2010年聴いていた音楽

今年はそもそも音楽関係の記事をほとんど書いていなかった。そもそもCDを買う枚数が半分以下になっていたので、ネタも少なかった。記事自体が今年聴いたものについては、伊福部昭とベックマンさんの二つしか書いていないという有様。
伊福部昭 - 協奏三題 - Close to the Wall
「M3-2010秋」に行った - Close to the Wall
まあ、ネタも少ないので、今回は簡単に。

まず今年一番の一枚。

オオフジツボ

空の鼓動

空の鼓動

KBB、Era、一噌幸弘グループ「しらせ」等々でも活躍するヴァイオリニスト、壷井彰久と、ポップス、ソウル、演歌などで活躍するギタリスト太田光宏、アイリッシュスコティッシュトラッドグループ、Rivendellに所属するほか、Zabadakやガストのアトリエ関係等でのセッション活動などもあるアコーディオン奏者藤野由佳によるトリオバンド。元々はアイリッシュトラッドを演奏するグループだったらしいけれど、次第にオリジナル曲を増やしていっていまに至る。

壷井彰久関連のバンドはどれもが名作、傑作揃いで、これもきわめて出来の良いアイリッシュトラッド系サウンド。元々出た時から買おう買おうと思っていたのだけれど、Youtubeにあるこの動画を見て、すぐに手に入れた。

これはアルバム冒頭の「Eternal Reflection」という曲。

今年のベストの一曲を選ぶとすれば、ダントツでこれ。素晴らしい。ヴァイオリンによる鋭い演奏が疾走感をもたらし、アコーディオンが牧歌的で穏和な雰囲気を醸し、スピーディながらもメロディは抒情的で、中盤ではより物悲しく展開し、ラストには二つの主旋律を絡み合わせてドラマティックに展開するという、メロディ、構成、演奏、音色のどれもが素晴らしい。作曲は壷井彰久。

たとえばAcoustic Asturiasの「RYU-HYO」、SIBERIAN NEWSPAPERの「WORDS ROBBIN TALKS ARE」といった個人的な傑作に匹敵する。
Acoustic Asturias - Ryu-Hyo - YouTube
SIBERIAN NEWSPAPER「鳥が喋る言葉とは・・・(WORDS ROBBIN TALKS ARE)」 - YouTube
一曲だけ突出しているけど、他ももちろん良い。躍動感あるトラッドになっている。やはり壷井彰久関連にはずれはない、と思った。いろんなジャンルを飛び回っても、そのどれでもまず曲がよい。これは強い。

KBB

Lost and Found

Lost and Found

もうひとつ壷井関連は、メインバンドといっていいのか、プログレバンドのKBBのファーストアルバム。セカンド以降は手に入れたのだけれど、この1stだけは入手困難で、ずっと探していた。ところが、Amazonでmp3ダウンロードが始まった時、KBBで検索をかけてみるとこの1stだけは販売していた。ダウンロード販売を利用するのはこれが初めてだった。

聴いてみると、セカンド以降とはちょっと毛色が違っていて、1stではもっとプログレ寄りの音になっている。いかにもプログレ、というキーボードサウンドがより前面に出ている。そして相変わらずのレベルの高さ。Kensoと並んで世界レベルで勝負できる日本のプログレバンドだろうと思う。ヴァイオリンフロントのバンドとしても傑出している。

スタジオ盤だとこの曲、冒頭はずっとギターで、途中からヴァイオリンが入ってくるにくい構成になっていた。動画は音がずれている。ちなみにベースのDaniはゲーム会社ガスト作品のサントラに頻繁に参加しているのでそれで名前を知っている人もいるのではなかろうか。

Lost World Band

Sound Source

Sound Source

Amazonのmp3ダウンロードといえば、これ。ロシアのプログレバンドで、ギター、ベース、ヴァイオリンをこなし、全楽曲の作曲をしているリーダーと、フルート、ドラム、キーボードという四人編成。2006年の「Awakening of the Elements」というアルバムは、界隈でわりあい評判になり、私も結構聴いていた。で、サードが出たと聞いてこれも聴いてみようかなと思ったままになっていたとき、Amazonで検索したら、このアルバムがなんと600円でダウンロード販売されていたのを見つけた。日本盤が3000円とくらべてあまりの安さにすぐに入手した。

基本はこういったロックインストなんだけれど、アコースティックでクラシカルな曲もあったり多彩。これ、ベースはキーボードの人がシンセで鳴らしてるのかな。

ずいぶんとレベルの高いアルバムながら、ものすごく安いのでその面からも強くオススメの一枚。

Moon Safari

Lover's End

Lover's End

このバンドはフラワーキングスのキーボード、トマス・ボーディンがプロデュースしてデビューしたという北欧のバンド。以下のブログでちょっと聴いてみたところ、とても良かったのでアルバムを探したらなんと800円でダウンロード販売していたので早速買った。
http://camelletgo.blog130.fc2.com/blog-entry-77.html
フラワーキングス関連という点で、確かにフラキンのポップ面を受け継いでいる印象はあるけれども、土台は80年代あたりのポップ職人的なものに思える。あまりそこら辺は聞き込んでいないので、Tears for Fearsとかしか名前が出てこないけれど、そういう感じの。

