QUIDAM - Alone Together

Alone Together

Alone Together

ポーランドのバンド、Quidamの五枚目、2007年リリース。もちろんこのキダムは来ない方のキダムで、フルート入りプログレバンドの方のキダム

Quidamといえば、90年代のフルートと女性ヴォーカルが特徴的なデビューアルバムが名作とされていて、Genesis(というより、スティーブ・ハケットか)、Camelの影響を強く受けたサウンドが魅力だった。確かに1stアルバムはかなりの作品だと思うけれど、二枚目ではポップになって多少魅力が薄れ、かなり評判の良い三作目は手に入らず、その後目玉だった女性ヴォーカルが抜けてしまったという話を聞いた。

ヴォーカルを男性に変えて四作目を出したらしいのだけれど、これも未聴。で、今年出た新作が結構評判が良かったので、ディスクユニオンでちょうど良く置いてあったのを買ったところ、これは確かに非常に秀逸な出来だと驚かされた。

そもそも、初期Quidamとはアプローチがかなり異なっている。ギターとキーボードだけは初期から変わっていないけれど、初期のいわゆるジェネシス系路線とは異なり、時折TOTOなどのAORを思わせるような、アダルトでちょっとジャジーな雰囲気も持ち込んで、非常に落ち着いた音になっている。キーボードもピアノを多用し、アコギ、フルートなどのアコースティックな音色を随所に盛り込んで、巧みにアンサンブルを構築していて、非常に聴き応えがある。ドラムも良いし、ベース(フレットレスも使ってるのか、時々コリン・バースのソロや彼のいるときのキャメルみたいな感じにもなる)もムーディな雰囲気を持っていて面白い。

ジャケットもシックで落ち着いていて、タイトルが示すように「Alone」というテーマを表現するためか、音全体に夜の雰囲気が満ちていて、それがとても良い感触だ。エレクトリックギターも非常に情感豊かで聴き応えがあるけれど、個人的にはフルートとピアノの音色が秀逸だと思う。ギター、フルートと明らかにキャメル、ハケットの影響が濃いが、この方向性でまとめたのはなかなか面白い。なんというか、プログレだけれどあんまりプログレ臭くない。

アルバム全体でも、時にハードで軽快な音が聞かれはしても、孤独、夜というテーマで曲が続いた後、PSと副題された終曲で非常に肯定的に爽快な調子をの曲を持ってくるあたりの展開もすばらしい。

初期とはかなり違う方向性にもかかわらず、これほどの完成度のアルバムを作ってくるこのバンドの地力にはかなり感心した。2007年もののなかでも、かなりの高ランク作。

以下、各曲。
1. Different (3:16)
囁きのような渋いヴォーカルから、ドラマティックなギターソロへとつながるシンプルな曲で、期待がふくらむオープニング。だいたいこれを聴いた時点で、おお、と引き込まれる。

2. Kinds Of Solitude At Night (6:00)
ミドルテンポなバラード。ピアノのバッキングが印象的。ギターソロはやはり良い。

3. Depicting Colours Of Emotions (10:18)
ムーディなベース主導のイントロにフルートが絡むあたりのセンスが良い。というか、曲中でのフルートの使い方がとても良い。後半ややハードになるが、再度前半のメロディラインが戻ってきて、ギターソロへと展開。ソロもバックの演奏も良く、最後にはギターとピアノのデュオで終わるあたりも秀逸だ。

4. They Are There To Remind Us (7:49)
キーボードが前に出たスタイルで、プログレ寄りの曲。爽やかな歌が心地よい。ピアノソロからフルートソロへと展開して、その後いかにもプログレなリフレインが入る。ピアノソロがジャジーな感触。各楽器をバランス良くフィーチャーしていて面白い。

5. Of Illusions (8:04)
前曲よりアッパーな印象的なイントロから、やや落ち着いた歌メロへ展開し少しずつ盛り上がっていってサビでイントロに戻る。インストパートでのギターとフルートの絡みがやはり秀逸で、むしろ歌よりインストが魅力のバンドに思える。いや、歌も結構良いんだけれども。

6. We Lost (8:26)
秀逸な歌メロとフルートの絡みがやはり面白い。そして後半怒濤のテンポアップからハイテンションなサックスソロに続くあたりのセンスは見事。ここでサックスが出てくるのが格好良い。

7. One Day We Find (6:46)
これはわりと普通かな。悪くはない。

8. We Are Alone Together (8:20)
ピアノ、アコギとアコースティックサウンドに、ヴォーカルというスタイルから、ギターがフリーな演奏で間をつなぐ。淡々としたリズムがいかにも終わりという雰囲気を作り出していて、どんどん音が少なくなっていき、少しずつフェードアウトしていく。

9. P.S. But Strong Together (4:25)
しばらくしたら突然バンドサウンドで切り込んでくる。ポジティブな雰囲気と軽快なサウンドが非常に気持ちよく、サビのメロディも良い感じだ。フルートソロのメロディも秀逸。


最後の爽快さがとてもポジティブで良い終わり方だ。全体的なクオリティが非常に高く、センスの良いアレンジが気持ちよくて、聞き飽きない。突出した曲があるというわけではないと思うが、全体としてまとまりがあり、センスの良さと質の高さで相当カバーしている。初期からの方向転換は非常にうまくいったといって良いと思う。

QUIDAM discography and reviews

プログアーカイブの2007アルバムランキングではなんと4位につけている。ここのランキングとはあまり趣味が合わないことが多いけれど、これはさすが。
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