Hostsonaten - Springsong

Springsong

Springsong

Fabio Zuffantiというイタリアのプログレミュージシャンによるプロジェクト、ホストソナテンの2000年リリース作。春の歌、という題名通り、今作は春をテーマとしたインストゥルメンタル作品で、Seson Cycle Suiteという四部作のパート4。ただリリース順では第一作となる。四作を通して四季を描くらしく、2008年に冬の「Winterthrough」がリリースされ、秋の「Autumnsymphony」が一部で既に入手できるようだ。

プログレとはいえ、基本はフォークなインストで、ドラムやベース、ギター、ムーグメロトロンなどもあるけれど、主要なメロディを奏でるのはフルートやヴァイオリン、サックス、さらにはホイッスルやバグパイプといった生楽器だ。

メロディは明快かつ親しみやすいもので、穏和で牧歌的な自然の情景をしっとりと描写していく。Mike Oldfieldとか、あるいはゲームの村やフィールドの音楽とかが好きな人には堪らないセンスだ。ゲームミュージックの延長で聴いても楽しめるプログレ。とはいっても、戦闘曲みたいにテクニカルな場面や攻めのアグレッシブな演奏があるわけではないので注意。

1曲目「In The Open Fields」のメロディがまず印象的。このテーマは後に何度もリプライズされる今作の核となる部分。続く「Kemper」もいかにもファンタジーもののフィールドの音楽という感じの開けた風景を思わせる音ではっとさせられる。後半部の「Springtheme」はアコギの落ち着いたメロディにフルートが絡み合う牧歌的な綺麗な曲で、後半にはエレクトリックギターのソロへと雪崩れ込んでいく。

やや落ち着いた風の「Living Stone And 1st Reprise」ではヴァイオリンが特に印象的な活躍をしていて、センチメンタルな場面を演出している。後半では第一曲目のメロディがリプライズしてくる。ここら辺のヴァイオリン、フルート、さらにサックスが加わるアレンジは秀逸。

「She Sat Writing Letters On The Riverbank」というピアノとヴァイオリンのデュオは、落ち着いた、というよりは沈んでいくような静けさを描いている。曲中に挾まれる音声は、タルコフスキー「鏡」からとられたものとクレジットされている。次曲「The Underwater And 2nd Reprise」はベースランニングのうえに不安を感じさせるフリーキーなピアノ、サックス等が鳴り響いたあと、再度のメロディアスなギターによるリプライズ。

「Lowtide」は暗い夜の森を思わせるようなインスト。様々な楽器の散発的に鳴らされる音が動物の鳴き声に聞こえる。

「The Wood Is Alive With The Smell Of The Rain」はようやく明快なメロディが戻ってくる。ここ三曲あたりの流れは乾期なにかの描写だろうか。中盤からはキーボードのリフレインが印象的ないかにもプログレ風の演奏が飛び出す。そこにさらにフルートの牧歌的な音色が乗ってくる。

「Evocation Of Spring In A Fastdance」はヴァイオリンのスピーディなフレーズにエレピのバッキング。パーカッションも使われていて、曲名通り、ダンスをイメージしたやや楽しげな曲調。

終曲は13分の大曲で、三部に別れている。前曲を接いでアップテンポに始まる序盤はフルートのリフレインにサックスが加わりリズミカルに進んでいく。途中からは楽器が入れ替わり、ヴァイオリンがリフレイン、フルートがソロ、そして次はヴァイオリンのソロという風に多くの楽器を活用したアレンジが楽しい。最後はエレクトリックギターが良いところを持っていく。中盤は三度メインテーマのリプライズ。そして最後はメインテーマをバグパイプが演奏するあたりはなかなかの演出。いかにも大団円の綺麗なエンディング。


イタリアプログレとはいっても、特有のクセの強さはなくてかなり聴きやすい部類だろう。むしろ、プログレファンと言うよりはゲームミュージックのファンにこそ薦めたい作品だ。今年聴いたプログレ作品としてはかなり上位に入るアルバムで、新作も期待。ただ、「Winterthrough」はどうも私には印象的に響くメロディがなく、聴いても聴いてもあまり好きになれないアルバムだった。

ちなみに、今年今作のリミックス、追加レコーディングの新バージョンがリリースされている。以下のMySpaceでその音源が聴けるのだけれど、基本的には同じ素材でいくつか音が追加されているところがある模様。私は新版は聴いていないので判断は付かないが、今からならボーナストラックもあるし、新しい方が良いかも知れない。但し、Amazonでは扱っていないようだけれど。

と思ったら日本盤があった。

スプリングソング-ニュー・ミックス・ヴァージョン(直輸入盤・帯・ライナー付き)

スプリングソング-ニュー・ミックス・ヴァージョン(直輸入盤・帯・ライナー付き)

以下ではリリースされている三作それぞれから一曲ずつが試聴できる。
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