Amarok - Sol De Medianoche

Sol De Medianoche

Sol De Medianoche


スペインのトラッドプログレバンド、アマロックの今年(2007年)リリースの最新アルバム。前作(http://d.hatena.ne.jp/CloseToTheWall/20070602/p1)に引き続き、本格的トラッドにアナログキーボードなどのプログレ要素を導入したサウンドが聴ける。

たぶんスペイン南部のバンドなのだろうと思わせるトラッド面は、スパニッシュなだけでなく、エスニックだったり、地中海、中近東色が感じられ、かなりクセの強いもので、そこに艶のある情熱的な女性ヴォーカルが加わり、明らかに熱帯地方を思わせる音になっている。トラッドプログレとしては現在、ケルティックプログレの最高峰、Iona・アイオナと双璧をなすとも言われている。アマロックが熱帯風なのに対し、アイオナケルトを土台にしていて、硬質で冷たい感じがするところなど、対照的な位置だと感じる。

また、たとえばマウロ・パガーニのソロ「地中海の伝説」あたりと似た感触もあり、そちらのファンにもアピールするのではないかと思われる。ライブでは、パガーニの居たPFMやジェスロ・タルの曲も演奏しているようで、その選択も面白い。フレアークばりのアクロバティックなパフォーマンスもしているらしく、ライブ音源や映像をリリースして欲しいところ。

楽器編成がまた多彩なのは前作と変わらず、中心人物のロベルト・サンタマリアはキーボード、アコーディオン、12弦ギター、ダルシマーオートハープシロフォン、グロッケン等々、聴いたことのない楽器も多数演奏している。そこにフルート、サックス、ドラム、ベース、リードヴォーカルで六人が本メンバー。そこにエレキギター、スパニッシュギターとテルミン、バイオリン、トランペット、バックヴォーカルその他何人ものゲストが参加している。テルミン……。

タイトルは
1.Sephiroth (4:17)
フルートがリードするトラッドな演奏に女性ヴォーカルが歌い上げる。バックでメロトロンっぽいのが鳴っているのがプログレ要素か。しかし、いつものことだが鳴っている楽器がなんなのかいまいち判別できない。後半でパーカッションと交互に出てくるのは、アコーディオン

2.Hermits (10:46)
スパニッシュなギターのイントロ、ベースがユニゾンし、フルートがリード。その後リズム隊が入り、バイオリン、フルート、ピアノ、エレキギターと楽器が入り乱れてのアンサンブル。一段落し、ヴォーカル。このヴォーカルが入ると、一気に曲の雰囲気が決定してしまう。情熱的であり、呪術的なスキャット。フルートとバイオリンによるアコースティックな演奏が続き、アコギでの静かな演奏の後、変な音の楽器をきっかけに、最初の歌がリプライズしてくる。そこで、いかにもなプログレキーボードのソロ。その後はバイオリンとフルートが交互にきたり、ユニゾンしたりスピーディな演奏になり勢いよく終了。

3.Xiongmao I (1:13)
小曲。フルートと琴みたいな音の楽器がメインで中国、日本風の印象。

4.Wendigo (7:11)
誰かの唸り声をイントロにして、プログレキーボードがメインに踊り出る。ヴォーカルやサックス、フルートなども交えつつ、キーボードがここぞとせり出す。しかし、このバンドは演奏する楽器が多くて、ピアノ、キーボード、サックス、フルート、バイオリン、エレキギター等々のメインでリードを張れる楽器がパートごとに入れ替わって来るので、音のバリエーションが非常に多彩。で、エレキギター(ゲストだし)の比率がとても少ないのも特色か。

5.Duete For Hang And Bass (2:09)
その名の通り、ハング、とベースのための曲らしい。ハングが何かはわからない。イントロでの打楽器なのか、スチールパンみたいな音の楽器のことなのか。

6.Mama Todarka (2:02)
非常に民俗的なヴォーカルが聴ける小曲。

7.Ishak The Fisherman (12:04)
ブズーキとかみたいな弦楽器の音がするな、と思ったらイントロはたぶんTurkish saz(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%BA)だろう。エスニックなサズの音色に、バイオリン、フルートの演奏が被さり、ヴォーカルの登場。中間部ではフルートとも違う笛の音。バイオリンにフルート、そしてパーカッションでの演奏が続き、トランペットなども入ってくる。メロトロンやシンセの音色も聞こえる。このバンドの音楽性は、トラッドロックのアンサンブルに、プログレキーボードも数ある楽器のひとつとして演奏されていて、プログレ要素が全面に出ているわけではない、というところだろう。まあ、静かなパートなどではメロトロンを多用してもいるのだけれど、そういったキーボード群が特に大仰に使われているわけではなく、案外巧妙に溶け込んでいる。プログレにトラッドを加えたのではなく、むしろトラッドにプログレを加えた感じがする。この曲もサズやフルート、バイオリンなどの方がメインでリードを張っていて、そっちの印象が強い。

8.Eight Touts (3:03)
蛙の鳴き声みたいな音の楽器や、エレキギター、バイオリン、プログレキーボードがリードする変拍子っぽい曲調。

9.Midnight Sun (13:34)
アルバムタイトルの英訳題がついたタイトル曲。鍵盤打楽器とヴォーカルの導入部から、リズム隊がきて、情熱的な歌パート。キーボードメインのインスト部分は非常にプログレ的。キーボードはELPジェネシスの影響が強い感じ。しかし、キーボードが出てきてプログレっぽくなっても、すぐに他の楽器群が参入してきて、プログレっぽさをトラッド色で押しのけてしまうのが面白い。後半でのインスト部分ではジェネシスみたいなメロトロンに、ELPみたいなキーボードがソロを弾いたりしている。そこに、トランペットと激しいヴォーカル。すぐに牧歌的なフルート演奏がきたりして、起伏の激しい展開。最後は穏やかにアカペラで終わり。

10Xiongmao II (0:41)
インスト小曲。

11.Abaddon's Bolero (8:06)
ELPの奈落のボレロのカバー。多彩な楽器が入れ替わりにメインメロディを演奏していく。楽器のレパートリーの広さを生かしたカバーだ。