
- アーティスト: Flower Kings
- 出版社/メーカー: Inside Out U.S.
- 発売日: 1999/11/16
- メディア: CD
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花王・フラワーキングスの通算四作目(バンド名義としては三作目)にして前作に続きまたしても二枚組140分を超える大容量。今回の作品では、一枚目に18のパートに分かれた60分に及ぶ大作「Garden of Dreams」組曲を配し、二枚目には四分から十数分程度の楽曲が詰まっている。
一応の目玉は一枚目の超大作なんだろうけれど、やはり長すぎてまとまった印象にならず、思い入れはない。部分部分ではもちろん聴き所はあるし、聴いていて退屈するわけではないのだけれど、何度も聴こうとは思わない。ライブでは短くして編集したバージョンを演奏したりしていたらしいけれど、そっちを聴いてみたいとは思う。
個人的に(レビューを見る限り多くのリスナーの意見もそうなのだけれど)、良く聴くし、曲に好きなものが多いのは二枚目の小曲集だ。「小曲」とはいっても十分超の曲が二つあるなど、充分に長尺だが、これぐらいの長さがやはりプログレ的には聴きやすい。CDだからといって二十分や三十分の曲を多作するバンドが多いのだけれど、プログレは個人的には十分前後がもっともバランスよく聴ける長さだと思う。せめて十分台だ。
二枚目の楽曲は、メロディアスでポップ、そしてプログレな演奏を堪能できる珠玉の佳曲ばかりだ。今作はむしろ、こっちがメインで一枚目がおまけだと思った方がよい。二枚目だけを聴いても充分満足してしまうアルバム。
1.Deaf, Numb & Blind
ザ・フーの「トミー」を思わせるタイトル。冒頭ギターが力強くメロディを奏で、少し経つとアコギがすっと入ってきたりキーボードのユーモラスなフレーズを挾んで、ヴォーカルパートへ。前半のポップな歌メロから後半でのしっとりしたメロディへの展開が絶妙だ。演奏でもアコギが要所要所で顔を出し、キーボードやSEでユーモラスな雰囲気を作ることも忘れない。エンディングでも活躍するギターのメロディがやはり印象的。
2.Stupid Girl
タイトルからは意外な、非常に優しげな歌が印象に残る歌のパートから、一転後半はテンションの高いジャムっぽいパートへ展開する意外性の強い一曲。
3.Corruption
わりと普通な感じがあるメロディアスなバラード。
5.Psycedelic Postcard
キーボードによるインストを挾んで、長めの歌もの。初っぱなからエフェクトがかかったユーモラスなヴォーカル。楽しげでポップな歌メロが気持ちよい。ギターはもちろんとして、ピアノやアナログキーボードを多彩に駆使するキーボードワークも楽しい。
7.Magic Pie
暗めのインストを挾んで、「Church of Your Heart」っぽくもある優しげなフラキンバラード。まあ、名曲でしょう。
8.Painter
これもスケール感のある優しいメロディが印象的なフラキンらしい佳曲。たぶん、こういう曲はいくらでも作れるんだろう。
9.Calling Home
サビ部分のメロディがたまらなく美しい名曲。同じメロディをハード目に変奏したりとプログレ的な展開もまた面白い。アルバム終盤に配置されることで良さが引き立つ曲だ。今作では一番好きだな。
10.Afterlife
静かめのインストと思わせて中盤でどかんとくる。締めのインスト。
歌ものの充実がすばらしい今作だけれど、最近出た短めの曲を集めた二枚組ベスト盤では、今作からの収録曲はたったの二曲。2と8だけだ。7や9があっさりはずれているのを見るにつけ、フラキンの膨大な楽曲の量と質にはやはり驚くばかりだ。
楽曲の質には安定感があり、ほぼ一年に一枚以上のペースで生産を続けていながら、それなりに変化を続けているので、安心して楽しめるバンドだ。