「アイヌ民族とオーストラリア先住民――同化・差別と研究の現在」 | 2016年1月21日(木)18時~20時半 | 東京外国語大学本部管理棟中会議室 - SFWJ:イベント案内
東京外語大*1で行われた表題イベントに参加。岡和田晃、マーク・ウィンチェスターのおなじみの二人と、アボリジニ研究の山内由理子という演者による、少数民族問題を国際的視点からも見てみようという試みです。
- 作者: 山内由理子
- 出版社/メーカー: 御茶の水書房
- 発売日: 2014/09/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 岡和田晃,マークウィンチェスター
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/01/27
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マークさんは金子議員とその否定論の源流たる文化人類学者河野本道の問題についてのもので、河野は小林よしのりが大々的に広めた否定論をレクチャーした人物でもあり、彼の存在は現在の否定論にとって抜きがたい存在です。しかしその彼は元々「アイヌ解放の夕べ」といったイベントに登壇していたようなアイヌ解放運動にかかわっていた人間で、それが90年代なかごろから変質し、死去直前には日行会というヘイト関係団体で講演するなど否定論へと傾いてしまいます。
この二者の発表の後に発言したのが、ある河野本道の論文を収録した書籍の編者の清水昭俊氏でした。
- 作者: 清水昭俊
- 出版社/メーカー: 世界思想社
- 発売日: 1998/09
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ただ、思ったのは、河野のアイヌ二分法は、ある少数民族に対し、多数派が同化するか否かの決断を迫るというきわめて問題のある立場からなされている、と思える点です。そりゃあ、そう二分することは清水さんも言うように可能ではあるだろうと。しかし、その二分法はそもそもがきわめて差別的な地点から発しているのではないかという疑問を挾まずにはいられません。「定義」の問題もそうですけれど、そこでは多数派の「日本人」は定義を問われず、二分法も迫られないわけです。とはいえしかし、この二分法はヘイトスピーカーによって、差別を批判する日本人に適用され「反日日本人」として現われてくる。ポストアイヌ、ニューアイヌというのはつまるところ、この「反日」とどう違うのか。
これは清水さんだったと思うのですけれど、アイヌ解放運動も、近年の行動も、アイヌ協会や体制に依存するな、という点では右からか左からかの違いはあっても同じではないか、という指摘があり、それは興味深い観点でした。しかしそれが差別運動と野合してしまう点に河野晩年の問題がある、とは言えるでしょうか。
山内さんの発表は、都市部におけるアボリジニを研究する立場からなされたもので、アボリジニの居住地の分布や、マイノリティコミュニティにおける人間関係の問題等に触れていて、内部であの人はアボリジニではない、という陰口があったりする状況について、現地での話なども踏まえたもので、こちらは全然知らないことでもあり、面白く聞きました。イベント後に、ああいう話はアイヌでもあるあるだ、という話もされていて、マイノリティコミュニティに普遍的な問題でもあります。
司会の友常勉さんがうまくまとめて講演終了となりました。
開始時間が遅いのでいろいろ後に伸ばせないところがもったいないところでした。イベント後の打ち上げにも参加しましたけれども、そこでは友常ゼミの人達が、ドイツ語とかベトナム語とかアラビア語とかをやってた人なんかで現在のテーマとかも面白くて、すごい人材だと驚くばかりでした。アラビア語の人がアナキストでアウトノマス(オートノマス?)運動についてやっているということで面白い人だったのが印象的。ネグリとかのアウトノミア運動と言った方がわかりやすいかな。
打ち上げで名前を出して、誰にも通じなかったのが声優利根健太朗で、彼は外語大のタガログ語専攻。ラジオとかでフィリピン舞踊のマグララティックを披露していたり、語劇について友人の俳優鈴木亮平との思い出を語ったりとかしていた。打ち上げでずっと思い出せずにいたのは、このマグララティックという踊りの名前。音ズレしているけれど、彼の踊りがネットにあった。
日笠陽子、折戸マリ、利根健太朗でこれをやった音源もネットにある。アイムの3バカトリオのダンスを本家と合わせてみた - ニコニコ動画。何の話をしてるんでしょうね。