としての少女でしょう。ブレンディが擬人化・比喩なのが明らかでそれでもあんなに気味悪かったのに、こっちは比喩とかじゃないからね。ものを知らないまま山奥に監禁され、見合いで結婚して貰われていくとか、これが子をなすための家畜・物扱いでなかったらなんなのか。無自覚なデフォルメなんだろうけど結果としてできたものがものすごくおぞましいよこれ。後半はヒロインの見合いを阻止するベタな展開だけれど、この学校自体の醜悪さを問題にしないとどうにもならない。原作ではさすがにそういう話になってるのかも知れないけど。
追記1/12
https://twitter.com/sikaku615/status/682755798812856322


この記事についてこのような反論があった。確かに何度もじっくり見た訳ではなかったので、私の誤読かと思ったけれど、ちょっとこれも違ったようなと第一話を見返してみた。そこでは庶民サンプルという制度は学生たちに外界の「免疫」をつけるために始められたものだとあって、社会不適合者になりがちな教育はそのままに、外界に出たときのショックを和らげるためのものだ。つまり綻びを見せる現在の制度を保守する弥縫策であって、「社会進出しようと」いうのとは逆で、社会から隔絶するシステムを守るために必要とされた制度ではないか。そもそも、主人公は本人だけの同意を得ずに「拉致」されて学校に監禁されているわけで、制度全体が相当に反社会的だ。お嬢様も、なにかあれば地図にない場所で一生過ごすことになると脅される主人公も、制度としての「家畜」扱いはやはり否定できないと思う。有栖川についての指摘は、ちょっと作中にあったかどうか思い出せないので、まあそうかも知れない。序盤の説明では普通に卒業している描写もあるし、お見合いで貰われるばかりではないだろう。ただ、他の人がそうではない描写も記憶にないし、お嬢様たちにどれだけ自由意志が認められているのか(外の学校に行きたいといえば行けるのか)、というのもあまり描かれてなかった気がする。他の箇所に上記指摘を裏付ける描写があったかも知れないけれども、私の覚えている限りではこの指摘は私の意見への反論として有効ではないと思う。むしろ、公人の拉致を考えるとよりいっそう反社会的だという結論にしかならない。アニメと漫画版を参照。
俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件 第1話 「ようこそ庶民」 アニメ/動画 - ニコニコ動画
俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件: 1 - マンガ - ニコニコ書籍
-追記終了-

艦隊これくしょん -艦これ-」は、いろいろ問題を抱えた作品だったと思う。全体的な統合がばらばらになっているというか。艦娘とかいうのがどういう存在でこの戦いは何なのかという世界設定が浮いている。ゲーム的に抽象化された表現をアニメで再現しようとして水上スケートみたいなことになるちぐはぐさが全体にあって、右手にくっついてるだけの砲台を角度修正して撃つ描写とかシュールすぎる。ゲームのセリフを唐突に言うだけのキャラとかがいて、なんだこれって。大井北上の雑な入れ方とかもあれだし、最悪なのは足柄結婚ネタで、すごいよくあるミソジニーだし、え、彼女たちがコンパするの? 誰と? という疑問が出てくるし世界設定が意味不明になる。有能だったり自信家だったりするキャラをとりあえず貶める感じでこういう六話みたいな扱いさせるのって本当最悪だ。劣等感を持たせないと気が済まないのかな。他にもなんか脈絡の次元が歪んでいるセリフが多い気がする。画面全員のキャラが全部同じ声優みたいなシーンとかは曲芸としては面白いけども。原作要素を尊重して、ゲームとアニメというメディア間の表現の違いの問題が如実に出た感じがある。

