Kila - Gambler's Ballet

ギャンブラーズ・バレエ

ギャンブラーズ・バレエ

アイルランドのミクスチャートラッドバンド、キーラの最新作、2008年リリース。ケルトミュージックをベースにアフロ、カリブ、プログレを取り入れたという音楽性で、ノリの良いリズムにフィドルやパイプがアンサンブルをかますというスピード感あふれるもの。

簡単に言うとケルトミュージックでの、フィドルやパイプでのリフレインという上ものに、うねるベースラインやいくつものパーカッション(コンガやボーラン等)を加えた北と南のコラボレーション、とでもいうべきか。ケルトアイリッシュ音楽で、こういうリズムアプローチを行うバンドは珍しいと思う。

今作では前作「Luna Park」でのプログレ大曲路線は見せず、コンパクトな仕上がりの曲で構成された40分。聴きやすく、ちょうど良い時間設定で何度も聴きたくなる快作といえる。プログレ好きや抉り込んだ音が聞きたい、という人には前作だけれど、スピード感と入りやすさでは今作という感じ。

1.Leath Ina Dhiaidh A Hocht
いきなり少し驚かされたのがこの曲。歌ものでミドルテンポな曲調で少しおとなしめなのだけれど、中盤から突如パッヘルベルのカノン。クラシックまで取り入れだしたか。パイプでのメロディのカノンがとても良いです。凄く自然に嵌っているのが凄い。
2.Electric Landlady
なぜかジミヘンのパロディ曲タイトル。これぞKilaというドラムとベースの痺れるイントロにフィドルのリフレイン。格好良すぎる。冒頭の音はハンマーダルシマーかな。中盤のホイッスルデュオがいい。
3.Cardinal Knowledge
これは名曲。ホイッスルのメロディが叙情的かつスピーディ。ケルト音楽にはこの種の情感のあるメロディを凄くスピーディにリフレインするものが多くて、そういうところが私は特に好きだったりする。叙情的だがテクニカルなアンサンブル。突き抜けるようにクール。
4.Duisigi
ローナンのゲール語ヴォーカル。ゲール語の歌は独特の鼻にかかるような発音が特徴的で、これはちょっと好みが分かれると思う。楽しげな空気のある曲だ。
5.Sea Mo Leaba
これもヴォーカル曲。ここではアコギが中心の音作り。
6.Fir Bolg
重厚でユーモラスな雰囲気。重いリズムにフィドルがのり、だんだん音が厚くなっていく。後半はタブラ、ボンゴ等パーカッションも活躍する分厚さ。
7.Boy Racer
来ました、とばかりの高速パイプが炸裂するハイスピードナンバー。息継ぎが必要ないイーリアンパイプならではのマシンガンな音符の連打に否が応でもテンションが高くなる。ちなみにこの曲でのエレキギターHEATWAVE山口洋
8.Her Royal Waggeldy Toes
超名曲。エレピとベースでのジャズっぽい導入から、ホイッスルでのメロディ。そしてすぐにパイプが同メロディをリフレインし、そこにホイッスルが合流する。このメロディがとても素晴らしい。最高だな。
9.Cabhraigi Lei

ラストは明るくヴォーカル曲。

うーん、隙がない。ぎゅっと濃縮された40分という感じだ。インスト曲の充実ぶりはさすがで、ヴォーカル曲も楽しい。パイプやフィドル、ホイッスルといった楽器陣でのメロディも秀逸だし、ベースやパーカッションの活躍も良い。

BL~ベスト&ライヴ

BL~ベスト&ライヴ

そういえば、このアルバムの曲は最初、どうも聞き覚えがあるなと思っていたら、このベストとライブの二枚組でのライブ盤の方には、589がすでに収録されているんだった。となると、このベスト一作で、初期からこの最新作までのすべてのアルバムからの曲を聴くことができるということになる。お得だなあ。初期作はやや入手しづらいこともあるので、これから聴くのも良いかも知れない。