北海道新聞「現代北海道文学論」に山下澄人論が掲載されました

山下澄人芥川賞受賞作『しんせかい』について書いた原稿が北海道新聞11月1日夕刊に掲載されました。そして、今日ウェブ版も公開されました。
<東條慎生> 【山下澄人】原点としての富良野塾 表現法、倉本聰への返歌:どうしん電子版(北海道新聞)

しんせかい

しんせかい

芥川賞受賞作「しんせかい」は、北海道富良野倉本聰が主宰していた私塾、富良野塾での体験を題材にして書かれていたことは周知の話で、拙稿は、山下の表現を、倉本聰の著書と対比させるかたちで書いたものです。

みながみな倉本聰との関係に言及するわりに、言及するだけに留まるので、それなりに面白いアプローチになったかと思います。まあ、富良野塾が舞台になっているので、富良野塾って何だろうと調べてみたら、ちょうど倉本聰自身がその記録を書いているのを見つけたのと、『北の想像力』で倉本の『ニングル』がレビューされていたのを思い出して両著を読んでみたところ、これが絶妙に関係していて面白かったのが原稿のとっかかりになりました。

ニングル

ニングル

谷は眠っていた―富良野塾の記録

谷は眠っていた―富良野塾の記録

なお、「昨日夢で見たことと昨日経験したことは一緒」という文言は佐々木敦によるインタビュー「山下澄人 「測り知れへん領域(ゾーン)」で書く」(文學界2017.3月)からの引用です。

山下は富良野塾卒業後、いろいろあって劇団FICTIONを主宰して、あるときそこに保坂和志を招待したときの公演がじつは「しんせかい」という劇だったりもします。内容はほとんど別物だけれど、知らないところに働きに行く、ということが共通しているとは山下自身が述べている。
その時の保坂和志の観劇記録が以下の文章。
遠い触覚 第三回
保坂和志公式サイトに劇団FICTIONからメールが来たことを記した管理者のブログが以下。
極楽ランドスケープ