もっとも大きい問題だと思うのは、物語を駆動する最大の動機がいっこうにわからなかったところ。これものすごい不自然だった。如月の沈没って明らかにそこにかかわる動機付けのイベントのはずなのに、スルーされてしまっていて妙。「歴史の強制力」って全体にかかわるはずなのに、終盤に唐突に出てきている。
【艦これ】アニメ提督は本当に無能だったのか - ニコニコ動画
こちらにこういう考察があるけれど、じっさいかなり当っているんじゃないかと思う。これは完全に私の推測だけれど、企画進行段階では最初はちゃんとここで推測されているようなプロットだったんじゃないか。歴史の強制力に対して抗い、敗戦の結末を回避しようとするというのが物語の主軸だったのでは、と。アニメでああいう不自然なことになったのは、全体構成を手直しできないような段階でこの動機付けの関係箇所をばっさり削らざるを得なかったような事情があったんじゃないか。それくらいぱっと見で不自然な構成だったしだからこそ非難囂々だったわけで。そうなるとこれは脚本段階ではなく、シリーズ構成のミスでもなく、もっと上の段階でなんかトラブルがあったんじゃないかと疑っている。史実の回避、敗北の回避ってまあアジア太平洋戦争の勝利を目指すこととニアイコールになるので、そういうネタがまずいと見なされたとか。公式ツイッターとかで自衛隊との関係づけを避けていない雰囲気なあたりそういう注意深さがあるとも思えないけれども、アニメ版は何かが意図せず削られた感じがやはりある。製作委員会? 局? とか、上のレベルでの判断だとするとこの問題についてスタッフとかから証言が出ることもないのかな。
いろいろあるけれど、この四話のコンテを解読した記事がきわめて秀逸で、これを読むだけでも見ていた意味があったなと思った。不自然に人が出現している場面には確かに違和感があったので、この不在と存在の解読は、コンテはそう読むのかと発見があった。

別の話

松来未祐の逝去はショックが大きい。ラジオ「寝起きにポテトチップス」とかよく聞いてアルバム出したり演劇やったりした話とか聞いてたし、あるいはたまゆら関係もそうだし、ニャル子さん関連のニコ生番組とかで喜多村英梨大坪由佳とかとでているのをよく見ていたこともあって。天真爛漫なエンターテイナーという感じで、画面の向こうの人にもかかわらず訃報を聞いてどうにも悲しく涙が出そうだ。去年、のうりんベッキーの描き方の批判をしたとき、念頭にあったのはこの松来さんの結婚関連をネタにする風潮だった。そのうち書こうと思っていたら先に本人が亡くなってしまった。ここで持ち出すべきではないと思う人もいるだろうけれど書いておきたい。私が思うのは松来さんは本当に結婚したい人だったのか、ということ。親の反対を押し切って声優になって、仕事が大好きで最後まで意欲を失わなかった人だった彼女だ。どこかで語っていたけれども、その声優への進路以外は親の言うことを非常に良く聞く、両親が大好きな娘だったはず。結婚も親に言われていたようだけれど、彼女自身は実際には結婚したくなんてなかったんじゃないかと思われてならない。仕事に生きる自分と、親の言うことを聞かなければならない良い子というジレンマが彼女の結婚ネタだったように感じてしまう。それが、有能な女性の性的魅力をけなすことで優位に立とうとするミソジニックな「結婚できないネタ」として消費されていた構図のように思える(足柄結婚できないネタと似てる)。結婚できない、と笑う人に対して、彼女は結婚しない人だった、という見方を私はしていたわけだ。邪推に過ぎないだろうし、彼女のもっと熱心なファンや身近な人は全然違う印象かも知れないけれど、私にはそう見えた。
ありがとう : 松来未祐日記
彼女自身は死をも覚悟していただろうに「私は、私に生まれて幸せです。」と言い切れる強さ。そういう風にいろんなものを積み上げてきた人だったんだろう。若すぎる死だけれども、心残りも多いだろうけれども、彼女は「幸せ」だったと言い残した。

1/12 追記ついでに文中の固有名詞等の誤字脱字を修正。はてなブックマークで突っ込まれた部分は残した。

*1:ラジオ・アニメの共演者の方が出世してしまう状況をいったものだと思うけれど、これ自分で言っちゃうところ笑うしかない