プログレ、というよりは基本は職人芸的なポップスがあって、その味付けとしてプログレ要素を使っている印象。レトロな音色のキーボードだとかが非常にうまく曲に溶け込んでいる。ポップなメロディの良さ、爽やかで厚いコーラス、ところどころにプログレ要素を散りばめて、むしろプログレファンでない人に訴求しそうな仕上がりになっている。わたしはポップなだけだと耳を素通りしてしまうことが多いのだけれど、こういうトリッキーなフックがあると俄然好みだ。

全体の完成度も非常に高く、とにかく出来の良いアルバム。

The Mars Volta

Bedlam in Goliath

Bedlam in Goliath

プログレ部門としてはこれも良かった。テキサス出身のバンドで、ラテン系音楽の影響があるといわれるけれど、基本はハードコアとかパンク、エモ等といわれるジャンルの音に聞こえる。その上、これがラテンのノリというものなのか、始終やたらとテンションが高く、ものすごく「うるさい」音なので、個人的には趣味ではないのだけれど、このバンドはなぜか結構聴ける。十分二十分とかの長尺曲もやったりするプログレ度も高かったりして、現代的なプログレという意味では非常に面白いバンド。むしろ、プログレという文脈ではないところから聴かれているバンドに思う。

1stからずっと聴いているけど、最新作はちょっと微妙で、このアルバムが非常に好みだ。特にいいのは十分近い「Goliath」。

歌がいいんだけど、それ以外にもインストパートがなかなか聴かせる。さらに、中盤のインストパートでKing Crimsonの「21世紀の精神異常者」を下敷きにしている(四分すぎのところ)のが面白い。

おもしろいのは上に貼ったPV動画で、一切場面も転換しないまま十分映し続ける勇気と、演奏者がまったく当てフリする気がない(そもそも持ってるモンがおかしい)野放図さにくわえ、途中でのとあるアクシデントにはえらく笑わされた。この適当さはニコ動向き。
【カオスPV】The Mars Volta - Goliath【ゴリアテPV】 - ニコニコ動画
NHKプログレ三昧は、現代プログレの紹介が適当すぎたけれど、この曲がかかったのは良かったと思う。

school food punishment

amp-reflection

amp-reflection

知人に曲をくれ、と言われて、アニメ「東のエデン」でoasisがOPに使われているのを知った時、ついでにEDも見てみたらむしろこちらが印象に残り、アルバムの方を聴いてみたらこれが良曲揃いの良くできたアルバムで、今年後半はこれを良く聴いていた。

EDに使われた曲はややトリッキーな印象があり、ストリングスも効果的な一曲。他のどの曲もポップでノリが良く、動きながら、あるいは歩きながら聴いていてとても気持ちがよい。邦楽部門ではベスト。

これに限らないんだけど、ブレスと言うのか、呼吸音を入れるの辞めてくれないかな、ってよく思う。

Sei


これはすごい。誰に向けて作ってるんだ、おれにか? というくらいヒット。菊田裕樹Mike Oldfield、あるいはAsturiasとかそういうのが影響を受けたものとして本人によって市場に貼られているけれど、どれも私の好きな系統のプログレ、トラッド系サウンドだ。楽曲もイントロからメロディ、間奏パートまで素晴らしい。このシンセフルートの音色。イラストまですごい。名前は「Sei」でよかったのだろうか。ニコ動ではSeikoPとして通っているけれど。

個人的にVocaloidの声は好きではないので、以下の人が歌った方を良く聴いている。

他の曲もどれもすごくて、とくにVocaloidに巻き舌させてるのとかこんなこともできんのかと驚くばかり。他の曲(「Dryas」)聴いてみると、むしろこの人の声がなんかVocaloidっぽいのがとってもワンダー。

Solas

トラッドではこれ。今年は新作も出て、スプリングスティーンのカバーが相変わらず良かったけれど、よく聴いたのはこちらのライブ盤。特に素晴らしいのが以下の曲。

女性ヴォーカルが目立つこのバンドだけど、男性ヴォーカルもいい。この曲は特にツボにはまった一曲。

山下“Topo”洋平

One Day One Life

One Day One Life

前掲のケーナ吹きベックマンさんがファン、というかmixiでのこの人のコミュの管理人を任されているというので聴いてみた日本のケーナサンポーニャ奏者のソロアルバム。

夜空ノムコウ」やクイーンの「We Are The Champions」、あるいはピアソラの「Libertango」等をカバーするなどポップス系やジャズ、タンゴなども試みるジャンルクロスオーバーな人だけれど、オリジナルの抒情的な曲調のほうが私は好みだ。

一番良かったのは「忘れられた船」なのだけれどそちらは動画がないようだ。

以下にその他演奏動画がざっとまとめてあるので、そちらもどうぞ。
- YouTube