佐伯昭志『ストライク・ウィッチーズ Memorial Episode いっしょだよ』とプレアデス四話小説版

2008年のTVアニメ「ストライクウィッチーズ」の一期六話を脚本コンテ演出担当者が自らノベライズ。アニメ一話を140頁ほどの小説にしつつ、誕生日の書き下ろし短篇でエイラとサーニャ描写を足したり、解説付脚本決定稿までついていてすごい情報量がある。

一話でこの分量なので、やりとりや背景情報などがかなり補足されているけど、脚本家本人ということもあり違和感はない。巻末の脚本と読み比べるとここは小説でこれだけ書き足されたのかってところが確認できる。この頃はエイラとサーニャがまだそれほど親密ではないとか、この二人の関係にしてもそういえばそうなのか、と意外でもあり。アニメの絵と音という圧倒的アドバンテージがないとしても、より静かでモノローグ的な印象の強まる雰囲気がある。テレビシリーズの途中の一話なので、さすがに何も知らない人に勧められるかどうかはわからないけれども、まあキャラ紹介があるのと基本三人の話なので大丈夫かな。

放課後のプレアデス四話「ソの夢」とモチーフを共有する話で、脚本解説でも著者がプレアデスに言及して、孤独な少女、月、ピアノは物語のモチーフとして強力で、まだまだ作れる、と書いてもある。プレアデスファンはストライク、ソの夢、音楽ウィッチーズと続く佐伯監督作品史として読んでおこう。

本開いて気づいたけど、表紙イラストやキャラ紹介以外のカラー口絵や本文イラストは百合漫画や猫と皇女と野良猫ハートの外伝漫画なんかを描いてる竹嶋えく。漫画読んだことあるから見つけた時驚いたけどなるほどの人選。わりと変な四コマ漫画も付いている。

そしてここでも出てくるサン=テグジュペリ。『夜間飛行』のモチーフ。プレアデスは『星の王子様』だったわけだし、佐伯監督作品鑑賞のためにはサン=テグジュペリが欠かせないぽいな。読まないと。しかし私まさにプレアデス放映中に『星の王子様』読んでたけどモチーフに気づかなかったからなあ。

およそ百枚の長さだったので、時間が出来たら、と思ってた佐伯昭志監督による放課後のプレアデス四話ソの夢小説版も読んだ。ひかるの共感覚、両親の舞台裏補足や、改めて読むと大気圏を突破して月にいくことと父のピアノを聴けないことという、未知のことへの怖れのラインが浮き上がる。「すばるん」って呼ぶのはひかるの内心でのそれで、夢を経てこの話数で始めて口に出されているっていうのが書かれているのもポイントだな。ウィッチーズのエピソードもソの夢も、ひかるとサーニャの初めて見る表情、がフォーカスされている。父の曲を聴きながら見た夢のなかで月はお菓子でできた世界なのは、これは、「曲を楽譜で表現するように、いつかこの色や形を描き現すことが出来たら面白いだろう」というひかるの夢、と繋がっているんだろうか。


いっしょだよ、は佐伯監督からの持ち込み企画というけれども、数年前に予告していたものの四話だけが突如pixivで公開された放課後のプレアデスのノベライズ企画と関係してるんだろうか。プレアデス四話は百枚あるから、全13話のノベライズとなると千枚を超える規模になるはず。分厚い単行本か、上下巻にはなる。四話だけが公開されたのは、ノベライズ企画が頓挫したというのでなければいいんだけれど。